書籍目録

『一外交官の見た明治維新』

アーネスト・サトウ

『一外交官の見た明治維新』

初版 1921年 ロンドン刊

Satow, Sir Ernest.

A DIPLOMAT IN JAPAN. THE INNER HISTORY OF THE CRITICAL YEARS IN THE EVOLUSTION JAPAN…

London, Seely, Service & Co. Limited, 1921. <AB2018202>

Donated

First edition.

8vo (14.0 x 21.5 cm), pp.[1-3(Half Title.), 4], Front., [5(Title.), 6], 7-427, 4 leaves (advertisements), Plates: [6], Original cloth boards.
アメリカの大学図書館旧蔵書のため、見返しに蔵書票と除籍印、貸出票ポケットの貼付、背に配架番号の記入あり。

Information

「アーネスト・サトウ著『日本における一外交官』”A Diplomat in Japan”は、1921年(大正10年)にロンドンのシーレー・サービス会社から出版された。
 
サトウは、原著者の序文にもあるように、明治維新の前後を通じ25年も日本に滞在した人で、青年外交官として日本に赴任してから、風雲の急な幕末の政情の中を縦横に活躍、2度まで実戦に参加して砲煙弾雨の中をくぐり、また攘夷の白刃にねらわれて危うく命をまぬがれたりした。外国人でありながら、明治維新の血なまぐさい事件や多くの困難な紛争を、身をもって体験してきたのである。
 それに、幕末から明治維新にかけての日本の歴史は、周知のように対外関係から始まり、たえず対外関係をもとにして発展してきたのであるから、サトウのような立場にあった人でなければわからぬこともあるし、また見聞できなかった事もずいぶん多いと思う。
 当時、西郷、木戸、伊藤のような人々をはじめとして、討幕の志士や反幕府的な大名たち、また他方閣老をはじめとする幕府の高官連が、慇懃をつくして、サトウの歓心を買うことにつとめたことは、第二次大戦直後の日本の正常にも一脈通ずるものがあり、その動向が明治維新の歴史に大きく影響したことも否定できない。
 その点で、この著書は日本の近代史、こと明治維新史の研究家にとって貴重な資料であるが、そればかりではない。当時の日本の風物や、人情、風俗、習慣などが、相次ぐ事件のエピソードにからんで生き生きと描写してあるし、また機知にとんだ奇行や、紅毛膝栗毛的なユーモラスな道中記なども織りこまれており、斬首刑、腹切などの場面、各藩の武士気質、維新志士の談論、風格、サトウをめぐる両派要人の暗躍なども、作りものでないだけに興味が深い。

 このサトウの著書『日本における一外交官』は、終戦前は(25年もの長い間)、わが国では禁書として扱われてきた。(中略)
 この著書が戦前にこのような取り扱いをうけたのは、”権威”をはばからぬ外国人の自由な観察によって明治維新の機微な消息が国民の目にさらされるのを、「維新の鴻業を賛仰」することによって国民精神の基盤としようとした当時の為政者たちが好まなかったからであろう。

 現著書はおおよそ菊判大、427頁、1冊からなり、写真7枚を挿入しているが、訳書は上、下2冊とし、写真は割愛した。なお、原著の鹿児島と下関の砲撃の記事には、陣形図が添えてあるが、大型の原著においてさえ鮮明を欠いているので、使用不可能と考えてこれを除いた。(後略)」

(アーネスト・サトウ著 / 坂田精一訳『一外交官の見た明治維新』岩波書店、1960年、「訳者の言葉」より)