書籍目録

『ポルトガル、スペイン、イングランド、 その他の国々による航海、旅行記集成』

アア

『ポルトガル、スペイン、イングランド、 その他の国々による航海、旅行記集成』

オランダ語特別大型紙「フォリオ」版 1706, 7年(1727年) ハーグ、ライデン刊

Van der Aa, Peter.

De Aanmerkenswaardigste en Alomberoemde ZEE - EN LANDEREIZEN DER PORTUEEZEN, SPANJAARDEN, ENGELSEN EN ALLERHANDE NATIËN: ZOO VAN FRANSEN, ITALIAANEN, DEENEN, HOOGH-EN NEDERDUITSEN Als van beetle Andrew Volkeren. Voornaamenlyk ondernomen tot Ondekking van

Hague / Leiden, DE WED, BOUCQUET EN ZOONEN / JAN VAN DER DEYSTER, DE JANSSOONS VAN DER Aa, MDCXXVII.(1727). <AB2018Aa>

Price upon request

Large 1mo, Large paper special edition. 8 vols.(complete), Contemporary full calf.

Information

セーリス、アダムスらの航海記オランダ語訳の知られざる大型紙「フォリオ」版

 本書は、日本に最初に漂着したイギリス人として知られるアダムス(William Adams, c1564 - 1620)の航海記や、公式なイギリス使節として初めて日本に来航したセーリス(John Saris, c1579 - 1643)をはじめとした17世紀までの世界の主要な航海、旅行記を網羅的に収録し、豊富な図版や地図とともに全8巻で刊行された壮大な企画です。

 この企画は3種類の異なる大きさの用紙で出版されました。すなわち、いわゆるフォリオ版と言われる大型の紙(実際には1moとされる)、そして八折版とされる小型の紙、そしてフォリオ版よりもさらに大きくかつ上質の紙を用いた特別版(Large paper special edition、すなわち本書)の3種類です。また、個別の航海記、旅行記を分売する販売形態と、本書のようにそれらを国ごとに纏め、フォリオ版で各部2巻、合計全8巻、あるいは八折版で全28巻(補巻として29、30巻もあり)として販売する形態という異なる2種類の販売形態が存在していたと言われます。そのため、個別の航海記、旅行記ごとにタイトルページが設けられており、ページ付も独立しています。国毎に纏めたフォリオ版は1706年の刊行年表記を持つものと、1726年のそれをもつものとが確認されていますが、内容は全く同じで、前者の売れ残りをそのまま用いて後者が作られたものと推察されます。日本でもよく知られるセーリスやアダムスの航海記の多くは、個別に販売された八折の小型本としてしか知られていませんが、元々はこうした壮大な企画の一部であったことはほとんど知られていないと言えるでしょう。

 全8巻の構成内容は次の通りとなります。

…Scheepstochten der Portugeezen an Oost Indien.
Vol.1: including 26 voyages, 15 title pages; Folding plates and maps[8]; Engravings in text [52].
Vol. 2: including 31 voyages, 6 title pages; Folding plates and maps [20]; Engravings in text [26].

…Voyagieen der SPANJAARDEN naar West-Indien.
Vol. 3: including 13 voyages; Folding maps and plates[7]; Engravings in text[59].
Vol. 4: including 9 voyages; Folding maps and plates[15]; Engravings in text[40].

…Voyagieen der Engelsen.
Vol. 5; including 29 voyages; Folding maps and plates[24]; Engravings in text[81].
Vol. 6: including 24 voyages; Folding maps and plates[11]; Engravings in text[37].

…Voyagieen..allerhande vreemde Natieen.
Vol. 7: including 15 voyages; Folding maps and plates[13]; Engravings in text[141]
Vol. 8: including 16 voyages; Folding maps and plates[14]; Engravings in text[71].

 最初の2冊はポルトガルによる航海記を編纂したもので、基本的にはバロー(Joa de Barros, 1496 - 1570)の作品をオランダ語に翻訳したものです。次の2冊は、スペイン編、そしてその次のイングランド編は、パーチャス(Samuel Purchas,1577 - 1626)の旅行記をオランダ語に翻訳したものです。むろん、セーリスやアダムスの航海記はここに含まれています。最後の2冊は、フランス、イタリア、デンマーク、ドイツなどの各国による航海記がまとめられています。これらを編纂するにあたってアアが用いた資料は上述のようにはっきりしているものもあれば、アアが独自に入手していた手稿や未刊行資料である場合もあり、それ自体が研究テーマとして興味深いものです。本書のタイトルにはゴットフリード(Johan LudwiggGottfried, 1584 - 1633)の名が明記されており、あたかも本書がリソースとしたのが当時好評を博していた彼の著作『新世界史(Newe Welt und Americanische Hisstorien, 1655)』であるかのように思いますが、実際には本書中でゴットフリードは全く採用されておらず、これは単に営業上の理由から当時のベストセラーにあやかって彼の名を記していたものと思われます。

 アアが編纂した航海記、旅行記は個別に分売されてこともあって、その全体像がほとんど知られてこなかっただけでなく、そもそも本書のような壮大な企画であったこと自体が忘れ去られてしまっています。なかでもフォリオ版はわずか380部ほどしか印刷されなかったとされており、さらに希少な本書のような特別版は、さらにごくわずかしか印刷されなかったようです。そのため、現存するものはほとんどなく、本書のように全巻揃いで見つかることは滅多にありません。ヨーロッパ諸国による大航海時代以降の世界進出とアジア研究の広がりをオランダ語で網羅的にまとめあげようとした本書は、著名なセーリスやアダムスの航海記のほとんど知られていないフォリオ版を含んでいるだけでなく、17世紀までのヨーロッパの世界認識を垣間見ることのできるという点でも大変貴重な研究資料と言えるでしょう。

全8巻の総合タイトルページ。これ自体が極めて貴重と言われている。
各巻には挿絵入りタイトルページがある。
最初の2巻はポルトガルによるアジア進出を中心とした航海記をまとめる。
各航海記に独立したタイトルページが設けられている。ヴァスコ・ダ・ガマなど錚々たる面々の航海記が並ぶ。
ポルトガル編に収録されている地図の一例。日本を含む地図も登場する。
ポルトガル編に収録されている地図の一例。
ポルトガル編に収録されている地図の一例。
次の2巻はスペインによる航海記集。
コロンブスなど著名なスペイン人による航海記を多数収録している。
次の2巻はイギリスによる航海記。ウィリアム・アダムスやジョン・セーリスなど日本と最も関係が深い航海記もここに登場する。
「ウィリアム・アダムスの二つの手紙」に登場する日本地図。この部分だけの八つ折り版は国内でも所蔵されているが、元々はこの特別フォリオ版が最初であることはほとんど知られていないと言って良い
ジョン・セーリスの航海記に登場する日本を含むアジア地図(上)。
「ウィリアム・アダムズの二つの手紙」タイトルページ。八折版とは全く異なる。
ジョン・セーリスの日本航海記のタイトルページ。本書は八折版でも所蔵が少ないが、フォリオ版での所蔵機関は世界的に見ても少ないと思われる。
ジョン・セーリスの日本航海記の一部。
最後の2巻は、フランス、イタリアなどオランダを除くそれ以外のヨーロッパ諸国による航海記を集めている。
フォリオ版はわずか380部しか作成されず、その中でもさらに希少な特別大型紙版の現存数は極めて少ないと思われる。装丁の状態も非常に良い。