書籍目録

『日本の殉教者:1862年6月8日に列聖される26人の殉教者についての歴史』

ヴィルフランシュ (日本二十六聖人)

『日本の殉教者:1862年6月8日に列聖される26人の殉教者についての歴史』

第6版 1862年 パリ刊

Villefranche, J(Acques). M(Elchior).

LES MARTYRS DU JAPON. Histoire des 26 Martyrs et des Fêtes de leur Canonisation le 8 Juin 1862,...

Paris, Victor Palmé, 1862. <AB201875>

Reserved

6th edition.

8vo (9.0 cm x 13.8 cm), pp.[1(Half title)-3(Title)-5], 6-142, 1 leaf, Contemporary three quarter cloth on marble boards.
当時のものと思われる装丁には痛みが多く見られる。本文はスポット状のヤケが見られるが比較的良好な状態。

Information

1862年に列聖された「二十六聖人殉教事件」を中心とした日本キリスト教史

本書は、150頁弱の小著ながら、日本へのカソリック伝道の歴史と数々の殉教事件についてコンパクトにまとめた良書で、いわゆる「二十六聖人」が列聖された1862年にドイツのマインツで刊行されたものです。著者のヴィルフランシュ(Jacques-Melchior Villefranche, 1829 - 1904)は、フランスの編集者、著作家で主にローマカソリック教会を擁護する立場から多くの著作を発表しています。

 本文は、全10章の構成で、ザビエル来航前のポルトガル人の日本への漂着とキリスト教との出会いの萌芽(第1章)から記述を始め、ザビエルの来航とキリスト教の広がり(第2章)、ザビエルの遺志を継いで行われた初期の伝道活動(第3章)、秀吉(Taico-Sama)によるキリスト教弾圧の始まり(第4章)、二十六聖人の殉教(第5章)と時系列に沿って日本におけるキリスト教史が説明されています。続いて、家康(Cubo-Sama)によるキリスト教の弾圧(第6章)が説明され、第7章では、オランダの来航とともに、キリスト教の弾圧がより厳しくなっていく様子と増え続ける犠牲者について述べられていることに続いて、江戸幕府によって苛烈さを極めていくキリスト教弾圧(第8章)、島原の乱の発生と日本の鎖国体制の完成(第9章)までが、主に本文の主要な内容となっています。これらの記述には宣教師の報告書関係だけではなく、オランダ人からの報告も参照しているとあることから、著者ができるだけ複数の情報源から本書の記述を組み立てようとしていたことが伺えます。最後の第10章では、再びカソリック伝道の可能性が開かれつつある日本の将来について述べており、日本において新たな伝道活動と信徒の広がりが期待できることを述べて本書を結んでいます。本文の後の巻末には列聖される26人の名簿と祈祷文が掲載されています。

 著者のヴィルフランシュは、政教分離をめぐる議論が激しくなりつつあったフランスにおいて、カソリック擁護の立場から積極的に論陣を張った著作家として知られており、本書もそうした文脈もあって著されたものと思われますが、一方でできるだけ正確に日本におけるキリスト教史をコンパクトに描こうとしていることも伺えます。本書は初版刊行の1862年中に、少なくとも「第6版」まで刊行されている点に鑑みると広く読まれたものと思われます。また、同年中にドイツ語にも翻訳されていますが、このドイツ語版は原則的に忠実な訳としながらも、女性殉教者の鑑として、ヨーロッパ、特にドイツ語圏で17世紀から広くよく知られていた、1613年に有馬で殉教したレオ林田助右衛門の娘マグダレナの意義を特に強調した内容にするなど、相違点も見られるようでこれらも興味深い点です。日仏双方の複雑な文脈下において描かれた日本のキリスト教史として、またドイツ語訳本との比較という点でも、本書は二十六聖人殉教事件そのものの歴史研究だけでなく、ヨーロッパにおける受容の様態を研究する上で大変興味深い資料と言えるものでしょう。

序文冒頭ページ、タイトルページ同様に第6版とある。
本文冒頭ページ。
巻末には列聖される26人の名簿が掲載されている。
上掲続き。
当時のものと思われる装丁には痛みが多く見られるが、綴じの状態は良好。文庫本サイズの小さな本。