書籍目録

『イエズス会の歴史 アジア 第一部』

バルトリ

『イエズス会の歴史 アジア 第一部』

(第2版) 1654年 ジェノヴァ刊

DELL'HISTORIA DELLA COMPAGNIA DI GIESV L'ASIA DESCRITTA DAL P. DANIELLO BARTOLI Della medesima Compagnia. PARTE PRIMA.

Bartoli, Daniello

Genova, Benedetto Guasco, M.DC.LVI. (1654). <AB201746>

Reserved

4to, Title, 3 leaves, pp. 1-197[i.e.179], 180-628, 629[i.e. 636, 637], 638-667[i.e. 665], 666-672, 673[i.e. 702, 703], 704-747[i.e. 761], 762-894, 5 leaves (TAVOLA), Modern Parchment
当時を模した近年の再装丁、ページの所々に破れがあるがいずれも(おそらく再装丁時に)修復済。

Information

バルトリによるイエズス会史の金字塔、日本関係記事を多数収録。貴重なジェノヴァ版

 著者のバルトリ(Daniello Bartoli, 1608 - 1685)は、17世紀を代表するイエズス会の歴史家で、イエズス会の歴史を活動地域別に分けて刊行した大部の歴史書『イエズス会史(Istoria della Compagnia di Gesú. 1650-1673)』を著しました。彼自身は、日本をはじめとするインド布教を希望していたと言われますが、その類いまれなる才能を著述作品の完成に向けるべきと判断したイエズス会当局の命を受け、1646年から没年の1685年までローマで執筆活動に専念する生涯を送りました。

 本書は、バルトリの壮大な歴史書『イエズス会史』のアジア部の第1部となるもので、『イエズス会史』全体の中でも最初にあたる巻です。全8章からなり、冒頭の4章は、アジア布教の先駆者にして日本への布教の創始者、ザビエル(Francisco de Xavier, 1506-1552)の伝記となっています。

 本書の第2章終わりで描かれる日本人アンジロウとの出会いから、第3章で描かれるザビエルの日本布教では、日本関係記事を中心に構成されています。第3章では、最初に日本についての概略が述べられており、とりわけイエズス会にとって関心の高かった仏教や神道について論じています。ザビエルが薩摩で行なった仏僧との宗教論争や、日本でザビエルが起こしたとされる奇蹟、山口での布教活動、京都に上っての布教請願と山口への帰還、そこから豊後への布教といったザビエルの活動が詳細に扱われていますが、イエズス会史の著者らしく、各地での宗教論争とその内容については特に詳細に論じています。

 また、最後の第8章では、ザビエル以外の宣教師による日本布教が扱われており、日本を含むアジア諸国を放浪し、虚実ない交ぜとなった著作『遍歴記(Peregrinação)』で知られるピント(Fernão Mendes Pinto, ? - 1583)についても言及されています。通常、公刊されるイエズス会の記録や歴史書においては、会の脱退者について扱われないことが多いと言われていますので、これは珍しいことのように思われます。他には、ザビエルから厚く信頼されていたガスパル神父(Gaspar Barzaeus, 1515-1553)、日本への西洋医学の導入と病院建設の功績でも知られるアルメイダ(Luis De Almeida, 1525-1583)、織田信長から厚い信頼を受け、織豊時代の同時代史『日本史』を著したフロイス(Luís Fróis, 1532-1597)などの初期の日本布教を代表する錚々たる人物が登場しています。

 バルトリは、本書の執筆にあたって、ローマのイエズス会文書館に所蔵されていた資料を駆使しており、本文中ではその出典を明記していませんが、ザビエルの伝記部分については、特にルセナ(João de Lucena, 1549?-1600)による『ザビエル伝』(原著はポルトガル語、Historia da vida do Padre Francisco de Xavier...1600. )を参照していたことが、後年の研究で明らかにされています。また、このザビエルの伝記部分である第1章から第4章は、のちにラテン語に翻訳され『ザビエルの生涯とその行い(De vita, et gestis S. Francisci Xaverii. 1666)と題して、独立した書物としても刊行されています。

 本書初版は、1653年にローマで刊行されていますが、本書はその翌年にジェノヴァで刊行された第2版とされているもので、初版やローマでの再版に比べて国内の所蔵機関が非常に少なく、東洋文庫、天理図書館のみの所蔵と思われます。

 なお、本書に続くアジア第2部は日本だけを集中的に扱っており1660年にローマで刊行されています。以降も、アジア第3部中国編が1663年に刊行されていて、のちにはヨーロッパ各国編も出されています。


「ダニエッロ・バルトリ(Daniello Bartoli, 1608-1685)は、17世紀のイエズス会の著名な歴史家であり、かつ同会の優れた布教史の著者である。彼はまた17世紀(Seicento)のイタリア語散文作家群の一人に属する。バルトリの著作はいとも厖大で、それはまた彼が取り扱ったテーマが広範囲である点でも指摘されるべきである、その著『イエズス会史』は、彼が活動した当時の歴史が主となっており、提示されていた各地からの諸年報中、本書でそのまま用いられる箇所はごく少ないとは言え、その要約は、この不撓不屈の著者の叙述の中に正確に秩序立てられていると言い得よう。」
「アジアにおけるイエズス会史は、1653年と1663年の間に刊行され、全3部からなり、17巻に分かれる。第1部「アジア」は8巻、第2部「日本」は5巻、第3部「シナ」は4巻である。「アジア」第1部の初めの4巻は、とりわけフランシスコ・ザビエルの生涯に関わる。「アジア」の第3巻において、すでに日本のことが初めて詳しく取り扱われているのは当然で、それは1549年から1552年までザビエル自身、日本で活動した時期にあたる。それに続く諸巻においては、特にオルムズ(第5巻)、殊にモルッカ(第6巻)のことが見える。第8巻でバルトリは再び日本での布教のことに戻り、1570年に至る。」
(エンゲルベルト・ヨリッセン「解題 ダニエッロ・バルトリ著『イエズス会史』」 松田毅一監訳『16・7世紀イエズス会日本報告集 第II記第1巻』所収より)

タイトルページ、ローマ版に比べてジェノヴァ版はより希少。
テキスト冒頭、本文はダブルコラム構成。ページの右端に破れがあるが、極薄の和紙にて修復されている。
Angeroとあるのが、ザビエルに日本のことを伝えたアンジロウのこと。
イエズス会脱退者であるピントの日本における活動についても記してある。
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