書籍目録

『日本キリスト教史』

クラッセ

『日本キリスト教史』

ポルトガル語版 全3巻 1749年、1751年、1755年 リスボン刊

Crasset, Jean

HISTORIA DA IGREJA DO JAPAÕ, EM QUE SE DA' NOTICIA DA PRIMEIRA entrada da Fé naquelle Imperio,...

Lisbon, MANOEL DA SYLVA(vol. 1 & 2) / MANOEl SOARES (vol. 3), M.DCC.XLIX.(1749) , M.D.CC.LI.(1751), M.DCC.LV.(1755). <AB201768>

Price on request.

First (and only) edition in Portguse.

8vo, Vol. 1: Title, 19 leaves, pp.1-272, 271-2, 273-285, 286, 283-4[i.e.287-8], 289-577, 590-1, 580-9, 578-9, 592-642, Folding map: [1], Folding plates: [4], Vol.2 : Title, 5 leaves, pp.1-436, 435-442, 445-255-6[i.e.555-6], 557-560, Vol.3: Title, 5 leaves, pp, .1- 212, 215-222, 221-416, 411-442, 449-643, Folding plate [1], Plates in text: [1], Contemporary full calf, rebacked.
出版社が同じ第1巻と第2巻はよく似た装丁だが微妙に異なり、出版社が異なる第3巻は、はっきりと異なる装丁。いずれも状態は良好。

Information

唯一の日本地図を収録するポルトガル語版

 クラッセ(Jean Crasset, 1618 -1692)は、フランスのイエズス会士の著作家で、本書以外にも宗教書を中心に多くの著作があることで知られています。本書は、イエズス会の日本での布教開始から17世紀半ばの幕府による禁教政策の完成によって宣教活動が不可能になるまでの歴史を描いたもので、フランス語で1689年に刊行されたものが初版です。刊行されてからすぐに好評を博し、英語、ドイツ語、イタリア語に翻訳されただけでなく、フランス語版も版を重ね、17世紀後半から18世紀にかけてのヨーロッパにおける日本像の形成に大きく貢献しました。

 本書は、その中でも後年になって刊行されたポルトガル語版で、各種ある翻訳版の中でも最も稀覯とされているものです。このポルトガル語版は、全3巻からなる非常に大部なもので、それらが同時に刊行されたのではなく、6年にわたって1巻ずつ刊行され、しかも第3巻は出版社が変更されたたために、全巻が揃いで見つかることがあまりありません。また、折り込みの図版が欠落していることもままありますが、本書は折り込み図版5点が全て揃っている貴重なものです。

 ポルトガル語版の最大の特徴にして、その資料的価値を高めているのが、第1巻に付属する折り込みの日本地図です。フランス語原著をはじめとして、他のいかなる翻訳語版にも日本地図は収録されておらず、このポルトガル語版だけが、日本地図を収録しています。この日本地図は、その系譜にちなんで「ブランクスーモレイラ型」と呼ばれるもので、直接的には、カルディム(Antonio Francisco Cardim, 1596 - 1659)の『日本殉教聖華(Fasciculs Iapponicis floribus...1646)』に収録されていた日本地図を原型としています。

 「ブランクスーモレイラ型」と呼ばれる日本地図は、ポルトガルの地理学者でイエズス会士であったモレイラ(Inácio Moreira, 生没年不詳)が、1590年から2年をかけて日本に滞在し、その間の成果をまとめて作成した地図がその原型とされています。この地図は、ヴァリニャーノ(Alessandro Valignano, 1537 - 1606)の著作に収録される予定でしたが、不幸にもこの著作自体が刊行されなかったため、現存していません。しかし、モレイラの地図を手本にして、1617年にブランクス(Christophoro Brancus, 生没年不詳)が作成し、印刷した地図が世界で一部だけ現存(西洋における日本古地図史研究の大家であるJason Hubbard氏が所蔵されており、先日の東京国際稀覯本フェアで展示され話題となりました)しており、その姿を かろうじて現在に伝えています。カルディムの著作に収録された日本地図は、このブランクスの地図を元に、装飾的要素を取り除き、その代わりにイエズス会によって宣教活動が行われた地域に十字の印を付け、地図下方にザビエル来航船を描きこみました。

 本書に収められた日本図は、このカルディムの地図を直接的な底本とし、地図中のテキストをポルトガル語に改めています。「ブランクスーモレイラ型」の日本地図は、17世紀を通じて様々な地図帳や海図において流布しましたが、本書に収められている日本図は、この系譜の最後期に属するものでありながら、最初期の特徴を正確に反映している非常に重要な日本図です。世界に一部しか現存しないブランクス日本地図はいうに及びませんが、カルディムの著作に収録された日本地図も現存数は決して多くなく、著作から切り離されてしまっていることもしばしばあり、現在では大変貴重とされています。本書は、作品自体の現存数が少ないことに加え、この重要な日本地図を含んでいることから、西洋における日本地図史においても大変貴重な資料と言えるものです。

 なお、クラッセのこの作品は、明治に入ってから、駐仏公使鮫島尚信が入手し、フランス人宣教師によって翻訳され、『日本西教史』と題して太政官から出版(明治(明治13、1880年)されました。この翻訳版は、明治政府によるキリスト教禁教政策が撤廃されてまもない時期に、初めて日本語で紹介された本格的な日本におけるキリスト教史として大きな影響を与え、以来、この著作はこのタイトルで呼ばれることが多くなっています。

第1巻タイトルページ
第1巻に収録される日本図。いわゆるブランクスーモレイラ型と呼ばれるもので、直接的には、カルディム『日本殉教聖華』所収の日本図に基づく
第1巻収録折り込み図。モンタヌス『日本誌』由来のもの。
第1巻収録折り込み図。同じくモンタヌス『日本誌』由来のもの。
第1巻収録折り込み図。江戸城を描いたもので、モンタヌス『日本誌』由来のもの。
第1巻収録折り込み図。将軍拝謁の図で、モンタヌス『日本誌』由来のもの。
第2巻タイトルページ。第2巻に折り込み図版はない。
第3巻タイトルページ。出版社が第3巻のみ異なる。
第3巻収録折り込み図。第1巻のそれと異なりモンタヌス『日本誌』由来のものではない。
第1巻と第2巻はよく似た装丁だが、第3巻ははっきり異なる装丁。いずれも状態は良好。