書籍目録

『中国と日本への小さき旅行者』

ソンブレイユ

『中国と日本への小さき旅行者』

初版 1841年 パリ刊

Sombreuil, M.D. Prieur de

LES PETITS VOYAGEURS EN CHINE ET AU JAPON, OU TABLEAU GÉOGRAPHIQUE, INDUSTRIEL, MONUMENTAL ET HISTORIQUE DE CES BELLES CONTRÉES;...

Paris, Pierre Manumus, 1841. <AB20182>

Sold

1st edition.

8vo (11.0 cm x 17.5 cm), Book shops Advertisement, Fly title, Front, Title, pp.[1], 2-889(i.e. 189), 190-232, Folding map [1](CHINE ET JAPON), Contemporary full leather.
1ページに破れ、全体にわたって小さなスポット状の茶色いヤケあり。

Information

約20年にわたってフランス語圏で読み継がれた中国と日本についての基本情報

 本書は、中国と日本についての基本情報を平易な文体で1冊にまとめたもので、1841年にパリで刊行されたものです。1841年の初版刊行以降、タイトルを変えながらなんども再版されており、約20年にわたって中国と日本についての基本情報書として読み継がれていたようです。著者のソンブレイユについて詳しいことは分かっていませんが、本書と同様のスタイルで世界各地の情報をコンパクトにまとめた書物を出版しているようですので、旅行記、地誌に関する著述家と言えそうです。

 本書の口絵には「長崎の港(PORT DE NANGASAKI)」と題した、港に浮かぶ日本の小舟を描いた銅版画が採用されています。この挿絵は、ロシアの世界周航に同行した博物学者ラングスドルフ(Georg Heinrich von Langsdorf, 1773 - 1852)の『世界周航記 (Bemerkungen auf einer Reise um die Welt in den Jahren 1803 bis 1807. 1812)』に収録されている図版を参照したものと思われます。

 このことからもわかるように、当時入手し得た様々な先行文献を組み合わせて本書は構成されています。日本について扱われている内容は、当時ヨーロッパ(オランダ)との唯一の窓口であった長崎について、宗教の多様性とその種類、統治機構、キリスト教との関係、将軍(公方、Le Cubo)、天皇(Le Dairi)、余暇の楽しみ、結婚儀式と多岐にわたっています。

 日本の章の後には、中国と日本を描いた折り込みの地図も収録されており、シーボルトやクルーゼンシュテルンによる北東アジア海域についての最新情報も反映させた比較的正確な輪郭で日本が描かれています。また、末尾にはイギリス初の中国(清)への使節マカートニーの中国訪問期の抄訳が掲載されています。

 18世紀半ばの開国を控えた時期の日本とについての基本情報をまとめた文献として広く読まれたと思われる本書は、Cordierをはじめとした日本関係文献目録に掲載されているにも関わらず、特に初版は入手が難しいこともあってか、これまで国内の研究機関で所蔵されていないようです。

タイトルページと口絵。口絵は長崎の港の様子を描いたもの。ラングスドルフの『航海記』(1812年)に収録されている図版を参照したものと思われる。
前半部分は中国についての記述。
後半(139頁)からが日本についての記述。
折り込みの日本と中国の地図も収録されている。日本近辺の輪郭は、クルーゼンシュテルンやシーボルトによる当時最新の研究成果を反映したものとなっているようである。
末尾には、イギリス初の中国(清)への使節マカートニーの中国訪問期の抄訳が掲載されている。
刊行当時のものと思われる空押しと箔押しを用いた革装丁。
見返し部分と小口はマーブルが施されている。