書籍目録

「中国と日本地図」

ゾール / ベルクハウス / フレーミング

「中国と日本地図」

(『ゾール・ベルクハウスによる地図帳』第7版後期刷りからの抜粋) [1883年] グウォグフ刊

Sohr, Karl / Berghaus, Heinrich / Fleming, Carl.

CHINA UND JAPAN.

Glogau (Glogow), C. Fleming, [1883]. <AB2024145>

Reserved

(Extracted from Sohr-Berghaus Hand-Atlas. 7th ed. later issue)

39.8 cm x 46.8 cm, 1 colored map,

Information

当時のプロイセン領で刊行され、高い評価を得ていた地図帳に収録された東アジア図

 本図は、1883年に刊行されたと推定されている日本と中国を中心とした東アジア図で、当時はプロイセン、現在のポーランドにあるグウォグフという街で出版されています。19世紀前半のドイツ語圏における地図製作や出版、地理学教育に大きく貢献し、ペーターマン(August Heinrich Petermann, 1822 - 1878)などを育てたことでも知られるベルクハウス(Heinrich Berghaus, 1797 - 1884) とゾール(Karl Sohr, 詳細不明)の2人の名を冠した地図帳(Sohr-Berghaus Hand-Atlas)の1883年に刊行されていた第7版からの抜粋と思われる地図です。

 この地図帳を手がけていたフレーミング(Carl Fleming, ? - C.1879)は当時のドイツ語圏における地理学者として著名な人物で、ほかにも数多くの地図帳や地理学に関する書物を刊行していたことがわかっています。特に彩色性の高い地図製作の分野で高い評価を得ていたようで、本図が収録された『ゾール・ベルクハウスによる地図帳』は彼の代表作とも言える出版物で、彼の没後も改訂が重ねられ続けました。この地図帳は、他社の地図帳にも見られるように、同じ版表記を有しながらも収録されている地図を年ごとに細かく改訂しているため、年ごとに異なる地図が収録されていることで知られる地図帳ですが、本図は1878年から1886年にかけて刊行された第7版との表記を持つ諸本のうち、1883年に刊行された合計100枚の地図を収録した後期刷り本からの抜粋であると思われます。

 19世紀に欧米各国で製作された様々な地図には、銅版画で印刷された上で手彩色が施されていることが多いですが、彩色のあり方については必ずしも明確な意図と正確性が重視されていないことが多く、同じ地図でも塗り分けが大きく異なっていることも珍しくありません。それに対して、本図をはじめとしてドイツ語圏で製作された地図には、本図に見られるような具体的な凡例を備えた上で、地図製作者の明確な意図を反映した塗り分けがなされていることが多いことから、当時の地理認識のありようを理解する手助けとしても活用する地図となっています。

 本図は同じ地図帳の同じ版に収録された中国南東部地図に描かれている範囲が一部重複していますが、同じ地域を描いている箇所でも両図の間には彩色に一部相違が見られます。