書籍目録

『1666年6月10日、インドと日本の使徒であるイエズス会の聖フランシスコ・ザビエルがブリュージュのペストに対する守護聖人選定100周年記念』

『1666年6月10日、インドと日本の使徒であるイエズス会の聖フランシスコ・ザビエルがブリュージュのペストに対する守護聖人選定100周年記念』

1766年 ブリュージュ刊

Anon.

HONDERD-JAERIGE GEHEUGENISSE DER SOLEMNELE VERKIESINGE VAN DEN H. FRANCISCUS XAVERIUS DER SOCIETEYT JESU APOSTEL VAN INDIEN EN JAPONIEN TOT PATROON VAN DE STAD BRUGGE TEGEN DE PESTE Geschied op den 10. Junii 1666…

Brugge (Bruges), Petrus de Sloovere, MDCC. LXVI(1766). <AB2024208>

¥33,000

8vo (11.0 cm x 16.7 cm), Front., pp.[1(Title.)], 2-20, 2 leaves, Contemporary paper wrapper.

Information

1666年パンデミックに見舞われたブリュージュを救ったザビエルとイエズス会医師を記念して100年後に刊行されたパンフレット

 本書は1666年にペストの流行に見舞われた街ブリュージュ(現ベルギー)が、フランシスコ・ザビエルを街のペストに対する守護聖人として頼み、またイエズス会出身の医師モンタヌス(Thomas Montanus, 1617 - 1685)の献身的で的確な対応によって危機を乗り越えることができてから100年が経過した1767年に、改めてそのことを祝福する記念式典が開催された際に刊行(配布)されたと思われるパンフレットです。

 ヨーロッパにおけるペストの流行は中世の大流行が特に有名ですが、17世紀以降も各地で猛威を振るっており、ブリュージュが流行に襲われた1666年は対岸ロンドンでも大流行が発生していました。ブリュージュは元々交易で栄えた街で特に対岸のイングランドや北海方面と地中海とを繋ぐ、フランドル地方における貿易の要所として繁栄してきた歴史があり、すでにその中心的役割をアントワープに譲っていたものの17世紀においても交易が盛んな都市でした。本書ではこうしたブリュージュの歴史を簡単に振り返りつつ、そうした他国、他地域との交流が盛んであるがゆえに、疫病の流行に苛まされることになったという趣旨のことが記されています。
 
 1666年のブリュージュにおけるペストの大流行は、その対策を指揮したイエズス会の医師モンタヌスがすべての患者とその家族の状況を逐一網羅的に報告させるよう徹底し、流行状況を正確に把握し、的確に対応することで収束に向かうことができましたが、それと同時に、ザビエルを街をペストから護ってくれる守護聖人とすることで、人々の心の平穏を取り戻すことができました。本書はこのブリュージュにおける歴史的大事件からちょうど100年が経ったことを記念して大々的な式典が開催された際に刊行されたパンフレットと思われるもので、冒頭の口絵にはブリュージュの街並みとザビエルの立像とが描かれています。350年以上前にパンデミックに襲われたブリュージュがザビエルを守護聖人として危機を乗り越えようとしたこと、またそれから100年経ってもなおそのことを忘れずに記念式典を開催していたということは、現代の記憶にも新しいパンデミックについて再考する興味深い素材となるかもしれません。