書籍目録

『ローレンシア:日本のある物語』

フラートン

『ローレンシア:日本のある物語』

初版 1861年 ロンドン刊

Fullerton, Lady Georgiana.

LAURENTIA: A Tale of Japan

London, PRINTED IN AID OF THE FUND FOR ORPHAN AND DESTITUTE CATHOLIC CHILDREN. / PRINTED BY EMILY FAITHFULL AND CO., VICTORIA PRESS, MDCCLXI. (1861). <AB2017139>

Sold

First edition.

8vo, pp.[i(Title)-v], vi-viii, [1], 2-, Original decorated cloth.
見返し部分に旧蔵者による蔵書票と装丁に合わせた青いインクによる着色あり。

Information

幕末から明治の初頭にかけて欧米で読み継がれた詳細な考証に基づく16世紀日本のキリスト教を描いた小説

 本書は、16世紀日本におけるキリスト教界と殉教を題材にした小説です。作者は、イギリスの小説家フラートン(Lady Georgiana Charlotte Fullerton, 1812 - 1885)で、34歳の時にローマンカソリックに改宗しています。

 彼女は本書の序文において、この物語は、何か特定の史実に基づいて歴史を描いているものではないことを断りつつも、16世紀における日本へのキリスト教伝道と、日本のクリスチャンの信仰心からは多くのことを学びうるとしています。特定の史実に基づかないとは言いつつも、フラートンは本書を著す上で、シャルルボア(Pierre François Xavier de Charlevoix, 1682 - 1761)の『日本史(Histoire du Japon. 1736)』をはじめとして、日本におけるキリスト教伝道と迫害の歴史に関する先行文献をかなり参照にしたようで、本書の末尾に設けられた脚注では、キリシタン大名や秀吉といった人名、日本の地理情報や基本的な歴史的な事件といった事柄を説明しています。

 物語は、ある日本人が信仰に目覚めてキリシタンとなり殉教するまでを描く典型的な殉教物語ではありますが、開国したばかりの日本に対する注目が集まっていた時期ということもあってか、繰り返し再版されて1880年代まで読み継がれたほか、ドイツ語など他言語への翻訳版も出現しています。なお、国内の研究機関では、後年の再販についていくつかの所蔵が確認できますが、この1861年に刊行された初版については所蔵がないようです。

タイトルページ
目次
本文冒頭
末尾の注釈、16世紀に日本の状況や人物、地理について詳しく説明してある。
見返し部分は旧蔵者の蔵書票が貼られており、また装丁に合わせて青色に塗られている。
装丁は出版当時のオリジナルを残す貴重なもの。