書籍目録

「(伊澤修二の)日本の小学唱歌」「日本の童謡」『東洋言語研究所論集』第3年次第1部所収

東洋言語研究所 / ランゲ / (伊澤修二)

「(伊澤修二の)日本の小学唱歌」「日本の童謡」『東洋言語研究所論集』第3年次第1部所収

1900年 ベルリン・シュトゥットガルト刊

Seminars für Orientalische Sprachen / Lange, Rudolf / (Izawa, Shuji).

Lieder aus der japanischen Volksschule / Japanische Kinderlieder. IN Mittheilungen des Seminars für Orientalische Sprachen an der Königlichen Friedrich Wilhelms-Universität zu Berlin. Jahrgang III, Erste Abteilung.

Berlin und Stuttgart, Commissionsverlag von W. Seemann, 1900. <AB201927>

Sold

8vo (16.5 cm x 25.0 cm), Half Title., Title., 1 leaf(Inhalt), pp.I-III, pp.1-238, Original paper wrappers.
未開封(Unopend)の状態。

Information

ドイツにおける日本学の創始者の一人ランゲによる伊澤修二『日本の小学唱歌』の紹介と解釈論文

「ルドルフ・ランゲは1850年にベルリンに生まれた日本学者である。古典文献学とドイツ語学をおさめ、ギムナジウムの教師を務めていた。1874〜1881(明治7-14)年まで、お雇い外国人教師として東京帝国大学に赴任し、ドイツ語、ラテン語、地理学を教えた。ランゲは帰国後、1887年にベルリンの東洋語学校でドイツでは初めての日本語の授業を開始しており、ドイツにおける日本学の創始者の一人とされる。彼は東洋語学校で1920年まで教授職にあり、日本語学習のための教科書を残した。ランゲと同時期に、ドイツに留学していた哲学者井上哲次郎(1855-1944)や、児童文学者巌谷小波(1870-1933)が東洋語学校で日本語を教えていた(後略)。」

「ランゲは東洋語学校論文集に日本に関する論文を複数残しているが、その中に、伊澤修二の『小学唱歌』第1巻を翻訳した「日本の小学唱歌」がある。ランゲはなぜ論文の題材として伊澤の『小学唱歌』第1巻を選んだのだろうか。
 19世紀ドイツではすでに多くの民謡研究が行われており、中でもルートヴィッヒ・エルク(Ludwig Erk 1807-1883)はドイツ民謡研究しにおける最大の収集家であった。(中略)
 この他にもドイツでは旋律と歌詞が掲載された民謡集や唱歌集が多く発刊されていた。このような背景のもとにランゲは日本文化研究の一環として日本の歌に関心を持ったと考えられる。伊澤の『小学唱歌』第1巻を選んだのは、日本の旋律が五線譜に書きあらわされ、口語の歌詞がつけられているということが理由の一つだったと思われる。(中略)
(前略)この唱歌集を翻訳した最も大きな要因は、著者が伊澤修二であったこと、そして歌詞が「教育勅語」に即していたことであったと考えられる。
 ランゲは「日本の小学唱歌」の序文で、伊澤は音楽通、教育通として知られている東京の高等師範学校の初代好調であり、彼は小学唱歌を小学校生徒に身体的、精神的発達を与えるものと考えていた、と紹介している。(後略)
 ランゲは伊澤の『小学唱歌』第1巻で口授される教育勅語の教えを、賛美歌を通して教えられる聖書の教えと関連させて考えていると思われる。(中略)ランゲは序文に教育勅語の翻訳を載せ、さらに論文の最後に教育勅語全文を日本語のまま掲載している。ランゲは日本の国民道徳である教育勅語をわかりやすい口語で日本の旋律にのせて口授する文献として伊澤の『小学唱歌』第1巻に注目したと考えられる。」

「ランゲの「日本の小学唱歌」では旋律に日本語の歌詞がローマ字でふられ、次にローマ字による日本語の歌詞とドイツ語に翻訳した歌詞が示され、最後に伊澤が書いた教授上の「注意」がドイツ語に翻訳されて載せられている。さらにランゲの注釈が加えられることもある。」

*(釘宮貴子「20世紀初頭のドイツにおける日本の学校唱歌– R. ランゲとG. カペレンによる伊澤修二編『小学唱歌』第1巻の翻訳・編曲に焦点を当てて–」 『音楽教育学』第47巻第2号、日本音楽教育学会 、2018年所収より)

*上記引用文掲載時に、引用論文の表記が漏れておりましたことをご指摘いただきました。引用元の記載が漏れておりましたことにお詫び申し上げますと共に、ご指摘いただきましたことに改めて御礼申し上げます。今後同様のことがありませんよう重ねて留意いたします(2020年5月4日追記)