書籍目録

『スタンフォード社による中国と日本帝国図:並びにロシア帝国の隣接地域、インド、ビルマ等』

スタンフォード /(スタンフォード地理学機構)

『スタンフォード社による中国と日本帝国図:並びにロシア帝国の隣接地域、インド、ビルマ等』

1900年 ロンドン刊

Stanford, Edward / Stanford's Geographical Establishment.

STANFORD'S MAP of the EMPIRES OF CHINA AND JAPAN with the adjacent parts of THE RUSSIAN EMPIRE INDIA, BURMA & c.

Edward Stanford, London, 1900. <AB2024139>

Reserved

68.4 cm x 101.7 cm, 1 folded map, divided in 36 sheets, linen-backed with green cloth covers.

Information

ジョンソン社と並んで19世紀後半のイギリスを代表する地図出版社が手がけた権威ある東アジア地図

 本図は1900年に刊行されたと推定される中国と日本を中心とした大型の東アジア地図で、当時のイギリスにおける代表的な地図出版社であったスタンフォード社から刊行されたものです。スタンフォード社の創業者であるエドワード・スタンフォード(Edward Stanford, 1827 - 1904)は、同社における地図製作、出版専門部としてスタンフォード地理学機関(Stanford's Geographical Establishment)を1853年に設立し、当時のイギリスにおける地図製作の最高権威者でありライバルでもあったジョンストン(Alexander Keith Johnston, 1804 - 1871)を起用するという大胆な方法によって地図製作を精力的に進め、世界各地の詳細で精度の高い地図を次々と出版して高い評価を獲得していきました。

 この地図は36枚に分割された上でリネンによって裏打ちされて折りたためるような仕立てとなっていて、その表紙に同社に特徴的な緑色のクロス装丁が施され、その裏面の黄色い用紙には同社出版物の広告が掲載されています。こうした仕立ては同社が手がけていた地図に共通の仕立てで、当時の読者、購買者はこの仕立てを見るだけでスタンフォード社の地図であることをすぐに認識することができました。本図の広告面にも見られるようにスタンフォード社は地図帳出版にも熱心に取り組んでおり、そこに収録された地図が独立して出版されることも多く、本図もまさにそうした作例の一つに数えられるものです。 

 本図は同社が手がけていた日本地図と同様に何度も版を重ねていたものと思われますが、正確な版情報は明らかになっていません。店主の知る限りでは1890年頃に製作されたものが最初ではないかと思われます。本図に描かれているのは、まさに当時の欧米列強の関心が集中していた地域そのものであることから、日清戦争を受けてさらに同地への関心が高まったことに呼応して版を重ねていったのではないかと思われます。本図は地図下部余白に記された出版情報の中に1900年という出版時期が明記されていますが、これ以降も日露戦争の勃発を受けて幾度も版を重ねたことが分かっています。