書籍目録

『お菊さん』

ロティ

『お菊さん』

英訳版 1897年 ロンドン刊

Loti, Pierre / Ensor, Laura (translator) / Rossi, Luigi (illustrator)

Madame Chrysanthéme.

London, GEORGE ROUTLEDGE AND SONS, LIMITED, 1897. <AB201784>

Sold

Edition in English.

14.0 cm x 19.5 cm, pp. [1-7], 8-335, Original decorative illustrated cloth.
見返し部分に出版当時の旧蔵者によるサインと、1900年3月との書き込みあり。

Information

文学におけるジャポニズムを代表する作品の英訳版

 ロティ(Pierre Loti, 1850 - 1923)は、フランス海軍士官として、19世紀末から20世紀初めに世界各地を訪れ、その体験を素材にした作品を数多く発表、作家として著名になりました。ロティは1885年、ならびに1900年の二度にわたって来日しており、その際の体験をもとに本書や、『秋の日本』を著しました。ロティの作品は決して日本に好意的とは言えない側面もありますが、優れた読み物として当時のヨーロッパだけでなく世界各地で好評を博し、多くの言語に翻訳されることで、19世紀末前後の国外における日本像の形成に少なくない影響を与えました。彼の作品に対しては当時から賛否両論が数多くありますが、それは彼の作品が与えた影響の大きさを裏付けるものでもあります。
 
 『お菊さん』は、1888年にパリで発表されるや否や大変な反響を呼んだようで、わずか5年ほどの間に23版を数えています。英訳版もいち早く現れ、フランス語原著刊行の翌1889年にパリの出版社Eduouard Guillaurmeから出版されました。この英訳版は、原著フランス語版に特徴的なロッシとミルバッハによる多くの石版画を忠実に再現しており、1897にロンドンの今に続く老舗出版社George Routledge and Sonsが英訳版を再版した際にも、このスタイルは踏襲されています。本書は、このRoutledge版の英訳書で、出版当時の美しいデザインクロス装丁を今に伝えるものです。

特徴的な出版当時のクロス装丁
タイトルページ。
見返し部分にある出版当時の旧蔵者による書き込み。
本文中にはフランス語原著と同じく数多くの石版画が収録されている。
背面。
小口の天の部分には金箔があしらわれている。