書籍目録

「英文日本案内地図」(「旅行者のための最新日本地図」)

喜賓会 (東京商業会議所)

「英文日本案内地図」(「旅行者のための最新日本地図」)

第11版 1913(大正2)年 東京刊

THE WELCOME SOCIETY OF JAPAN (KI-HIN-KAI) (HEAD OFFICE: The Tokyo Chamber of Commerce Building. (Tokyo Shogyo Kaigisho)

THE Latest Map of Japan FOR TRAVELLERS

東京市, 東京印刷株式会社, 明治三十年十一月十一日初版発行 大正二年十月二十五日第十一版増訂印刷 大正二年十月二十八日発行. <AB201789>

Sold

(11th edition)

1 sheet, Original folding map

Information

喜賓会による訪日外国人向けガイドマップ 解散直前の最終改訂版

この地図を発行していた喜賓会(Welcome Society of Japan)とは、1893(明治26)年に、東京商業会議所の初代会頭であった渋沢栄一、三井物産の設立と三井財閥の近代化に大きく貢献した益田孝、貴族院議長であった蜂須賀茂韶らによって設立された非営利組織で、主に来日外国人に対する様々な便宜を図ることをその主たる目的としていました。明治日本における最初の来日観光客を対象とした組織であり、今で言うところの「インバウンド」について初めて対応した日本における、観光組織の原点とも言える存在です。現代の日本交通公社の前身であるジャパン・ツーリスト・ビューロー(1912年設立)が設立されるまで、増加する来日外国人観光客の対応を手探りながら一手に担っていました。

 この地図は、喜賓会がその主たる目的の一つとして作成、刊行していたガイドマップの最終改訂版(第11版)にあたるもので、会の解散前年に刊行されたものです。デザインは、第7版に近いテイストのものでありながらも意匠が変更されています。第7版までと比べた際の最大の変化は、地図そのものにあり、字体も含め大幅に異なるものへと刷新されていることがわかります。台湾部分図も非常に大きくなり(北海道よりもむしろ大きい)、市街図には名古屋が新たに加わっていることも確認できます。
 
 最終改訂版であるこの地図は、1912年ビューロー設立後に出されたもので、ビューローが自身のガイドブック作成の準備を推し進めていた時期にあたると考えられることから、この喜賓会最後の地図とビューロー最初のガイドブックを比較することで、両者の影響関係を研究することも大変興味深いテーマと言えるでしょう。

少なくとも第7版までとは異なる意匠となっている。版表記がなくなっている代わりに、ローマ字綴りの喜賓会の名前が復活している。
紹介文は第7版までのものをベースにテキスト分量を圧縮している。
地図は、少なくとも第7版までものから大幅に刷新されている。
台湾図が独立してかなり大きな部分図として掲載されているのも特徴の一つ。
凡例については第7版までのものを踏襲しつつ、新たに、東京駅からの主要都市への鉄道距離がマイル表示で記載されている。
人口統計と鉄道敷設距離については、少なくとも第7版から全て刷新された数字となっている。
第7版までにはなかった名古屋市街図が新たに掲載されている。
京都市街図
大阪市街図
東京市街図
出版情報についての記載は、第7版までと異なり、地図右下欄外に記載されている。「英文日本案内地図」という日本語表記も第7版までには見られなかったもの。
裏面の全面広告についても、掲載企業がかなり異なっている。