書籍目録

『日本:血と火による政策』

テリェリア / イラザバル(編・訳)

『日本:血と火による政策』

1938年 メキシコシティ刊

Telleria, E. Silva / Irazabal, Carlos (eds. / translators)

EL JAPON: SU POLITICA DE SANGRE Y FUEGO.

Mexico, EDITORIAL POPULAR, 1938. <AB201815>

Sold

13.1 cm x 18.5 cm, pp. [1(Title)-3], 4-39, Original paper wrappers.
紙表紙の端部分に痛みあり。

Information

日本の中国侵略の実態を批判的にメキシコの読者にに報じる小冊子

 本書は、第二次上海事変、南京事件と中国への侵攻を深めつつあった日本の政策を極めて批判的に報じた小冊子で、1938年にメキシコシティで刊行されています。当時の日本の政治、経済状況を様々な角度から論じた小論を集めており、日本の状況をメキシコだけでなく、南米各地の読者に伝えることを目的としています。

 編者であるテリェリア(Ernesto Silva Telleria, 1907 - 1985)とイラザバル(Carlos Irazál, 1907 - 1991)は、共にヴェネズエラで長く活躍した政治家のようです。出版社である「人民編集部(EDITORIAL POPULAR)」についての詳細は不明ですが、反ファシズムの姿勢を鮮明にしていた出版社のようで、その主張に沿った出版物を精力的に刊行していたことが裏表紙のカタログから見て取れます。編者は序文で、日本の中国侵略を極めて厳しく非難しており、日本のこうした行動の背後にある政治状況、体制、経済状況、軍備状況などの実情をより正確に知ることが、メキシコのみならず南米各国全体に求められていることを述べています。ベルリン-ローマ-東京を軸とした三国による国際社会への挑戦は断じて許されるものではなく、日本製品のボイコットは明白な義務であると言います。敵と戦うには敵のことをよく知らねばならず、そのために必要な小論を編集し、スペイン語に翻訳してここに届ける、ということが述べられています。

 収録されている小論は、日本の概況を簡単に説明する「日本の特徴」(無記名)、政党などの政治団体を紹介する「日本の国家構造」(F. Gruber)、「日本の経済、金融状況」(F. Lang)、「三井と三菱」(A. Claire)、田中義一によって書かれたとされた中国侵略政策をまとめた通称「田中上奏文」を主題とする「開戦のための田中メモランダム」(V. Stern)、[中国のための連帯行動」(Kurt Funk)というものですが、いずれも原著や著者がどういうものだったのかは店主には不明です。どの小論も日本に対して極めて批判的な論調ですが、当時のメキシコで流通していた、あるいは流通させることが意図されていた情報源としてこのような出版物があったことは、大変興味深いことのように思われます。
 

タイトルページ。
政党などの政治団体を紹介する「日本の国家構造」(F. Gruber)
「日本の経済、金融状況」(F. Lang)
「三井と三菱」(A. Claire)
田中義一によって書かれたとされた中国侵略政策をまとめた通称「田中上奏文」を主題とする「開戦のための田中メモランダム」(V. Stern)
裏表紙は出版社による広告となっており、出版傾向が概ね推測できる。