書籍目録

『東洋の理想』

岡倉覚三(天心)

『東洋の理想』

初版 1903年 ロンドン刊

Okakura, Kakasu.

THE IDEALS OF THE EAST WITH SPECIAL REFERENCE TO THE ART OF JAPAN.

London, John Murray, 1903. <AB2018179>

Sold

First edition.

8vo (12.5 cm x 19.2 cm), Blank leaf, pp.[i(Half Title.)-iii( Title.)-vii], viii-xxii, [1], 2-244, [1]-4(Advertisement), Original decorative cloth.
図書館旧蔵書につき背に箔押し、蔵書票、貸出記録票の貼り付け、空押しなどあり。製本にも傷みあり。

Information

「アジアは一つである(Asia is one.)」という冒頭フレーズで知られる岡倉天心の英文三部作の一つ

「『東洋の理想』("The Ideals of the East with Special Reference to the Art of Japan"}は、1903(明治36)年にロンドンで刊行された。この書は、それと相前後して執筆された当時未公開の論稿『東洋の目覚め』(#The Awakening of the East")(1902年稿)および『日本の目覚め』("The Awakening of Japan")(1904年刊)とともに、岡倉天心の英文三部作と呼ばれてきた。」

「(前略)天心は、伝統主義者であると同時にまた進歩主義者であり、国粋主義者であると同時に世界主義者でもあった。そして個性を重視し、同時にまた普遍を理解した。天心のこの姿勢は、10年後の『東洋の理想』においても、そのまま継承されていると考えてよかろう。この書物の冒頭に掲げられた有名な言葉「アジアは一つである」は、この書物を貫く主要命題を示すものとして-さらに天心の没後には、天心の思想それ自体の核心をなす主要命題とみなされるほどにー重要な意味を持っていた。しかしアジアがどのように「一つ」であり、なぜ「一つ」なのかは、必ずしも単純な問題ではない。
 ただここで注目してよいと思うことは、天心が「一つ」と考えたアジアは、けっしてアジアを形づくる諸民族や諸地域の文化的な個性やそれぞれの歴史的な多様性を排除するものではなかったという点である。したがってアジアの一体性とは、そうした個別性や多様性を内に含んだままの動的な統一であり、またいわば生成的な融合として捉えられているということである。(中略)
 そして天心によれば、こうしたアジアの多様な、民族的・地域的・時代的な文化が、その個別多様な姿を失うことなく、日本において受容され、あたかも「アジア文明の博物館」のごとき態をなしつつ融合され、「一つ」の日本文化を形成しその歴史を形づくっているということこそ、まさに「アジアは一つである」ことの、生きた裏づけをわれわれに示すものと考えたのである。天心が、「古いものを失うことなしに新しいものを歓迎する不二元論(アドヴァイテイズム)」こそ日本民族の「ふしぎな天性」と賛嘆して止まないのも、そのためであった。そうした意味で、天心にとっては、日本こそアジアの真髄をなすものであり、アジア復興の課題を果たす役割を担うものでなければならない。しかし、天心がここで志向しているものは、明らかに、後年しばしば理解され主張されたような、アジアの政治的統一ではない。むしろ文明史的な、あるいは芸術的な、アジアの精神の覚醒とその意義づけにあった、と見るべきであろう。」
(岡倉天心 / 松本三之介訳解説『東洋の理想』講談社学術文庫、1986年、解説より)

  • 図書館旧蔵書のため蔵書票などの貼り付けや痛みが見られる。