書籍目録

『米軍第24歩兵師団小史』

(占領軍)(便利堂)

『米軍第24歩兵師団小史』

クーンズ(編) (1947年) 京都刊

(The 24th infantry division) (Occupied Japan) Koons, William B.

THE 24TH INFANTRY DIVISION. A BRIEF HISTORY.

Kyoto, BENRIDO COMPANY LTD, (1947). <AB201762>

Sold

14.0 cm x 21.4 cm, 4 leaves, pp. 1-103 , Colored plate [9], Folding map [1], Original paper wrappers

Information

日本軍と多数交戦し戦後占領に加わった米陸軍師団小史、京都便利堂による印刷

 本資料は、戦後間もない1947年と思われる時期に作成された冊子で、米国陸軍第24歩兵師団の小史を扱ったものです。印刷を手がけたのは、京都を代表する老舗の印刷会社である便利堂で、同時期の国内出版物と比べ、その出来栄えの良さは特筆すべきものがあります。

 第24歩兵師団は米国陸軍の中でも長い歴史を有していた部隊で、1921年に編成されたハワイ師団を元に、1941年に編成され、2006年まで存続していました。第二次世界大戦中は、日本軍との戦闘に数多く参加し、真珠湾攻撃による被害を受けて以降、ニューギニアやレイテ、ルソン島での戦闘を繰り広げ、終戦まで日本軍と交戦しただけでなく、戦後の日本占領にも加わりました。また、その後も朝鮮戦争に最初に参加した部隊としても知られています。

 本書は、日本占領中の1947年に作成されたと思われるもので、ハワイでの師団結成以来の歴史を振り返って紹介する内容となっています。冒頭の九州、四国、中国地方西部を描く日本図では、彼らが駐屯、展開していた地域が示されており、主に福岡(小倉、博多)、長崎(佐世保)、大分(別府)、熊本(熊本)に舞台が展開していたことがわかります。口絵の写真では、彼らが接収して本部として用いていた小倉の建物(店主はまだ未確認)とそこにたなびく星条旗が写されています。

 記述の多くは、日本軍との各地での交戦の様子に当てられており、激戦と言われているニューギニアやレイテ、ルソン島での戦闘の様子が写真も交えてコンパクトながらも詳細に伝えられています。また、そこには、旧日本陸軍第35軍の将校としてレイテ島などの戦闘に参加し、捕虜となってから記した『軍参謀長の手記:比島線の真相』(黎明出版社、1946年)でも知られる、友近美晴も登場しています。また、日本の占領準備や占領期間中(つまり本書刊行当時での「現在」)の様子についても記されており、戦中から一貫して日本との関係が深かった舞台による記録としても大変貴重な資料となっています。後半では、所属する部隊がその隊章とともに紹介されており、隊章は色彩が施された高品質なものとして再現されています。

 本書の印刷を手がけたのは、京都の老舗である便利堂で、弊店ホームページでもご案内していた、アメリカ陸軍第1軍団 公人訪問連絡部『京都とその近郊の旅』を作成するなど、特に西日本の占領軍の出版物作成に際して関係が深かったものと推察されます。(東京を中心とした東日本では凸版印刷によるものが多く見られます→弊店ホームページでご案内している。ウィロビー(編)『ゾルゲ・スパイ事件についての一次文書抜粋集』もその一例です)

 本資料は、その序文でも記されているように、部隊の新入隊員向けに当初は作成されるはずだったようですので、おそらく軍関係者だけに配布されたものと思われます。そのためか現在、国内研究機関では所蔵が確認できない貴重な文献となっています。

九州を中心に展開していた師団の概要を示す地図
師団本部が置かれていた小倉の建築物(店主は建築物を未特定)
各地での戦闘と展開を示した地図
師団章はハワイに起源を有することにちなんでタロイモの葉を採用していた。
ミンダナオ島での戦闘
当時刊行されたばかりであったはずの、友近美晴『軍参謀長の手記:比島線の真相』(黎明出版社、1946年)をいち早く参照している。
日本占領における師団の活動
美しい彩色が施された所属部隊の隊章が掲載されている。
京都の老舗印刷会社である便利堂による作成であることを明記。出版物としてのクオリティは同時代のものに比して非常に高いと思われる。
裏表紙。