書籍目録

『マレーの日本旅行者ハンドブック』

チェンバレン / メイソン

『マレーの日本旅行者ハンドブック』

第3版 1891年 ロンドン刊

Chamberlain, Basil Hall / Mason, W(illiam). B(enjamin).

A HANDBOOK FOR TRAVELLERS IN JAPAN.

London, John Murray. (Kelly & Walsh), 1891. <AB201860>

Sold

Third edition.

12.0 cm x 18.3 cm, pp. [i(Half Title), ii], Folded map, [iii(Title), iv], 2 leaves(Advertisements), [v], vi-ix, [1], 2-459, [1], 2-27, Folded maps: [15], map: [1], Original red cloth.
装丁の背付近を中心に退色。広告ページ一部の上部が未開封の箇所あり、広告25,26ページの一部に破れ。

Information

編者をサトウからチェンバレンに変えたマレーの日本ガイドブック第3版

「ロンドンのマレー社の旅行ハンドブックは1836年から1913年まで70年以上続いた赤い表紙のシリーズで、世界各地の旅行ガイドブックとして英語圏を席巻し、マレーといえばベデカーとともに広く旅行案内書を意味した。日本旅行ハンドブックもこのシリーズの一部であった。トマス・クックが団体旅行を組織しはじめるのが1840年代であったが、多くの旅行者は自分で汽車や汽船やホテルを手配する必要があり、ガイドブックを必要としていたのである。」

(横浜開港資料館編『世界漫遊家たちのニッポン』横浜開港資料館、1996年より)

 本書は、マレーの旅行ハンドブックの日本編の第3版として出版されたものです。初版は、サトウ(Ernest Mason Satow, 1843 - 1929)とホーズ(Albert Hawes)によって、マレーのハンドブックを範にとって『中央・北日本旅行ハンドブック(A Handbook for Traveller's in Central and Northern Japan) 』と題し、1875年にKelly and Walshから出版され、増補改訂版となる第2版が1881年にマレー社から出版されました。

 本書は、サトウの離日に伴って、新たな編者となったチェンバレン(Basil Hall Chamberlain, 1850 - 1935)とメイソン(Willem Benjamin Mason, 1854 - 1923)によって刊行された第3版で、タイトルが改められるとともに、内容も大幅に刷新されています。この第3版は、横浜で印刷されており、ロンドンで出版されたものと国内で出版されたものという2種類があると言われており、恐らくそれらに加えてニューヨークで出版されたものもあるのではないかと思われます。本書は、ロンドンで出版されたもので、タイトルページと序文(Preface)との間に、スタンフォード社(世界各地の地図出版で著名)が当時発行していた旅行者向けの地図類のカタログが綴じ込まれています。


「1890年9月、サトウはジョン・マレーに書簡を送り、日本研究の第一人者であるチェンバレンがメイソンと共同でガイドブックを出版しようとしているので、それをマレーのシリーズに入れてもらいたいこと、またチェンバレンが昔のハンドブックの内容を使用することを全面的に許可することを告げている。マレーの側では、それより1ヶ月前にチェンベレンに出版の条件を示し、印刷は日本で行い、コミッション・ベースで販売するなら、マレーのシリーズに入れても良いと提案している。
 こうして第3版は最初の二人の著者の手を離れ、チェンバレンとメイソンが引き継ぐことになった。第2版から7年を経た1891年、大幅に改訂された第3版がようやく出版されることになったのである。印刷は横浜で行なわれ、イギリス用は印刷シートのままロンドンに送られて製本され、横浜のケリー&ウォルシュ社の出版分は横浜で製本された。
 チェンバレンとメイソンのハンドブックは、サトウのものほど学術的ではなかったが、より実用的で、好調な売れ行きを示した。チェンバレンの手紙によると、第3版は2,750部印刷されたが、1893年にすでに330部を残すのみとなり、第4版は5,000部印刷することを提案している。」

(前掲書より)

冒頭に折り込みの日本地図がある。
タイトルページ
世界各地の地図出版で著名だったロンドンのスタンフォード社が同時発行していた旅行者向け地図の目録が綴じ込まれている。
目次①
目次②
地図、図版目次と本文冒頭文。
伊勢神宮は折り込みの和紙に印刷した図を収録。
多くの折り込み地図が収録されている。
瀬戸内図は特に大きい。
巻末は広告欄となっていて、当時の旅行関連企業の動向を知ることができる。上掲は通訳サービスで有名な開誘社の広告。
神戸の居留地を代表する外国人向けホテル、オリエンタルホテルの広告。
第2版に見られたような、裏の見返し部分をスリップケースとして地図を収録する作りにはなっていない。
装丁の一部に退色があるものの全体として良好な状態。