書籍目録

『ハーパー社によるヨーロッパと東方旅行者のためのハンドブック:フランス、ベルギー、オランダ、ドイツ、イタリア、シチリア、エジプト、シリア、トルコ、ギリシャ、スイス、スペイン、ロシア、デンマーク、スウェーデン、イギリスとアイルランド』

フェトリッジ

『ハーパー社によるヨーロッパと東方旅行者のためのハンドブック:フランス、ベルギー、オランダ、ドイツ、イタリア、シチリア、エジプト、シリア、トルコ、ギリシャ、スイス、スペイン、ロシア、デンマーク、スウェーデン、イギリスとアイルランド』

初版 1862年 ニューヨーク刊

Fetridge, W. Pembroke.

HARPER’S HAND-BOOK FOR TRAVELERS IN EUROPE AND THE EAST: BEING A GUIDE THROUGH FRANCE, BELGIUM, HOLLAND, GERMANY, ITALY, SICILY, EGYPT, SYRIA, TURKEY, GREECE, SWITZERLAND, SPAIN, RUSSIA, DENMAKR, SWEDEN, GREAT BRITAIN AND IRELAND.

New York, Harper & Brothers, 1862. <AB20251454>

¥38,500

First edition.

12.3 cm x 18.9 cm, Folded map, pp.[i(Title.-v], vi-xxiv, 25-459, 10 leaves(for traveler’s memorandum), 10 leaves(advertisements), pp.[1], 2-4(travel books advertisements), Original publishers brown cloth.

Information

1862年のヨーロッパ旅行事情が反映された英文ハンドブック

 本書は当時のアメリカを代表するニューヨークの出版社ハーパー社が1862年に出版したヨーロッパ旅行案内書です。著者フェトリッジ(William Pembroke Fetridge, 1827 - 1896)は、ボストンで出版社、出版業を手広く手掛けていた人物で、ビジネスパートナーとしてハーパー社と協力関係にあったことから同社の依頼を受けて実際にヨーロッパ各地を周遊してこのガイドブックを執筆しました。ハーパー社によるこのガイドブックは好評を博し、本書刊行以降に何度も再版されるベストセラーとなってことが知られています。

 序文でフェトリッジが述べるところによると、本書は主にアメリカからヨーロッパを旅する旅行者を読者に想定しているようです。既存の最も網羅的なガイドブックとしてマレー社のガイドブックをフェトリッジは挙げていますが、同社のガイドブックがその内容が極めて網羅的で正確である一方、その分量が膨大でイタリアなど人気の高い国については一国だけで複数冊が必要となり、ヨーロッパを周遊しようとする旅行者は、何冊もガイドブックを持ち運ぶ労に煩わされることになると言います。こうした弊害を避けるために、本書はフェトリッジが実際に訪ね歩いたヨーロッパ各地の旅行情報を自身の経験を踏まえて簡潔にまとめ、また著者訪ねることができなかった地域については既存のガイドブックの記述をコンパクトにまとめたもので、ヨーロッパ全体で1冊の分量に収めたハンド・ブックとしたことの意義が強調されています。

 フェトリッジの言う通り実際に本書には、表題に記された各国の主要都市ごとに交通網、見どころ、気候、必要な費用、ホテルなどの宿泊施設など旅行に欠かせない実用的な情報が手際よく紹介されていて、いかにも実際の旅行とその準備に役立ちそうな内容となっています。また冒頭の折り込み地図には汽船と鉄道網が赤線で明示されていて、旅行プランを立てる際に役立つ便利な地図となっています。予算や日数に合わせた簡単な旅行プランやパスポートの取得、気候に適した服装といった現代のガイドブックでも見られるような旅行に関する基本情報は冒頭にまとめられており、旅の準備段階から活用することができるようにも工夫されています。巻末にはメモのための余白ページや、旅行産業に関連する企業社商店の広告、さらにはハーパー社が取り扱う他社のものも含めた世界各地の旅行書、紀行書の一覧までもが収録されていて、当時の旅行事情をうかがえる大変興味深い内容となっています。

 本書が刊行された1862年にはロンドンで第二回万国博覧会が開催され、奇しくも日本から文久遣欧施設がヨーロッパ各地を歴訪しており、このガイドブックは当時のヨーロッパの旅行事情を垣間見ることのできるユニークな書物と言えるでしょう。