書籍目録

『日本郵船による同一船での東方(サンフランシスコ、ホノルル、日本、中国、フィリピン)周遊』

日本郵船 / ウェルズ夫妻

『日本郵船による同一船での東方(サンフランシスコ、ホノルル、日本、中国、フィリピン)周遊』

[1926?] アメリカ(サンフランシスコ?)刊

N(ippon). Y(usen). K(aisha). LINE./ Mr. and Mrs., Wells, J. Hadcock.

OUR SAME SHIP CIRCLE CRUISE TO THE ORIENT.

U.S.A.(Sanfrancisco?), [1926?]. <AB2020166>

Sold

oblong (9.4 cm x 23.0 cm), 12 leaves with covers, Original pictorial paper wrappers.

Information

 日本郵船によるこの珍しいパンフレットは、サンフランシスコからマニラまでの各地を寄港しながら、再びサンフランシスコに戻ってくるまで、乗り換えなく同じ船で一周できることを謳ったもので、実際に利用したアメリカの新婚夫妻の旅行日記とアルバムから抜粋したという形式で作成されています。サンフランシスコを出港してから、ホノルル、横浜、神戸、長崎、上海、香港の各地に寄港しながら、マニラへと至り、再び同じルートを逆向きに辿るという約60日のツアーとして組まれています。新婚のウェルズ夫妻の新婚旅行アルバムという体裁で編まれており、サンフランシスコを出発してからの各地での様子や、船内のレクリエーションなどの写真が手書き風のコメントと共に掲載されていて、実際の旅程を辿っている気分を味わえる内容となっています。アルバムの後には日記の抜粋という体裁で日々の記録が掲載されていて、最後には旅費がさりげなく記されていて、おおよその予算がわかるようにもなっています。

 裏表紙の見返し部分には、日本郵船が実際に用いていた荷物タグが印刷されていて、これも旅情を誘う工夫のひとつと言えるでしょう。裏表紙は、神戸のオリエンタルホテルや、東京の帝国ホテルといった寄港先で人気のあった一流ホテルの商標が組み合わされています。表紙は、日本、中国、フィリピン、アメリカ、ハワイの文字が重なり合った大きな球体を軽業師が足で回転させることで、「周遊」を象徴するという、大変気の利いた意匠となっています。日本の軽業師は19世紀後半から各地の万博等で興行を重ねて好評を博しており、日本を象徴する存在としても捉えられていましたので、軽業師、人力車を組み合わせることで、日本への旅情を誘うことを狙ったものと言えるでしょう。

 パンフレットの印刷会社の記載はなくPrinted in U.S.A.としかありませんが、おそらくサンフランシスコでの印刷ではないかと思われます。また、刊行年についての記載もありませんが、見返しの航程案内の「On N.Y.K. LINE STEAMERS」の文字の下の黒塗り部分をよく見ると「ORIENTALSTEAMSHIP CO.」と記されていたことがわかりますので、日本郵船が東洋汽船と合併し、サンフランシスコ航路を引き継いだ1926年頃のものではないかと思われます。