書籍目録

『東インド航海記」/『日本大王国志』『シャム大王国誌』ほか

ハーゲナール / カロン / スハウテンほか

『東インド航海記」/『日本大王国志』『シャム大王国誌』ほか

(コメリン『東インド会社の起源と発展』からの抜粋) [1645年または46年] [アムステルダム刊]

Hagenaer, Hendrick / Caron, François / Schouten, Joost…[et al]

Verhael Van de Reyze gedaen inde meeste deelen Van de OOST-INDIEN... / Beschrijvinge van het Beschrijvinghe van het machtigh Coninckrijck Iapan,... / Beschrijvinge van…des Siam...

[Amsterdam], [s.n.], [1645 or 1646]. <AB2025122>

¥550,000

Extracted from Isaac Commelin’s Begin ende Voortgangh van de Vereenighde Nederlantsche Geoctroyeerde oost-Indische Compagnie. 1645 or 1646 ed.

Oblong (19.3 cm x 25.0 cm), pp.1-128, 122(i.e.129), 130-134, 127(i.e.135), 128(i.e.136), 137-217, 8 leaves(Register), Modern three-quarter brown leather on marble boards.

Information

カロン『日本大王国志』をはじめとした当時未公刊の重要資料の最初の公刊本

 本書は、17世紀から18世紀にかけて「70年もの間プロテスタント世界で日本についての基本書となっていた」とまで言われる、カロン(François Caron, 1600 - 1673)『日本大王国志』が初めて刊本として刊行されたものです。カロン『日本大王国志』が初めて刊行されたのは、コメリン(Isaac Commelin, 1598 – 1676)が編纂した『東インド会社の起源と発展』第2刷(1645年)においてのことで、翌年に刊行された1646年版にも収録されていることから、本書はこのいずれかの版からの抜き刷りと言える書物です。当時の未公刊資料であったヘンドリック・ハーゲナール(Hendrick Hagenaer)の東インド旅行記、ならびにその付論として、カロン『日本大王国志』をはじめとした複数の著作が収録されています。

 ハーゲナールはオランダ東インド会社におけるカロンの上司にあたる人物で、彼による東インドの航海記が本書の本文として収録されています。これに続いて134ページより収録されているのが、 「商館長フランソワ・カロン著ヘンドリック・ハーゲナール補記日本大王国志」題した記事ですハーゲナールの付論として収録されていることもあって、カロンの報告を本文としつつも、ハーゲナールが逐次本文中に注釈を加えています。さらに、これに続いてよく知られているようにガイスベルトゾーン(Reyer Gysbertszohn)による日本におけるキリシタン迫害記など下記6本の付論が収録されており、これらを含めた形で『日本大王国記』は刊本として初めて世に出されることとなりました(各タイトルは幸田成友の訳による)。

①日本においてローマン・カトリック宗なるため、恐るべく耐え難き呵責を被りあるいは殺された殉教者の歴史 ライエル・ハイスベルツ記

②1626年10月20日、内裏が日本の皇帝陛下を訪問せられた時、京の町で挙行せられた大豪華の祝典(寛永行幸)の記事 オランダ東インド会社から前掲皇帝陛下の許に派遣せられ、盛儀を目撃したコンラート・クラメール記

③長崎の町長シラゲモンドノから(オランダ東インド会社)総督その他に宛てた日本文の手紙の翻訳 商人頭ヤン・ファン・エルセラックより送付、1642年10月28日付

④日本の貿易に関し、オランダ東インド会社総督から本社の理事会に送った報告の抄録

⑤日本におけるオランダ東インド会社が支那貿易を獲得した場合に受くる利益・有用及び校歌の略説 レオナルド・カンプス記

⑥シャム王国における政治・勢力・宗教・風俗・商業・その他著名の事項に関する記事 1636年同地オランダ東インド会社支配人ヨースト・スハウテン著

 上記の最後にある⑥は、スハウテン(Joost Schouten)「シャム王国における政治、権勢、宗教、風俗、商業その他の特記すべき事項に関する記事」が収録されていて、これはオランダ語原著にも収録されているシャム王国に関する情勢を報告した記事です。カロンが日本におけるオランダ東インド会社の商館長であったように、シャムにおけるオランダ東インド会社の商館長であったスハウテンが、国内情勢や貿易の見通しなどを会社に報告したもので、同時代のシャム研究においても大変重要とされている作品です。スハウテンは1632年にオランダ東インド会社の命を受けてアユタヤに商館を設立し1636年まで商館長を務めた人物で、本書ではシャムの政治、宗教、文化、商業、農業などを自身の豊富な知見に基づいて記されていて、当時のヨーロッパにおけるシャムの最新研究書として広く読まれることになりました。




