書籍目録

『日出る地(日本)の最新案内:豊富な地図と写真を付して』

堀田肇

『日出る地(日本)の最新案内:豊富な地図と写真を付して』

初版 1902-3年 東京刊

Hotta H(anime).

UP-TO-DATE GUIDE FOR THE LAND of the RISING SUN. WITh MAPS AND NUMEROUS PICTURES.

Tokyo, Z.P. Maruya & Co., LTD. (Maruzen Kabushiki Kaisha), 1902-03.(明治三十五年). <AB2020101>

Sold

First edition.

11.0 cm x 16.8 cm, 4 leaves(advertisements), Title., 3 leaves(preface & contents), 1 leaf, pp.[1], 2-325, 1 leaf(colophon), 2 leaves(advertisements), advertisement leaves between the text leaves: [42], folded colored maps: [6], Original pictorial cloth, bound in Japanese style.
旧蔵者による背表紙へのラベル貼り付けあり。

Information

 本書は、1903年に大阪で開催された第5回内国勧業博覧会に向けて刊行された英文ガイドブックです。第5回内国勧業博覧会は、それまでの内国勧業博覧会をしのぶ最大規模(そして最後になった)の博覧会で、万国博覧会に近い内容と規模の博覧会でした。本書は、この博覧会に来場することが見込まれる来日外国人客に向けて、西日本を起点、中心とした英文の日本観光案内として刊行されています。著者の堀田肇についての詳しい情報は不明ですが、300ページを超える英文ガイドブックをどのような情報源に基づいて執筆、刊行したのかについては非常に興味深いものがあります。布張の表紙には、タイトルを意識した太陽と、日本をイメージさせる鶴と松が描かれていて、装丁も和綴を模した紐綴じにするなど、造本としても相当に凝った造りとなっていて、インパクトのある書物となっています。

 序文で堀田が述べているところによれば、本書は限られた時間の中で急いで準備されたため、多くの誤りや修正を必要とする箇所が見つかることはやむを得ないものとして読者の許しを乞うていて、第2版でこうした点を修正する旨が約束されています。ただし、店主の知る限り本書の第2版が実際に刊行されたのかについては定かではありません。本文は、鉄道と汽船という国内の交通手段の路線に応じて各地を案内するというもので、鉄道局関連の観光案内とよく似た作りになっていますが、本書の分量は300ページを超える大部のもので、当時の国産英文ガイドブックとしては異例な充実ぶりと言えます。大阪で開催される内国勧業博覧会に向けて作成されているため、国際港であった神戸の解説から始まっていて、京阪神を中心とした西日本を起点にした内容となっているもの本書のユニークな点と言えます。汽船航路も含めて全20のルート(路線、航路)と主要都市を案内する作りとなっており、路線によっては重複する都市もありますが、かなり細かに各地の情報を収録した内容と言えます。各地の案内と合わせて当該地域の広告が挿入されていて、旅館やホテル、土産物を本文記事と合わせて見ることができるようになっています。

 本書は当時の国際の英文ガイドブックとしては異例の大部の著作と言えるものですが、著者の堀田肇の経歴や、本書刊行の情報源、協力体制など、ほとんどのことが未解明になっているものと思われます。当時既に国内では、外客誘致のための非営利組織として喜賓会が活動していましたが、同会との関係なども含めて、当時のツーリズムの様相の一端を明らかにする可能性を秘めた興味深い一冊ということができるでしょう。なお、各章の概要と言及されている地名は下記の通りです。

第1章:(日本への旅行に関する)予備情報
ガイド、通関、人力車、通貨(両替)、度量衡、郵便と電信、国内外の郵便・通信料、旅館と食事処、祝日、主要祭事、花の季節、宗教

第2章:日本についての一般情報
位置、地理区分、行政区分、地域、海岸線、人口、気候

第3章:日本中部
 ルート1:神戸
 ルート2:阪鶴鉄道線(池田、篠山、福知山、舞鶴、宮津)
 ルート3:大阪
 ルート4:関西鉄道線(奈良、上野、都祁、亀山、四日市、桑名、名古屋)
 ルート5:参宮鉄道線
 ルート6:紀和鉄道線
 ルート7:高野鉄道線
 ルート8:南海鉄道線
 ルート9:京都
 ルート10:京都鉄道線
 ルート11:鉄道局東海道線(大津、草津、彦根、大垣、岐阜)
 ルート12:続鉄道局東海道線(静岡、沼津、御殿場、河津、大磯、逗子、横須賀、浦賀)
 ルート13:横浜
 ルート14:東京

第4章:西日本
 ルート15:山陽鉄道線(須磨、塩屋、舞子、明石、加古川、宝殿、姫路、赤穂、岡山、庭瀬、福山、広島、宮島、岩国、下関)

第5章:東日本
 ルート16:日本鉄道線(宇都宮、福島、仙台、盛岡、長野、水戸)

第6章:九州
 ルート17:九州鉄道(八代線、門司、小倉、福岡、久留米、熊本、長崎線、佐賀、長崎)

第7章;北海道
 ルート18:北海道炭礦鉄道線(函館、室蘭、石見沢、札幌、小樽

第8章:日本海の汽船旅(門司–小樽)
 ルート19:大家商船(浜田、境、松江、米子、宮津、敦賀、七尾、伏木、金沢、夷港、新潟、函館、小樽、ウラジオストク、コルサコフ、元山、釜山)

第9章:瀬戸内海と西日本のその他の路線
 ルート20:大阪商船会社(多度津、善通寺、琴平、鞆浦、尾道、糸崎、音戸、呉、宇品、広島、宮島、岩国、門司、下関、今治、三津浜、松山、別府、大分、佐賀関、細島、宇和島、兵庫、淡路島、郡家、湊、撫養、小豆島、土庄、岡山、福良、仮屋、志筑、洲本、由良、徳島、萩、浜田、温泉津、鷺、境、米子、松江、賀露、津居山、宮津、博多、伊万里、佐世保、長崎、三角、若津、鹿児島、大島、沖縄、和歌山、和歌浦、湯浅、御坊、田辺、勝浦、鳥羽、二見、上社、津、四日市、熱田、名古屋、横浜、台湾,、基隆、台北、澎湖)