書籍目録

『いとしのクードルズ』

(米国人)ボールス(夫妻)(長谷川武次郎)

『いとしのクードルズ』

初版 1893年 東京 / 横浜 / ロンドン刊

Bowles(, Charles / Susan).

The Story of Coodles: The Only coodles.

London / Yokohama / Tokyo, Simpkin Marshall Hamilton Kent & Co., LTD / Kelly & Walsh / T. Hasegawa, 明治廿六年十二月十二日印刷 / 十八日発行. <AB201881>

¥129,600

First edition.

16.0 cm x 19.0 cm, Front., Title, pp.[1], 2-48, Crepe paper book, bound in Japanese style, silk tied.
表紙端部分、タイトルページ余白に欠落部分あるが補修済み。一部水染みの跡あり。

Information

非常に珍しいとされる希少タイトルの大判ちりめん本

「ボウルズ夫妻はアメリカの宣教師で、1890年に来日し、その折、日光に旅したようだ。木々の紅葉の美しさに故郷のヴァーモント州の秋を思い出したのだろう。扉に日光の秋景色と赤い橋の絵があるのはその緒言のためで、そこで彼らは故郷で飼っていた犬を回想したとつながる。
 表紙や、中表紙には、毛足の長い愛らしい犬の絵がある。中表紙にはTOKYO, T. HASEGAWAの他LONDON, SIMKINMARSHALLHAMILTONKENT Co.とYOKOHAMA, KELLY & WALSH Ld.の名も記されている。
 中の絵も日光の絵と同様日本風で、もみじ、流れ、鶺鴒、鴎、雀、蝶、菖蒲、蓮、秋海棠、椿、菊、水仙などでページを飾っているが、中に一ヶ所興味深い絵がある。ページを横に使って、ニューイングランドの丘陵、林、家々を描いたものである。写真でも見て描いたのだろうか、見たこともないアメリカの村をそれらしく描くには苦心もあったろう。風変わりな1ページになっている。
 この話がくっきりとしたイメージ結び難いのは、犬以外の人間の名前は意図的になのか書いていないからだろう。唯一、固有名詞ではないが、村の人々にOld Generalと呼ばれている人物が登場している。
 Old Generalは愛していた犬 ブルーノ(Buruno)を失って悲しんで、替わりに新しく犬を買い、ファイド(Fide)と名づけ可愛がっている。ファイドは従順な犬だが、近所の家の猫を殺して問題になり、止むなく新しい飼い主に貰われて遠くへ行くことになる。
 ファイドは新しい土地で、牛の番をしたり、マーモットを追いかけたりしてのびのび暮らす。新しい主人はファイドの名をクードルズ(Coodles)と変える。(ちなみにアメリカ人の知人に聞くとファイドは犬の名としてポピュラーだが、クードルズというのは聞いたことがないということだ)。
 新しい主人にすっかりなついていたが、ある時、Generalが犬を返してほしいと言って、引き取って行く。主人は寂しい日々を送っていたが、驚いたことに、クードルズは20マイルも離れたGeneralの家から三日三晩走り通して帰ってくる。主人はこの犬こそ私たちのものだ(He was all our own.)と抱きしめる。犬との幸せな日々が戻ってくる。
 主人が病気になった時、クードルズはベッドの傍につきっきりで離れない。主人がなくなり埋葬されると、その土の上に座って動こうともしない。主人の家族が引っ越すことになり、クードルズをどうしようかと話していた。気がつくとクードルズは死んでいた。主人と一緒にエルムの木下に葬ってやる。
 犬が好きな人には、きっとその仕草などが可愛く思われるのだろうが、念入りな長々しい文章である。忠犬八公というのではなく、幸せな犬の生涯という印象である。
 1895年には、King Coodeles The Faithfulという題で再版されたらしいので、愛読者がいたのだろう。再版のものは未見である。」

(石澤小枝子『ちりめん本のすべて 明治の欧文挿絵本』2004年、三弥井書店、138頁〜140頁より)