書籍目録

「武蔵野」(雑誌)第24号

矢部八重吉編

「武蔵野」(雑誌)第24号

1912年10月 東京刊

矢部八重吉編

THE MUSASHINO

東京市, The Musashino Publishing Office, The IMPERIAL HOTEL, Tokyo.(武蔵野発行所), OCTOBER 1912(大正元年九月廿七日印刷 十月壹日発行). <AB2018190>

Sold

15.0 cm x 22.2 cm, pp.1-60, Original pictorial paper wrappers.

Information

帝国ホテル内で発行されていた外客向けの英文月刊雑誌

 本書は、東京の帝国ホテル内で発行されていた英文月刊雑誌で、日本を訪れた外客に向けて発行されていたと思われるものです。編者の矢部八重吉は、フロイトにも面会している日本における最初期の精神分析導入の立役者として知られる心理学者ですが、一方でジャパン・ツーリスト・ビューロー発行の雑誌「ツーリスト」の常連寄稿者でもあって、外客誘致活動にも積極的に関与していたことが伺えます。この雑誌は、1911年に発刊されたようで1913年8月の第34号をもって、後継雑誌「日本(JAPAN)」に号数をそのまま引き継いで移行し、1916年11月頃まで刊行されていたようです。英文で発行された訪日外客向け雑誌の先駆けとも言えるもので、ビューロー発足前後の外客誘致活動を知る上で大変貴重なものです。

 1912年10月に発行された第24号となる本書は、明治天皇崩御の特集号となっています。明治天皇崩御とそれに伴う様々な儀式の模様や、乃木中将の殉死について詳細に論じているほか、各国の政府関係者が弔問に訪れる様子などを写真を交えて紹介しています。一方、通常記事と思われる内容では、10月の日本の見どころを紹介していて、秋が深まり始めた日本の農村の風景を写真とともに解説しています。こうした書き下ろし記事に加えて、ラフカディオハーンの小論を引用掲載するなど編集内容にかなりのこだわりが感じられます。編者の矢部自身による連載記事もあって、ほぼ毎号のペースで連載を続けていたことが伺えます。また、冒頭と巻末の広告ページも興味深いもので、南貞吉の漫遊用達所南商会や高島屋といった、今で言うところのインバウンド需要をターゲットにしていた各種商店の広告を見ることができます。