 「カロンの報告は地理・文化・社会など多様な分野を網羅し、同時代の人々に大きな影響を与えたという意味において最も重要である。カロンは東インド会社の船の調理助手としてアジアに赴き、1619年に平戸に渡航した。平戸ではオランダ商館に配属され、そこに長く留まった。滞在中、日本人女性と結婚し、日本語も堪能になった。そのため、次第に通訳を担当するようになり、ついに商務員へと昇進した。カロンは1627年にヌイツの江戸参府に同行した後に、ヌイツと共に長年滞在した日本を出国し、台湾に渡ったが、そこでタイオワン事件に巻き込まれて、人質として再び日本に送還された。しかし、日本では自由の身にされて、事件解決までのすべての交渉に参加している。その際、カロンは日本側の理解者として幕府から厚い信頼を受けていた。その後も、カロンは毎年のように商館長やその代理の江戸参府に同行し、日本各地を観察する機会を数多く得た。また、ヌイツの釈放の交渉のために1633年および1636年に数ヶ月もの間江戸に滞在している。このように日本事情に精通したカロンは、1638年に平戸商館長に昇進し、出島移転までの難しい時期に日本における東インド会社の指揮を取っていた。商館長が1年以上日本に滞在してはならないという幕府の命令が下されたことを受けて、カロンは仕方なく日本を去ることになった。
 商館長に就任する前の1636年にカロンは、バタフィアに着任したばかりのフィリップ・ルーカースゾーン副総督からの一通の書簡を受け取った。ルカースゾーンはアジア貿易の全体像を把握するために各商館にその地域についての地理・統治・軍事・法律・宗教・儀礼・生活・貿易・産業についての質問票を送った。各商館はこれらの質問に対する報告書を提出した。これらの報告書のうち、カロンの日本報告及びヨースト・スハウテンのシャム報告が『東インド会社の起源と発展』に掲載されている。(中略)

 カロンの報告は、ヨーロッパで出版された日本関係図書の中でしばしば引用されていることから推察すると、ケンペルの『日本誌』が出るまで、70年もの間プロテスタント世界で日本についての基本書となっていたことがわかる。」



「カロンの報告は日本を内側から観察して記述していると言える。長期間にわたる平戸での滞在、幕府との交渉、数多くの江戸参府、そして何よりも日本人の妻やその親戚との親交を通じて、カロンは日本の社会や文化に精通しており、ルーカスゾーンの質問に回答するのに最も相応しい人物であった。勿論、報告書は、その性質上、政治・経済的視野の上に立って作成されているが、それでも当時の日本人の生活や文化について驚くほど詳細な記述を数多く含んでいる。」



「結果的に、カロンの報告書は、貿易政策に役立てるためのデータ集というよりも、内から見た日本文化の本格的な分析を提供するものになって、その文化的要素は長い間ヨーロッパの知識人を魅了した。」

(クレインス『17世紀のオランダ人が見た日本』臨川書店、2010年、107~110、147頁より)



「同書は、館長代理時代、バタヴィア商務総監のフィリップ・ルカースゾーンによる、以下の31の質問に回答する形で執筆されています。1.日本国の大きさ、日本は島国か、2.如何に多くの州を含むか、3.日本における最上支配者の特質と権力、4.将軍の住居・地位・行列、5.兵士の数と武器、6.幕閣およびその権力、7. 大名とその勢力、8.大名の収入とその源泉、9.処刑の方法、10.何が重罪に相当するか、11.住民の信じる宗教、12.寺院、13.僧侶、14.宗派、15.キリシタンの迫害、16. 家屋・建具、17.来客の接待、18.結婚生活、19.子供の教育、20.遺言が無い場合の相続、21.日本人は信用できるか、22.貿易および貿易従事者、23.内地商業および外国航海、24.商業の利益、25.外国との交際、26.日本の物産、27.貨幣および度量衡、28.鳥獣類、29.鉱泉、30.将軍への謁見、31.言語・写字・計算方法・子孫に歴史を公開するか。」

(国際日本文化研究センターHPデータベース『日本関係欧文史料の世界』図書『日本大王国志』英訳版解説(フレデリック・クレインス執筆)より)


ハーゲナール『東インド航海記』冒頭箇所。この作品が本書の本部を構成している。
その付論として収録されているのが、カロン『日本大王国志』である。
同書で著名な日本各地の国王(藩主)と収入一覧
オランダ東インド会社においてカロンの上司であったハーゲナールが本文中の随所に注釈を追記している。(後年にカロンが自身で『日本大王国志』を出版する際には、これらの注釈は全て「とんでもない誤り」として全て削除された。)
日本における刑罰の解説で、磔の方法を示した簡単な図も収録されている。この図は後年の版には見られないコメリン版だけのもの。
①日本においてローマン・カトリック宗なるため、恐るべく耐え難き呵責を被りあるいは殺された殉教者の歴史 ライエル・ハイスベルツ記
②1626年10月20日、内裏が日本の皇帝陛下を訪問せられた時、京の町で挙行せられた大豪華の祝典(寛永行幸)の記事 オランダ東インド会社から前掲皇帝陛下の許に派遣せられ、盛儀を目撃したコンラート・クラメール記
③長崎の町長シラゲモンドノから(オランダ東インド会社)総督その他に宛てた日本文の手紙の翻訳 商人頭ヤン・ファン・エルセラックより送付、1642年10月28日付
④日本の貿易に関し、オランダ東インド会社総督から本社の理事会に送った報告の抄録
⑤日本におけるオランダ東インド会社が支那貿易を獲得した場合に受くる利益・有用及び校歌の略説 レオナルド・カンプス記
⑥シャム王国における政治・勢力・宗教・風俗・商業・その他著名の事項に関する記事 1636年同地オランダ東インド会社支配人ヨースト・スハウテン著
巻末には索引が設けられている。
近年に施されたと思われる装丁で良好な状態。