書籍目録

『ネーデルランド連合国に対する目下の戦争の正当性』(第2版)『ネーデルランド連合国に対する目下の戦争のさらなる正当性』初版

スタッブ / (アンボイナ事件)

『ネーデルランド連合国に対する目下の戦争の正当性』(第2版)『ネーデルランド連合国に対する目下の戦争のさらなる正当性』初版

(合冊) 1673年 ロンドン刊

Stubbe, Henry.

A JUSTIFICATION OF THE Present War. AGAINST THE Vunted Netherlands….In Answer to a Dutch Treatise Entituled, Considerations upon the Present State of the United Netherlands. [bound with] A FURTHER IUSTIFICATION OF THE PRESENT WAR AGAINST THE United Nether

London, (Printed for) Henry Hills, and John Starkey, 1673 / MDCLXXIII(1673). <AB2020106>

Sold

Second edition & First edition.

4to (14.8 cm x 19.0 cm), 2 works bound in 1 vol. / Front.(facsimile), Title., 3 leaves, folded plate, pp.1-80. / Title., 11 leaves, pp.1-80, 79, 80(NO DUPLICATED PAGES), 81-86, 57-136(mins paginated), (some folded) plats: [4], facsimile of plate: [1], Near contemporary full leather, rebound.
同著者による2作品を合冊。装丁に傷み、テキストに染みが見られるが概ね良好な状態。欠落図版についてはファクシミリで補填。18世紀前後のものと思われる蔵書票あり。

Information

英蘭戦争の度にアンボイナ事件と共に英語圏で喧伝された同事件への日本の関与

ただいま解題準備中です。今しばらくお待ちくださいませ。

「もともと、アンボンのイギリス商館は1619年の協定以来、オランダ人の要塞の中に建てられ、両者の間柄は表面上は良好であったが、ある時イギリス人の使用する日本人が要塞の内部を調べていたという嫌疑を受け、イギリス商館の全員が捕えられ、イギリス人10名、日本人10名、ポルトガル人1名の全員が死刑に処せられた。世にアンボンの虐殺といわれる事件がこれである。しかし、断罪の根拠となった彼らの自白は、強いられたものであるために必ずしも信憑性がなく、果たして実際にこの計画があったかどうか、現在では疑問視されている。(中略)この事件によってイギリスは香料諸島におけるオランダとの協調の可能性を決定的に失い、この地域への定着を諦めてジャワに再び注目し、バタヴィアの商館を充実させようとしたが、すでにこの地に圧倒的な勢力を持つオランダ人に妨害されて果さず、澄んだ海峡のラグーンディ島に植民地を開こうとする企ても失敗に終わり、種々曲折ののちにバンテンに移ったが、この港も1634年頃以後ははなはだ振わなかったので、17世紀後半にはこのバンテンからも退いてついにジャワ全土から手を引き、のちの英領インド植民地に全力を傾けるようになる。アンボン事件が重要だというのは、このような大きな政策転換のきっかけとしてである。この事件が両国の間に投じた波紋は大きく、17世紀後半の蘭英戦争の遠因にもなり、またその講和の討議に際しても、何回もこの事件についての議論が交わされている。」
(長積昭『オランダ東インド会社』講談社、2000年、102-104頁)

刊行時に近い装丁を残しつつ修復が施された形跡がある。スタッブによる2作品が1冊に合冊されている。
18世紀前後のものと思われる蔵書票も残存。
欠落している口絵はファクシミリで補填されている。本文中の図版で欠落しているものも同様の措置が取られている。
『ネーデルランド連合国に対する目下の戦争の正当性』(第2版)タイトルページ。前年に刊行された際には著者名を明記せず匿名出版だった。
序文冒頭箇所。繰り返される英蘭戦争を巡っていかにイギリスに正当性があるかを主張した論争書。
イギリスにとって東南アジア地域からの勢力撤退を余儀なくされた「アンボイナ事件」は英蘭戦争の度にオランダの不当性を攻撃する素材として繰り返し喧伝され、その度にオランダの不当行為とそれに深く関与している日本のことが伝えられることになった。ヨーロッパにおける政治事情と密接に関連した日本情報の伝わり方の一例として興味深い。詩人ドライデンさえ同事件を題材に悲劇作品を刊行している。
欄外中に見られるように、ヴァレニウスやカロンなど日本情報の権威と目されていた各種文献を参照している。より自身の主張の正当性を裏付けるためのものと思われる。
後半に収録されている、『ネーデルランド連合国に対する目下の戦争のさらなる正当性』初版タイトルページ。スタッブらの主張に対してはオランダからも反論する書物が数多く刊行された模様で、それに対するさらなる反論となっている。さながら紙上の英蘭戦争の観を呈している。
目次冒頭箇所。
アンボイナ事件におけるオランダの非道な拷問と虐殺を折込図版で表現している。