書籍目録

『広重の彩色版画:16枚の彩色図版を含む52枚の図版を添えて』

ストレンジ

『広重の彩色版画:16枚の彩色図版を含む52枚の図版を添えて』

250部限定豪華版(無番) [1925年] ロンドン / ニューヨーク / トロント / メルボルン刊

Strange, Edward F.

THE COLOUR-PRINTS OF HIROSHIGE...With 52 plates including16 in Colour.

London / New York / Toront / Melbourne, Cassel & Company Limited, [1925]. <AB2025139>

In Preparation

Édition de Luxe in limited to 250 copies (not numbered)

22.0 cm x 27.4 cm, pp.[i-ii(blank), iii(Half Title.), iv], Front., pp.[v(Title.)-ix], x-xvi, pp.[1], 2-205, 1 leaf(blank), Plates: [51], Vellum binding
旧蔵機関による蔵印の空押しあるが良好な状態。

Information

本格的な広重研究の嚆矢となった名著の限定豪華装丁版

 本書は、サウス・ケンジントン美術館(現在のヴィクトリア&アルバート美術館)の浮世絵と和本のコレクション構築に尽力し、同館の副館長も務めたストレンジ(Edward Fairbrother Strange, 1862 – 1929)による本格的な広重研究書で、四つ折り版の立派な書物に、タイトルにもあるように52枚の複製画を収録しています。タイトルページに刊行年の記載がありませんが、1925年にロンドンをはじめとしてニューヨーク、トロント、メルボルンと英語圏各地で同時に出版されたものです。本書は250部限定とされているヴェラム装丁が施されている豪華版ですが、番号の記載がないためこの豪華版が実際に何部作成されたのかは不明です。

 広重の浮世絵作品は、ペリーの『日本遠征記』にその複製画が収録されたことを嚆矢として欧米では早くから知られていましたが、同じく初期から早く知られていた北斎と比べるとその研究の進展は相対的に遅く、20世紀になるまで本格的な研究書が刊行されませんでした。単独の著作としては、1912年頃にドーラ・アムスデン(Dora Amsden, 1858 -?)による『広重の遺産:日本の風景芸術概観』(The heritage of HIroshige: A glimpse of Japanese landscape art. San Francisco, c1912)が、おそらく最初期の研究書と考えられるもので、作品の人気の高さと受容に比べると、研究の進展はかなり遅れていたと言えます。これに続いてはヨネ・ノグチとして英語圏で当時広く知られていた文学者、作家である野口米次郎による『広重』(Noguchi, Yone, Hiroshige. New York, 1921)が続いていますが、いずれの著作も100ページに満たないもので、本格的で総合的な広重研究としては本書の刊行を待たねばならなかったようです。

 当時のイギリスにおける浮世絵研究の大家の一人として既に高い名声を得ていたストレンジによる本書は、その生涯から作品、作風の変化や後年に与えた影響や弟子筋の系譜、確認しうる全作品の目録、さまざまな落款の紹介など、総合的な広重研究と言える本格的な内容で、現在でも十分に活用できそうに思える作品です。また、本書で紹介されたものの、その後長らく行方不明となっていた資料が近年になって発見されたことでも知られており、当時の広重研究としてもっとも高い水準を誇っていたのではないかと思われます。

 本書は当時かなりよく読まれたようで、現在の古書市場でも多くの現存本が流通していますが、本書は250部限定とされている豪華本で、通常のクロス装丁とは異なる高価なヴェラム装丁が施されていて、書物自体が大変立派な作りとなっています。本書には限定番号が記入されていないため、実際にこの豪華版がどれほど発行されたのかは不明ですが、その作りの豪華さから類推するとおそらく300部ほどだったのではないかと思われます。