書籍目録

「日本を訪れる旅行者のための情報(ガイド)」

トーマス・クック商会

「日本を訪れる旅行者のための情報(ガイド)」

1930年 神戸・横浜刊

(世界旅行案内社)株式会社 トーマス・クツク・エンド・ソン

INFORMATION FOR TRAVELLERS VISITING JAPAN.

Kobe / Yokohama, Oriental Hotel and Shosen Building (Kobe) / Hotel New Grand (Yokohama), 1930. <AB201792>

Sold

13.5 cm x 20. 0 cm, pp. [1], 2- , Folding maps; [5], Original paper wrappers bound in Japanese style.

Information

旅行者の世界的名門クック商会横浜支社による英文日本ガイドブック後年版

トーマス・クック(Thomas Cook, 1808 - 1892)は、イギリスの実業家で、旅行代理店を世界的に展開することで成功を収めた人物です。旅行者が旅行先で無駄なく魅力的な景勝地や見所を訪れることを可能にする、いわゆる団体旅行ツアーの企画、提供することで成功を収めたことから、近代ツーリズムの祖と言われています。また、クックは鉄道時刻表をはじめとした各種出版物の刊行でも非常によく知られており、ホテルガイドや各地のガイドブックを多く生み出しました。

 クックは開国後の日本において、横浜に支社を構え早くから来日外国人観光客を相手とするビジネスを展開していました。また、ジャパン・ツーリスト・ビューローのガイドブックの代表的な設置所でもあり、当時の外国人観光客が、何らかの形で必ず関わる可能性の高い企業であったと思われます。

 本書は、この偉大なツーリズムの祖であるクック商会が作成し、1930年に刊行した英文日本ガイドブックです。1913年に刊行したものと大きさはほぼ同じですが、前者が写真とデザインがあしらわれていたのに対し、本書は型押しの特殊紙の表紙となっています。内容的には、1913年のものに見られたような、来日外国人観光客が必要とする情報をコンパクトにまとめるといった方針に基づいて改善、改訂が施されているように見受けられます。写真や地図についても、ほとんどが新しいものとなっているようです。

 クック商会が英文日本ガイドブックを何時頃から作成し、どのようなものを発行していたかについては、実は殆ど知られていないものと思われますが、ビューローが作成した英文ガイドブックに少なからず影響を与えたことは、両者の関係の緊密さからして間違いないものと思われます。1914年版と本書を比較することもまた大変興味深い研究テーマとなりそうです。

1913年のものと比べるとデザインは地味になった印象を受けるが、よく見ると型押しを施した厚紙を用いていることがわかる。和綴じ本を模した装丁である点は同じ。
タイトルページ
目次
1913年のものに比べて地図が増えていることは一つの特徴である。
横浜市街図。
1913年版にはなかった神戸市街図。新たにオフィスが設けられていることがわかる。
奈良京阪神図。
神戸にオフィスが設けられたことを反映してか、1913年のものと比べると関西方面の情報が充実しているようである。
末尾が広告である点も1913年版と同じ。
裏表紙は基本的に表表紙と同じデザイン。