書籍目録

『インドの使徒であるイエズス会士、聖フランシスコ・ザビエルの生涯』

マッセイ

『インドの使徒であるイエズス会士、聖フランシスコ・ザビエルの生涯』

初版 1681年 ローマ刊

Massei, Giuseppe (Joseph).

VITA DI S. FRANCESCO SAVERIO Della Compagnia di Giesù APOSTOLO DELL’ INDIE…

Roma, Ignatio de’ Lazzeri, M. DC. LXXXI.(1681). <AB202548>

Sold

First edition.

4to (15.0 cm x 20.0 cm), Title., 5 leaves, pp.[1], 2-222, LACKING 1 leaf(pp.223/224) supplemented with a hand-written text leaf, pp.225-351,
旧蔵者による蔵書票の貼り付け、随所に染みやインク汚れ、補修跡が見られるが判読には大きな支障がない状態。223/224ページが欠落しているが筆写によってテキストが補われている。[Sommervogel: Vol. V-705] [Laures: JL-1681-KB5]

Information

イタリア語圏で19世紀に至るまで愛読されたザビエル伝名著の貴重な初版

 本書はイタリア人イエズス会士マッセイ(Joseph Massei, 1626 – 1698)による『ザビエル伝』初版で1681年にローマで刊行された作品です。数あるザビエル伝の中でも特にイタリア語圏でよく読まれた作品の一つで、18世紀に入ってからも繰り返し簡略版が刊行されるほどの人気を博しました。その一方で、初版発行部数はそれほど多くなかったのか、国内主要研究機関の所蔵がほとんど見られないという稀覯文献となっています。

 ザビエルによる日本宣教は、イエズス会全体にとっても、同会が最重要視したヨーロッパ外における宣教活動の輝かしい成功事例として受け止められており、16世紀末からザビエルの伝記が立て続けに刊行されています。最も浩瀚な初の伝記作品として高い評価を受けたのが、イタリア人イエズス会士トルセリーニよるザビエル伝で、この作品の決定版とされる1596年版はザビエルが各地から認めた書簡集も収録することでザビエルの功績を詳細に伝えただけでなく、ザビエルが訪れたアジア各地の風俗を伝える書物としても当時のヨーロッパで広く読まれました。

 本書はこのようにザビエル伝が相次いで刊行された17世紀にあって、特にイタリア語圏で長きにわたって親しまれたことが知られる作品です。著者マッセイはルッカ出身のイエズス会士で、1641年にイエズス会に入会し、哲学や教理神学の教員としてイエズス会のコレジヨで教鞭を取る傍ら、本書をはじめとした著作執筆にも勤しんだ人物として知られています。本書は彼の代表作とも言える著作で、1681年に初版が、そして翌年には早くも第2版が、1684年には第3版が刊行され、18世紀に入ってからも繰り返し再版がなされるほどの人気を博しました。

 本書は全3部構成となっていて、第1部(pp.1-45)ではザビエルがのちにイエズス会創立者となるロヨラと出会い、イエズス会宣教師としてゴアに旅立つまでの出来事が記され、第2部(pp.46-194)ではゴアに到着してからマラッカやコーチンなど各地で布教に尽力し、マラッカで時期の出来事が記され、その最後(第16章、pp.184-)で日本からやってきた1人の若者との出会いから日本戦況を決意することになった経緯が語られています。この第16章では、日本についての概説もなされており、1542年に始まる西洋人と日本との交流の始まりから日本の地理や風土、文化宗教などについても解説されています。こうした日本解説はトルセリーニのザビエル伝をはじめとしてザビエル伝の多くに見られるものですが、その時代や著者による日本理解が反映される形でそれぞれ内容が異なっており、ある種の日本論としてユニークな価値を有する記述と言えるものです。そして最後の第3部(pp.195-351)では、鹿児島到着後のザビエルの日本戦況が主に論じられており、平戸、山口、都での布教活動や坊主との間で行われた宗論などについても詳しく論じられています。

 マッセイによるザビエル伝は、トルセリーニやルセナによる高官なザビエル伝と比べると、手際よくコンパクトにまとめられた構成となっており、また当初からイタリア語で執筆されたこともあって、当時の多くの読者にとっても親しみやすかったのではないかと思われます。こうした親しみやすさが18世紀に入ってからも繰り返し再版され、19世紀になってもなお読み部がれるほどのベストセラーとなった要因であったと言えるでしょう。また、その発行部数は多くなかったと思われるものの、ドイツ語訳(Lebens=Begrieff Deß Heiligen Francixci Xaverii,...Neys, 1714)も刊行されるなど、イタリア語圏以外でも読まれていたことが知られています。日本国内の主要研究機関でもマッセイ『ザビエル伝』は比較的改税約書所蔵されているのを確認することができますが、本書である初版については上智大学キリシタン文庫などごく一部の機関だけで、その大半が18世紀以降に刊行された簡略版であるようです。その意味でも、ベストセラーとなったマッセイ『ザビエル伝』の原点とも言うべき本書は、大変価値ある1冊であると言えるでしょう。