書籍目録

『ロバート・ダグラス教授による中国の言語と文学についての講義』

ロバート・ダグラス / ヴィルヘルム・ヘンケル(訳)

『ロバート・ダグラス教授による中国の言語と文学についての講義』

ドイツ語訳リトグラフ版 1877年 イェナ刊

Douglas, Robert / Henkel, Wilhelm (tr.).

CHINESISCHE SPRACHE UND LITTERATUR NACH DEN VORLESUNGEN von Robert Douglas Professor für Chines. Litt. am King's College, London.

Jena, Hermann Dufft, 1877. <AB2025123>

¥242,000

First and only edition in German

13.5 cm x 21.5 cm, Title., pp.[I], II, III, pp.[1], 2-103, Contemporary half leather on marble boards.

Information

大英博物館における中国語史料コレクションの形成に尽力した著者による中国語講義の大変珍しいドイツ語訳版

 本書は、イギリスにおける初期の中国語、中国学者として多方面にわたって活躍したロバート・ダグラス(Robert Kennaway Douglas, 1838 - 1913)による講義をもとにして1875年に出版した英語著作をドイツ語に翻訳して1877年に極小部数を出版したものです。宣教師による先駆的な研究を除いて、学会における中国語、中国研究が比較的初期の段階にあった当時における研究の国際的な広がりを示す作品として大変興味深いものです。

 ロバート・ダグラスは1858年から1864年にかけてイギリス領事館の通訳として香港、広東、北京、天津に滞在し、その間に中国語と歴史、文化などについての研鑽を深めました。帰国後はその見識を買われて大英博物館における中国語語講座の教員として採用され、それと同時に同館の各地で分散的に収蔵されていた中国語の写本や文献の整理に勤しみ、1875年には大英博物館での最初の文献目録(Catalogue of Chinese Printed Books, Manuscripts and Drawings in the British Libray. London, 1875)を刊行しています。また同年には王立協会において中国語と中国文学に関する2つの講義(講演)を行い、この講義をもとにした著作(The Language and Literature of China: Two Lectures delivered at the Royal Institution of Great Britain in May and June 1875. London, 1875)が本書の底本となっています。

 本書の翻訳を手掛けたヘンケル(Wilhelm Henkel)についての詳細は不明ですが、ロバート・ダグラスの著作について批判的な見解を加えつつも、その意義を高く評価しており、ドイツ語圏の読者に向けられた著作ではないものの、近年のヨーロッパにおける中国語、中国研究として注目すべき作品であると序論で述べています。本書は、一般的な活字を用いたテキスト組みではなく、リトグラフ印刷を用いてヘンケルの翻訳手稿をそのまま印刷するという珍しい印刷方法で出版されており、おそらくこれは本書が小部数のみの印刷を想定していたを推測させます。

ロバート・ダグラスは本書の刊行後も大英博物館における中国語、日本語の文献、写本等の資料整理と収集に多大な貢献を成し、そのコレクションの基礎を築き上げましたが、没後は急速に忘れられてしまい現在では知る人も少ないものの、近年では彼の活動への再注目、再評価を行われつつあるようです。本書の原著となった英語著作は、当時のイギリスにおける東洋研究書出版で著名だったTrübner社から刊行されていますが、近年では入手が難しい稀覯書となっています。その大変珍しいドイツ語訳である本書は、これまでその存在自体がほとんど知られていなかったのではないかと思われる作品ですが、当時のヨーロッパにおける中国学研究ネットワークの一端を示す書物として大変興味深い1冊と言えましょう。