書籍目録

 『イラストレイテッド・ロンドン・ニュース』第61巻(1872年6月から12月)

[ワーグマン] / [レガメ] / (ブラントン) / (岩倉使節団)

『イラストレイテッド・ロンドン・ニュース』第61巻(1872年6月から12月)

(第1713号から第1738号までの26号を1冊に合冊) 1872年 ロンドン刊

[Wirgman, Charles] / Régamey, Félix]

THE ILLUSTRATED LONDON NEWS. VOL. LXI. JULY TO DECEMBER, 1872.

London, GEORGE C. LEIGHTON, 1872. <AB2019189>

Sold

26 issues bound in 1 vol.

28.0 cm x 40.0 cm, pp.[I(Title.)-III], IV, [1]-163, [164], 2 leaves(plates), [165], 166-451, [452], 2 leaves(plates), [453], 454-640, Original publishers decorative green cloth.
製本の綴じに傷みが見られるが、全体として良好な状態

Information

ブラントンによる灯台設置報告記事や、鉄道開業を報じた記事等を収録

 本書は、絵入り週刊誌の先駆けとして名高い『イラストレイテッド・ロンドン・ニュース』のうち、1872年6月から12月にかけて刊行された26号分を1冊にまとめて合冊したものです。岩倉使節団についての解説記事や、明治政府最初の御雇外国人とされる灯台技師ブラントン(Richard Henry Brunton, 1841 - 1901)による日本各地での灯台設置の様子を報じた記事、1872年の日本最初の鉄道開通についての記事など、特派員ワーグマン(Charles Wirgman, 1832 – 1891)らによる日本関係記事が豊富に収録されており、同時代のイギリスで発行された最大手週刊誌における日本情報の伝播状況を理解する上で欠かせない文献資料です。

 『イラストレイティッド・ロンドン・ニュース』は、1842年にロンドンで創刊された週刊誌で、その名の通り、イラストをふんだんに盛り込んだ独自の編集方針によって大成功を収め、視覚情報を重視したメディアの先駆けとなりました。同誌は世界中に特配員を派遣したほか、各国政府、公使館、領事館筋の情報をいち早く入手することで、世界各地の最新情報を読者に提供したことでも知られており、自宅にいながらにして最新の世界情勢を精細な図版とともに得ることができる画期的なメディアとして、当時のヨーロッパにおける情報流通の様相を大きく変容させたと言われています。

 また、同誌は、ワーグマンを特派員として採用していたことから、彼の特派員通信にもとづいた最新の日本情報と、さまざまな挿絵が多くの号に掲載されていることで、同時代の欧文日本研究資料としても高く評価されています。画家でもあったワーグマンは、友人の写真家でもあったベアト(Felice Beato, 1832 - 1909)の写真をもとにして描いた数多くの挿絵を記事ととも同誌に提供しており、そのおかげで、同誌に掲載される日本関係記事の多くは、優れたイラストとともに掲載されています。

 同誌は、毎週土曜日に発行され、概ね25ページから30ページほどの分量で、1ページの大きさが、縦約40センチ、横約30センチと非常に大きな用紙を用いて印刷されており、この大きな用紙に展開される様々なイラストが同誌の大きな魅力、特徴となっていました。毎週発行された各号は、半年ごとに合冊され、全体のタイトルページを付して1冊の書物としても販売されたようで、本書はこうした合冊本にあたるものです。後に合冊して販売することを念頭に置いていたためと思われますが、各号のページ付は連続しています。

 内容は各号でばらつきがあるのですが、店主がざっとみたところでは、概ね次のような記事で構成されていることが多いようです。

・絵入一面記事(トップニュース)
・外国と植民地関連記事(日本含む)
・最新海外速報
・教会と大学関連記事
・絵入特集記事
・週末行事一覧
・天気予報
・一般記事
・王室関係記事
・裁判記事
・議会関連記事
・大都市関連記事
・大規模行事
・週の出来事
・農場、農業記事
・スポーツ記事
・貴人の訃報記事
・地方関連記事
・市場記事
・他誌記事から
・一般の生誕・婚姻・訃報記事
・外国為替関連記事
・広告
・特集記事
・遺言記事
・郵便関係記事
・芸術記事
・文学記事
・他雑誌関連記事
・音楽関係出版記事
・科学記事
・海軍、陸軍諜報関連記事
・音楽記事
・劇場記事
・今週のチェス
・特派員通信記事

