書籍目録

『イエズス会士による著作と著者目録:1608年にリバデネイラによって刊行された目録の改定増補版』

アレガムベ(アレガンベ)

『イエズス会士による著作と著者目録:1608年にリバデネイラによって刊行された目録の改定増補版』

増補改訂版 1643年 アントワープ刊

Alegambe, Philippo.

BIBLIOTHECA SCRIPTORVM SOCIETATIS IESV, Post excusum ANNO M.DC.VIII Catalogum R.P. PETRI RIBADENEIRAE SOCIETATIS EIVSDEM THEOLOGI;...

Antwerpen, Ioannem Meursium, M. DC. XLIII. <AB201822>

Sold

revised & enlarged edition.

Folio in 6s. (21.0 cm x 31.0 cm), Title, 11 leaves, pp.1-586, [587], Contemporary full vellum.

Information

17世紀半ばまでのイエズス会士による著作と著者の伝記を網羅的に収録。日本関連情報も多数掲載。

 本書は、1643年にアントワープで刊行されたイエズス会士による著作(未刊行物含む)と、その著者の伝記について網羅的に収録した目録です。1608年にリバデネイラ(Pedro de Ribadeneira, 1527 - 1611)によって刊行されていた目録(Illustrium Scriptorum Religonis Societatis Iesu Catalogus. 1608)を大幅に増補改訂したもので、もともとは八つ折りの小さな判型で300ページほどの小著だったものをフォリオの大判でページ数も2倍近くの分量にしていることから、その情報量の増加具合が伺い知れます。

 イエズス会は世界各地への宣教師派遣にきわめて積極的であっただけでなく、宣教師の世界各地での活動報告、神学関連の著作、論理学、哲学、幾何学などの諸科学全般といった多方面にわたる分野の出版活動も非常に精力的に行っていました。出版されず文書の形でイエズス会本部に保管された資料も含めるとその数は膨大なものになり、本書初版が刊行された1608年の時点で既にそれらを網羅的に整理、目録化する必要が生じたため、リバデネイラがなんとか纏め上げて出版したものが先に述べたものです。しかしながら、それから35年余りの時間が経過すると、その数はますます増えており、またリバデネイラが見落としていたものも新たに加える必要も生じ、大幅な増補改訂が望まれる事態を受けて刊行されたものが本書に他なりません。

 本書の著者アレガムベ(Philippe Alegambe, 1592 -1652)はブリュッセル出身のイエズス会士で、グラーツで神学と哲学の教鞭をとり、イエズス会の要職を歴任する傍ら、本書を苦心して纏め上げました。本文の基本的な構成は、著者名順を取っていた初版を踏襲していますが、そのほとんどの記述に手を加えて情報量を大幅に増加させています。また、インデックスも、著者の出身地別、分野別など複数用意しています。特に分野別のインデックスは、当時のイエズス会において自らの出版物(草稿含む)をどのように分類していたかを理解できるもので大変興味深いものです。全部で18に分類された主題のうち、半分以上を神学関係の主題が占めていますが、歴史、哲学、数学、詩文、文法、言語学といった多くの学問分野もここでは見ることができます。また、巻末には世界各地の殉教者名簿が年代別に掲載されており、ここにはもちろん日本各地での殉教者も掲載されており、パウロ三木ら日本人の名前も多く見ることができます。

 日本関係の記事も本書は豊富に収録しており、たとえば出身地別の索引を見ますと「日本(IAPON)」の項目があり、そこにはLaurentius Iapon、すなわちロレンソ了斎(1526 - 1592)が掲載されています。彼はザビエルから直接洗礼を受けた最初期の日本人信徒としてイエズス会においても非常に重要視されていたようで、本文でも彼の伝記がかなり詳細に紹介されています。また、来日した著名な宣教師も多く収録されており、天正遣欧使節を企画したことでも知られるヴァリニャーノ(Alessandro Valignano, 1539 - 1606)や、織田信長や豊臣秀吉からの信頼が厚かったとされるフロイス(Luís Fróis, 1532 - 1597)といった人物は特に詳細に解説されています。日本に長らく滞在し活躍したものの、1633年に拷問を受けて棄教し沢野忠庵と日本名を名乗り禁教政策を手助けしたフェレイラ(Cristóvão Ferreira, 1580 - 1650)も削除されることなく掲載されており、苦渋に満ちた表現で紹介されていのも、大変興味深い記事の一つと言えるでしょう。もちろん彼らの名前(初版刊行当時はまだ来日していなかったフェレイラは除く)は初版においても見ることができましたが、その記事の分量は大幅に増補されたものとなっています。また、先に述べたように巻末に掲載された殉教者名簿では、いわゆる二十六聖人や元和の大殉教といった当時からよく知られていた殉教事件の殉教者だけでなく、宣教師による年度報告で言及された多くの殉教者も掲載されています。これらの情報も初版に比べて増補されており、関連文献の明記も含めて情報の量、質ともに改訂が加えられています。

 本書は、現代でも目録として活用できる非常に便利なものですが、それだけでなく、17世紀半ばの時点において、イエズス会自身が自らの著作群をどのように分類し、著者について認識していたのかを知ることができる貴重な資料としても活用ができると思われるものです。また、当時草稿として存在していたものの、その後失われてしまったものが掲載されている可能性もあり、同時代の文献目録として、現代の文献目録と比較しながら発見できることも数多いのではないでしょうか。

フォリオ判の大きな書物だが、状態は非常に良い。
タイトルページ。複数のイエズス会関係機関の蔵書印が見える。
本文冒頭。
天正遣欧使節の企画でも知られる巡察使ヴァリニャーノ(ALEXANDER VALIGNANVS)の記事。当然だが全てラテン語名で表記されているので、検索時は要注意。
映画『沈黙』でも有名となった沢野忠庵ことフェレイラについての記事
ザビエルとともに来日したフェルナンデスの記事は2段組で1ページ以上にわたっており、かなり詳細である。
Laurentius Iapon、すなわちロレンソ了斎の記事。
織田信長や豊臣秀吉からの信頼が厚かったとされるフロイス(LUDOVICVS FROES)の記事。
著者の出身地別索引冒頭。
ここに日本出身の人物として唯一掲載されているのがLaurentius Iapon、すなわちロレンソ了斎である。
主題別索引の分類項目一覧。大半が神学関係を締めるが、それに尽きない学問分野全体に及んでいることがわかる。
分類の続き。
世界各地の殉教者名簿の標題紙。
年代順に掲載されており、日本での殉教者も多数掲載されている。上記では、パウロ三木(PAVLVS MICHI)などの名前を見ることができる。
1622年の元和の大殉教での殉教者も多数掲載されている。
小口は赤く着色されている。