書籍目録

「中国と日本地図」

[マイヤー] / [ユリウス]

「中国と日本地図」

(『マイヤーの一般知識参照百科事典』からの抜粋) [1895年-97年] ライプチヒ刊

[Meyer, Joseph] / [Julius, Hermann]

CHINA und JAPAN.

Leipzig, Bibliographischen Institut, [1895-1897]. <AB2024149>

Reserved

(Extracted from Meyers Konversations-Lexikon. Ein Nachschlagewerk des allgemeinen Wissens)

24.8 cm x 30.9 cm, 1 colored map,

Information

ドイツ語圏を代表する一般百科事典に収録された東アジア図

 本図は19世紀から20世紀にかけてドイツにおける百科事典、地図帳製作の分野で中心的な役割を果たした「図書局」(Bibliographisches Institut)によって制作された中国と日本を描いた一般向けの小型地図です。図書局が出版していた百科事典(Neues Konversations-Lexiikon)の改訂第5版(1893年〜1897年)に収録されていた地図です。

 本図を手がけた図書局はヨーゼフ・マイヤー(Joseph Meyer, 1796 - 1856)によって1826年にゴータ(Gotha)で創設された先駆的な出版社で、本図が収録された百科事典をはじめとして地図帳、ガイドブック、図鑑、辞書、新聞といった数多くの出版物を手掛けていたことが広く知られています。19世紀前半には同社に先駆けてライプチヒでブロックハウス(Brockhaus)社が手がけた浩瀚な百科事典(Brockhaus Enzyklopädie)をはじめとして幾つかの百科事典が刊行されていましたが、マイヤーはより多くの人々にとって身近に用いることができ、かつ網羅的な百科事典が必要であるとして独自の百科事典(Das Grosse Conversations-Lexikon)の刊行を1839年に開始し、1855年に至るまで刊行を続け、最終的に全52巻からなる百科事典が完成しました。マイヤーが主導する図書局による出版物は地図や図版といった資格資料を多数収録していたことが大きな特徴とされていて、テキストだけでなく図版によって有用な知識を遍く普及させるという彼の意図が込められています。

 この百科事典はメイヤーの没後にその息子ヘルマン・ユリウス(Hermann Julius, 1826 - 1909)によって名称を変更した新版(Neues Conversations-Lexikon für alle Stände)へと引き継がれ、この新版初版は1857年から60年にかけて全15巻と構成を大幅にコンパクトにして刊行されました。さらにこの新版の第2版として『一般知識事典』(Neues Konversations-Lexikon, ein Wörterbuch des allgemeinen Wissens)へと名称を変更した改訂版が1861年から67年にかけて刊行されています。当初はゴータに本拠地を有していた図書局は、1828年にヒルトブルクハウゼン(Hildburghausen)へと移転し、さらに1874年にはライプチヒへと再移転を行い、ライプチヒで更なる改訂版(新版の第3版)が『マイヤーの一般知識百科事典』( Meyers Konversations-Lexikon. Eine Encyklopädie des allgemeinen Wissens)と題して1874年から1878年にかけて刊行されました。さらに1885年から1890年にかけて同名のまま新版の第4版が刊行され、1893年から1897年には再びタイトルを僅かに変更して『マイヤーの一般知識参照百科事典』(Meyers Konversations-Lexikon. Ein Nachschlagewerk des allgemeinen Wissens)と題した新版の第5版が刊行されています。本図にはその出版地としてライプチヒが明記されているものの、出版年を特定できる情報は記されていませんが、地図上での表現を見る限り日清戦争後、日露戦争以前の状況が反映されているように見受けられることから、この新版の第5版に収録されていた地図であると推定され、1895年から1897年のいずれかの年に製作されたものと考えられます。

 本図は、一般向けの百科事典に収録されていた小型の地図だけに細部はやや簡略されているものの、正確性は損なわれておらず、また当時の一般的な地理認識が反映されている地図であることから、年代による当該地域の地理認識の変遷を辿ることができるという点でも興味深い地図であると言えるでしょう。