 本書に収録されている号とページ数、および日本関係記事については、下記のとおりです。


1. No.1713:7月6日号(pp.1-24)
2. No.1714:7月13日号(pp.25-48)
3. No.1715:7月20日号(pp.49-72)
4. No.1716:7月27日号(pp.73-96)
5. No.1717:8月3日号(pp.97-120)
6. No.1718:8月10日号(pp.121-144)
7. No.1719:8月17日号(pp.145-168)
8. No.1720:8月24日号(pp.169-192)
9. No.1721:8月31日号(pp.193-216)
10. No.1722:9月7日号(pp.217-240)
11. No.1723:9月14日号(pp.241-264)
12. No.1724:9月21日号(pp.265-288)
13. No.1725:9月28日号(pp.289-312)*京都博覧会や王立アジア協会に関する記事あり
14. No.1726:10月5日号(pp.313-336)
15. No.1727:10月12日号(pp.337-360)*岩倉使節団、ブラントンによる日本の灯台設置に関する記事と図版あり
16. No.1728:10月19日号(pp.361-384)*第1回京都博覧会に関するワーグマンの記事と図版あり
17. No.1729:10月26日号(pp.385-408)
18. No.1730:11月2日号(pp.409-432)*日本の「駕篭(KAGO)」についての記事とレガメの図版あり
19. No.1731:11月9日号(pp.433-456)
20. No.1732:11月16日号(pp.457-480)
21. No.1733:11月23日号(pp.481-504)
22. No.1734:11月30日号(pp.505-528)*アメリカにおける日本の留学生数に関する小記事あり
23. No.1735:12月7日号(pp.529-552)*日本での鉄道開通に関するワーグマンの記事と図版あり
24. No.1736:12月14日号(pp.553-576)
25. No.1737:12月21日号(pp.577-616)*日本での鉄道開業式に関する記事とレガメの図版あり
26. No.1738:12月28日号(pp.617-640)*日本での鉄道開業式におけるマーシャルによる居留地商人を代表しての挨拶を描いたレガメの図版と記事あり

 日本からの挿絵は、ワーグマンによるものが多いのですが、興味深いことに一部には、フランスの画家で1876年に来日してから数多く日本を描いたレガメ(Félix Régamey, 1844 - 1907)の署名が入った図版が確認できます。レガメ自身が来日するのは後年の1876年のことですので、レガメが日本から送ったものとは考えられませんが、本書が刊行された1872年当時、レガメはロンドンに滞在していたとされていますので、この時レガメがイラストレイテッド・ロンドン・ニュースのために働き、日本から送られてきた写真やスケッチを元に描いた可能性があり得ます。後年、日本を訪れたレガメは日本から『ル・モンド・イリュストレ(Le Monde Illustré)』に数多くのスケッチを送っていますが、あるいはこのロンドン滞在中のイラストレイテッド・ロンドン・ニュースでの仕事を通じて触れた日本情報や、現地から新聞社へのスケッチの提供というアイディアに強い関心を持ったのかもしれません。

 『イラストレイティッド・ロンドン・ニュース』は、歴史的に重要なメディア資料として世界中で高く評価されており、近年ではデジタルアーカイブも販売されているほどです。デジタル版は記事検索など多くの利点があり、その有用性は疑うところがありませんが、やはり同誌の大きな魅力、特徴であった大型用紙全面に展開される図版から受ける印象というものは、やはり現物によってはじめて得られるところがあります。その意味では、日本関係記事を豊富に含んだ本書は、当時のヨーロッパにおける日本情報が与えたインパクトを追体験することもできる大変貴重な資料と言うことができるでしょう。

刊行当時の箔押しが多用されたクロス装丁
巻全体のタイトルページ
収録されている図版の索引が冒頭に付されている。
第1713号表紙。
岩倉具視の肖像画(右下)(No.1727:10月12日号より)
ブラントンによって設置が進んでいた近代的な灯台施設を描いた図。上から、佐多岬、潮岬、神子元島、伊豆石廊崎、大阪(No.1727:10月12日号より)
上記図版に関する記事(No.1727:10月12日号より)
日本の労働者を描いた図(No.1727:10月12日号より)
第1回京都博覧会に関するワーグマンによる図(No.1728:10月19日号より)
日本の「駕篭(KAGO)」を描いた図版。右下にレガメのサインが確認できる。(No.1730:11月2日号より)
日本での鉄道開通に関するワーグマンによる図(No.1735:12月7日号より)
日本での鉄道開業式を描いたレガメによる図(No.1737:12月21日号より)
日本での鉄道開業式におけるマーシャルによる居留地商人を代表しての挨拶を描いたレガメの図(No.1738:12月28日号より)