書籍目録

『1940年第12回オリンピック東京大会記念準備パンフレット』

第12回オリンピック東京大会組織委員会

『1940年第12回オリンピック東京大会記念準備パンフレット』

[1938年] 東京刊

The Organizing Committee of the XIIth Olympiad Tokyo.

OLYMPIC PREPARATIONS FOR THE CELEBRATION OF THE XIITH OLYMPIAD TOKYO 1940.

Tokyo, The Organizing Committee of the XIIth Olympiad Tokyo (Printed by Bunshodo Printing Co., LTD.), [1938]. <AB2019104>

Transferred

18.2 cm x 20.0 cm, pp.[1(Title.)], 2-31, Original pictorial paper wrappers.

Information

「幻の東京オリンピック」海外向け訪問誘致英文パンフレット

 本書は、幻となった第12回オリンピック東京大会(1940年開催予定)の海外向け訪問誘致英文パンフレットです。30頁ほどの小冊子ですが、美しい表紙と写真を多数配したビジュアルを重視した作りとなっており、当時の海外向け宣伝の熱の入り方を知ることができる大変興味深い資料です。表表紙と裏表紙を広げると一枚の大きな桜の絵となる凝ったつくりの表紙絵を描いたのは、著名な日本画家である結城素明と言われています(夫馬信一『幻の東京五輪・万博』原書房、2016年、冒頭カラー写真図05頁)(裏表紙に落款あり)。

 このパンフレットは、1938年頃に作成されたものと言われており、1940年に東京でのオリンピック開催が決定してから中止に至る転換点に当たる時期に、当時計画されていた内容を海外に向けて広く紹介する意図を持って作成されたものです。そのことを反映して、内容は次のようになっています。

・日本におけるオリンピックの精神
・クーベルタン男爵からの最後の挨拶
・近代オリンピック大会開催地と開催年一覧
・国際オリンピック委員会執行委員名簿と第12回オリンピック東京大会組織委員会名簿
・東京大会組織委員長、徳川家達による挨拶文
・大会プログラム
・各種スタジアムと競技場、芸術大会会場施設の案内
・大会会場地図
・男女選手村の紹介と世界各地からの交通案内
・国内鉄道網の紹介
・空路による満州と中国北部との接続網紹介
・宿泊施設の案内
・報道機関向け通信施設と各種宣伝物入手方法の案内
・1940年第5回冬季オリンピック札幌大会の組織委員名簿
・冬季オリンピック札幌大会プログラム
・会場全景とスキー、スケート、ボブスレーなど各種競技と競技場の案内
・宿泊施設とレストランの案内

 東京大会だけでなく、同年に開催が予定されていた冬季オリンピック札幌大会の案内も後半に収録しており、同じ年に、万博、オリンピック、冬季オリンピックという国際メガイベントを3大会も開催しようとしていたことに驚かされますが、このパンフレットを見る限りでは、準備が非常によく進んでおり、非常に意欲的な各種施設が用意されていたという印象を受けます。少ないページ数を効果的に用いて、非常に読みやすい作りとなっており、また上述の通り写真とイラスト図面を駆使してビジュアルを重視した内容になっていることから、オリンピック大会に海外からの観光客を誘致する上で非常に効果を発揮したのではないかと思われます。こうした海外宣伝において中心的な役割を果たすことになったのは、国際観光局やジャパン・ツーリスト・ビューローだったのではないかと思われますが、海外向け宣伝物を希望する際はジャパン・ツーリスト・ビューローや日本郵船が窓口となっていたことが、報道危機感向け通信施設と各種宣伝物入手方法の案内の記事に書かれているのも、このオリンピック大会の対外広報の実態を把握する上で、興味深い点です。

 なお、夫馬信一による前掲書では、本書と合わせてよく似た形状の英文パンフレットが合計3種類紹介されており、これらと比較することで、より一層このパンフレットの狙いと性格が明らかになるのではないかと思われます。巻末には印刷会社名が小さく記されており、Bunshodo Printing Co. とありますので、昭和初期に創業された文昇堂印刷によるものと思われますが、同社が担当することになった経緯や、発行部数などについては不明です。

 幻となった1940年第12回オリンピック東京大会に関する対外広報関係資料は、大会が開催されなかったことも災いして、その多くが現在失われてしまっており、国内研究期間における所蔵も限られたものとなってしまっているようです。本書もその例に漏れず、店主の知る限りでは、国立国会図書館と、夫馬信一による前掲書で紹介されている秩父宮記念スポーツ博物館による所蔵本2点しか確認することができません。戦前の日本における対外観光政策の一つのピークでもあった幻のオリンピック大会に関する貴重な資料として、今後の研究、展示紹介が期待されるパンフレットといえるでしょう。

「東京大会や日本について英語で紹介した小冊子です。図版が多数用いられ、視覚に訴える作りになっています実施競技やスタジアムについてだけでなく、世界各国からのアクセス、交通網、宿泊施設などについても触れられています。英語版のほか、仏・独語版も作成・配布されました。
 冒頭では、「THE LAST MESSAGE OF BARON DE COUBERTIN」と題し、東京大会開催の意義について述べるクーベルタンの言葉が載っています。
 クーベルタンは東京大会の顛末を見届けることなく、1937年9月に亡くなりました。」
(国立国会図書館 (デジタル展示)「本の万華鏡」第15回「もう一つの東京オリンピック」より)