書籍目録

『尊きマルセル・マストリリの驚くべき生涯: ザビエルに導かれた日本での殉教者 附論「フェレイラ覚書」』

パウプラード

『尊きマルセル・マストリリの驚くべき生涯: ザビエルに導かれた日本での殉教者 附論「フェレイラ覚書」』

1902年 パリ / リール刊

Pouplard, Pierre-Xavier.

LA VIE MAEVEILLEUSE DU VÉNÉRABLE MARCEL MASTRILLI, S.J. CLIENT BIEN-AIMÉ DE SAINT FRANÇOIS XAVIER ET MARTYR AU JAPON, SUIVIE D'UNE NOTICE SUR LA CHUTE, LA PÉNITENCE ET LE MARTYRE DE CHRISTOPHE FERREIRA. AVEC ILLUSTRATIONS.

Paris / Lille, Société Saint = Augustin, 1902. <AB201825>

Reserved

14.7 cm x 22.1 cm, pp. [I (Half Title)-III, IV(Front.), V(Title)-IX], X-XVI, [1-3], 4-319, Contemporary half cloth on marble boards.

Information

「フェレイラ棄教」の激震を受けて日本に渡り殉教したマストリリ伝

 本書は、日本における殉教者マストリリ(Marcello Fransisco Mastrilli, 1603-1637)の伝記として、1902年にパリとリールで刊行されたものです。マストリリは、すでに日本でキリスト教弾圧が激しくなっていた1637年、敢えて入国を決意し鹿児島に上陸後、直ちに捕らえられ長崎で殉教した宣教師です。彼の覚悟の殉教は当時のヨーロッパのイエズス会士に大きな衝撃を与えたと言われています。そのため、1640年前後には多くのマストリリの伝記作品が相次いで刊行されています。本書は、そうした多くの先行文献を参照しながら書き上げられています。

 マストリリが来日を決意する直接のきっかけの一つに、イエズス会日本管区の代理管区長であったフェレイラ(Cristóvão Ferreira, ?-1650)の棄教事件がありました。フェレイラは長く日本で宣教活動に勤しみ、『日本におけるキリスト教の迫害報告(Relatione delle persecutioni mosse contro la fede di Christo, 1635.)』などの著作もある非常に信頼されていた宣教師だっただけに、彼の棄教の報はローマのイエズス会を震撼させることになります。そのため、事件の真相確認と償いのために日本を訪れることを希望する修道士が当時急増し、マストリリはその代表として派遣されました。最初の航海は失敗しますが、二度目の航海でマニラを経て、多くの者が来日を諦める中ただ一人来日して殉教を遂げました。

本書冒頭の口絵は、マストリリの肖像と、彼が日本で捕縛され拷問を受け殉教する場面を描いたものです。マストリリは最初に水責めの拷問を受け、さらにフェレイラが棄教を強いられた苛烈な穴吊りの拷問を受けましたがそれでも彼は棄教することも、絶命することもありませんでしたので、やむなく引き上げられます。そして、斬首に処せられることになりました。
 
 テキストでは、彼がザビエルから受けた奇跡(マストリリがナポリのイエズス会学舎の聖堂工事に従事していた際に事故で瀕死の重傷に陥り、その時彼の寝台横にあったザビエル像からザビエルが現れ、彼に奇跡的な回復をもたらすという奇跡をを体験してから、彼はザビエルに対する崇敬の念を一層強くし、将来のアジア布教を希望するようになりました。)、アジア伝道への決意と出発、苦難に満ちた航海、ゴアやマカオでの布教と日本についての学習、そして日本への出発と殉教が、順を追って描かれています。また、本文に続いて、マストリリが日本に向かう契機となったフェレイラについての覚書、附論としてマストリリの家系図や19世紀開国後の日本におけるカソリック布教の現状などの記事も収録されています。本書は、テキストだけでなく関連する図版を数多く収録していることもその特徴の一つで、先に述べたマストリリが瀕死の床でザビエルの奇跡を体験する場面や、彼が受けた拷問や、斬首の場面など、テキストにおいて重要な場面に関係する図版を多くの文献や絵画などからとって掲載しています。


 

マストリリの肖像と拷問、殉教の場面を描いた口絵とタイトルページ。
テキスト冒頭部分。
瀕死のマストリリの寝床に現れたザビエルによって快癒したというマストリリがアジア伝道を志すきっかけとなった奇跡を描いた場面。
日本への危険を冒しての渡航と拷問に耐えるマストリリの様子は特に詳細に記されている。
  • 穴吊りにされるマストリリ
  • 斬首されるマストリリ
「転びバテレン」フェレイラについての覚書。フェレイラ棄教の報はヨーロッパに衝撃をもたらし、マストリリは日本渡航を決意することになった。
附論ではマストリリの家系図やゴアにおけるザビエル、そして19世紀開国後の日本におけるカソリックの現状も述べられている。