書籍目録

『ホッティンゲンから江戸へ』

ブリュムナー(文) / アネン(絵) / マイナー(元写真)

『ホッティンゲンから江戸へ』

1899年 チューリッヒ刊

Blümner, H. (text) / Annen, M. (illustration) / Meiner, J. (photogiraph)

VON HOTTINGEN BIS JEDDO ZUR ERINNERUNG AN DIE ORIENTFAHRT DES LESEZIRKELS HOTTINGEN.

Zürich, Lesezirkels Hottingen, 1899. <AB201821>

Reserved

oblong (22.5 cm x 32.0 cm), pp. [1(Title)-3], 4-62, 1 leaf, Original decorative card boards in original slip case.

Information

オリエンタリズムとジャポニズムに彩られた世界旅行

 本書は、19世紀も終わろうとする1899年にスイスのホッティンゲンから東京までを旅した旅行者による記念旅行記です。19世紀後半から「世界旅行」熱は急激にその熱を増していきますが、その中で大量の旅行記や気候文学の出版物が刊行されました。本書もそうした出版物の一種で、各地で撮影された写真を元にしたリトグラフが多数掲載されており、いわば絵本仕立てで著者がたどった旅行を追体験できるようになっています。

 著者や写真家、写真を元にイラストを作成した人物についての詳しいことは不明ですが、ホッティンゲンの読書クラブを兼ねた出版社の企画で計画された世界旅行を元に本書は作成されたようです。その足取りは、汽船で世界をめぐる一般的なルートとはやや異なっており、陸路を多用しています。本書は、彼らの旅路に沿って構成されていて、チューリッヒからの出発(鉄道)、(イタリア)ブリンディジの港、(エジプト)ポートサイドに向かう汽船"Quadrifolium"号船上にて、ポートサイドにて、コンスタンティノープル(イスタンブール)にて、バグダードに向かうキャラバンルートにて、ハールーン・アッ=ラシード宮にて、バグダードから(イラン)シーラーズへ、ベナレス(ヴァーラーナシー)にて、という順で、旅行の最終目的地としてJeddo、すなわち東京が描かれています。東京滞在は最も彼らが楽しみにしていたことの一つだったようで、中国風の衣装を纏っての記念撮影や、浅草の祭りに参加したり、お茶を飲んだり、芸者と楽しんだりと、当時の海外からの日本への旅行者の定番を一通り楽しんだようです。

 日本での記述やイラストに限らず、全編を通じてオリエンタリズムやジャポニズムに満ちた本書は、当時の「グローブ・トロッター」のごく平均的な姿を映し出しているとともに、それらがこうした美しい書物として欧米で受容されたことも示しており、当時の「世界旅行」の姿を理解する上で大変興味深い資料と言えるものです。

非常に凝った作りの装丁。
タイトルページ。
テキスト冒頭。チューリッヒから鉄路でイタリアに向かう。
訪ねた各地で統治の民族衣装をまとって記念撮影をしたようである。
東京(Jeddo)、もちろん当時はすでに江戸とは呼ばれていなかったが、異国情緒と郷愁を込めて長くこう呼び続けられていた。
浅草、黒猫をモチーフにした門のように見えるが何を指すのか店主には不明。
当時の海外からの旅行者の定番を一通りこなしている。
見返しにも凝った紙を用いている。
保存用のスリップケースが残っているため本の状態はとても良い。