書籍目録

『インドの使徒、聖フランシスコ・ザビエルの聖なる生涯について』

[スコルティア]

『インドの使徒、聖フランシスコ・ザビエルの聖なる生涯について』

(後年版) 1670年 ヴェネツィア刊

[Scortia, François].

Della Santa Vita DELL’ APOSTOLO DELL’ INDIE S. FRANCESCO XAVERIO Della Compagnia DI GIESV’: La cui Festa si celebra alli 3. di Decembre.

Venetia (Venice), Giacomo Hertz, MDC LXX.(1670). <AB2023084>

Sold

Later edition.

12mo (5.3 cm x 10.5 cm), pp.[1(Title.), 2], 3-188, Contemporary parchment
一部に破れが見られるが丁寧な補修が施されており、概ね良好な状態。[Laures: JL-1622-6 (first ed. only) / Sommervogel: Vol.7, 965]

Information

携行用に掌サイズで印刷され、長年にわたって愛読されて来た形跡の残るユニークなゼビエル伝

 本書の著者とされているスコルティア(François Scortia, 1585 - 1629)は、ジェノバ出身の神学者で、弁論術や道徳神学を専門としてフェラーラー大学の学長やボローニャ大司教を務めたことがわかっている人物で、本書以外にも数点の著作を残していることが記録されています。いずれの作品もザビエルをはじめとしてロヨラやボルジアといったイエズス会の著名人物の短い伝記作品で、特に1622年にロヨラとザビエルが列聖されたことを記念して出版した作品が多いようで、本書の初版もそうした作品の一つとして1622年にボローニャで出版されています。本書は1670年12月3日にヴェネツィアで行われたと思われるザビエルを記念した祝祭に合わせて刊行された再版です。

 本書は名刺よりも少し大きいほどの非常に小型の書物で、日常的に懐中に入れて肌身離さず携行することを目的としていることが見て取れる作品で、現に本書は何度も繰り返しページをめくったことによるものではないかと思われる欠損箇所がいくつかありますが、いずれも非常に丁寧に補修がなされており、長年に大切に読み継がれて来たことが伺えます。その内容はその表題が簡潔に示すようにザビエルの生涯をコンパクトに綴ったもので、既存のザビエル伝を参照しながら記されたものと思われ、基本的に時系列に沿ってザビエルの生涯が紹介されていて、ザビエルによる日本宣教についてもある程度の紙幅を割いて紹介されています。特にザビエルによる様々な善行やエピソードに焦点が当てられているようで、より読者の信仰心を高めることに寄与するような構成となっているように見受けられます。

 ザビエル伝はトルセリーノによる優れた最初の伝記に始まり、いくつかの名著が存在しており、またそこから派生した様々な作品が生み出されていますが、本書はその中でも日常的に携行することを目的にして非常に小さく作られ、また実際に長きにわたって読みつかがれて来た形跡が見て取れるという、書物のマテリアルとしての側面においてユニークな存在感を放つ1冊です。