書籍目録

『ローマでの式典:日本の聖なる殉教者達ほかの列聖の記録』

シャントレル / (日本二十六聖人殉教事件)

『ローマでの式典:日本の聖なる殉教者達ほかの列聖の記録』

初版 1862年 パリ刊

Chantrel, J(oseph).

LES FÉTES DE ROME: HISTOIRE DE LA CANONISATION DES SAINTS MARTYRS DU JAPON ET DE SAINT MICHEL DE SANCTIS.

Paris, Victor Palmé, 1862. <AB202594>

Reserved

First edition.

12mo (9.3 cm x 15.3 cm), pp.[1(Half Title.)-3(Title.)-5], 6-560, 1 leaf(Table), 1 leaf(advertisement), Contemporary half red leather on marble boards.
旧蔵者による蔵書票や切り絵が両見返し部に貼られているが、刊行当時のものと思われる想定を保った良好な状態。[NCID: BA59923952]

Information

列聖式典や関連事項に主眼を当てた日本二十六聖人の「列聖記」

 本書は、1862年に聖者として列聖された、いわゆる日本二十六聖人の列聖に至る背景や式典、式典に参加した関係者達を主に論じた作品です。著者シャントレル(Joseph Chantrel, 1818 - 1884)は歴史関係、特にカトリック関係の歴史書を手がけた著作家で、『カトリック年報』(Annales catholiques : revue religieuse hebdomadaire de la France et de l'Église)を創刊したことでも知られています。

 日本二十六聖人の列聖に際して1862年以降、彼らに関する数多くの著作が各地で刊行されましたが、本書は多くの類書とは異なり、彼らの伝記も冒頭に扱ってはいるもののむしろ列聖に至る背景や式典そのものに関する出来事を中心に扱った作品で、殉教伝というよりも列聖記と見做せる内容となっています。同時代の類書がイタリア語からの翻訳であったり、殉教伝を主題とした作品であることが多かったのに対して、全9章のうち実に8章を列聖式やそれに関する事項を主題として論じており、それでいて小型本ながらも550ページを超える分量となっている本書は、極めて独自性の高い作品と思われます。

 同年中には第2版(BNF: FRBNF30220580)が刊行されていることから、本書は当時一定の反響を呼んだ作品ではないかと思われますが、類書と比べて現存数が少なく、また国内所蔵機関も限られているようです。本書は美しい装丁が施されている他、見返し部に当時の所蔵者によるものと思われる切り絵が貼られており、本書が大切に読み継がれてきたことを思わせる1冊です。