書籍目録

『三大旅行記』

ストライス

『三大旅行記』

初版 1676年 アムステルダム刊

Struys, J(an). J(anszoon).

Drie aanmerkelijke en seer rampspoedige REYSEN, Door Italië, Griekenlandt, Lijslandt, Moscovien, Tartarijen, Meden, Persien, Oost-Indien, Japan, en verscheiden andere Gewesten….

Amsterdam, Jacob van Meurs / Johannes van Someren, 1676. <AB202014>

Sold

First edition.

4to (16.5 cm x 21.3 cm), Title., 1 leaf, pp.1-12, 3[i.e.13], 14-377, (1)-(34), 6 leaves, 1 leaf(blank). LACKING all plates, Contemporary vellum.
図版は全て欠落しているが、テキストは完備。

Information

「ヨーロッパで空前のベストセラー」となった旅行記に記された長崎と日本の人々の姿

「『三大旅行記』は1676年にファン・メウルスおよびファン・ソーメレンによってアムステルダムで出版された。この出版社は1678年にドイツ語版、1681年にフランス語版も出版している。1683年にはロンドンで英語版が出された。『三大旅行記』は版を重ね、18世紀半ばまでに20版以上が出された。その大半が当時の知識人の共通語であるフランス語で出版されたことは、ストライスの人気がオランダだけでなく、ヨーロッパ全土に渡っていたことを物語っている。
 ストライスは読み書きがほとんどできなかったため、職業作家が彼の話を書き留めたようである。ストライスの魅力的な冒険物語の合間には、彼が訪れた各地を描写した記述が巧みに挿入されている。これらの記述は、すでに出版されていた他の旅行記や博学書から転写されている部分が多いが、そこに盛り込まれているストライスの実際の経験や見聞は、各地の描写記述に、当時の博学書にない生き生きとした表現力を与え、読者の好奇心を引き付ける魅力を加えている。各地についての記述の中で、ストライスが1650年に滞在した長崎についても3頁ほどが割かれている。この長崎についての記述は、他の書物からの転写部分は少なく、ストライス独自の話を基にしているようであり、長崎を訪れた冒険家としての感想が生き生きと書き留められている。」


「ストライスは次に日本人についての印象を語っている。

 日本人は割と良い顔色を持っているが、ヨーロッパ人よりやや黒い。男性の日常の服装は女性のものとあまり変わらない。両方とも身体に長いローブ[着物]を無造作に巻いて、真中のところで帯で締めている。上流階級の女性は贅沢な刺繍が施された金や銀の布からできた衣服を着ている。彼女たちの髪は宝玉や宝石で小綺麗に飾られている。男性はたくましい身体を持ち、容姿が良い。頭は身体と比べて相対的に少し大きめである。女性は細いが、常にゆとりのある服を着ているので、身体を矯正していない。足だけは小さいまま保つように、できる限りきつく締め付けている。というのも、これが格好いいと思っているからである。これを続けると、大人になった時に5〜6歳の子供のような足を持つ。日本人は一般にとても頑丈であり、暑さ、寒さ、喉の渇き、空腹の極限に耐えることができる。この素質は、若い時の我慢強さによって形成される。というのも、彼らは幼児をいつも寒い時期に川で洗う。時には、子供を頭や耳まで雪の中に突っ込む。彼らは最も優秀な武士であり、鉄砲や弓、槍の使用に長けている。彼らは、その武器製造や鉄の鍛え加減に関しては中国人より巧みであり、ヨーロッパ人をはるかに上回ることで、アジアで名声を得た。彼らの刀はあまりに鍛え加減が良く、私がそれで半インチの太さを持つ鉄のピンを打ち砕いても、刃先には少しの損傷もなかった。彼らは狩りをよく行っている。これは日本での主要な行事であり、余暇である。他の美味しい物よりも狩猟で取った獲物の肉を好んでいる。接待に関しては、とても率直で自由である。彼らは心地良さのために茶を飲む。これは輸出されているものよりもずっと美味しく、また、別の方法で作られている。しかし、彼らはこれをキリシタンに分け与えることを拒んでいる。私はこれを少しおかしいと思った。なぜなら、他の国で飲まれるほど、彼らの利益になるからである。というのも、この島の茶は世界のどこよりも美味しい。

 この箇所に出ている、小さいまま保つために女性の足を締め付ける習慣について、ストライスは中国で行われた纏足と混同しているようである。」

(クレインス フレデリック『17世紀のオランダ人が見た日本』臨川書店、2010年、193,194ページ / 198-200ページより)

刊行当時のものと思われるヴェラム装丁
タイトルページ
本文冒頭箇所
最初の旅行記の末尾に長崎と日本についての記事が主録されている。
ストライスが実験した長崎の様子が生き生きと描かれている。
ストライスによる日本の人々の考察も収録されている。