書籍目録

『日本の殉教者』

デルクロワ / (日本二十六聖人殉教事件)

『日本の殉教者』

1863年 ルーアン刊

Delcroix, Victor.

LES MARTYRS DU JAPON.

Rouen, Mégard et Ce, 1863. <AB20211736>

Reserved

8vo (13.0 cm x 21.2 cm), pp.[1(Half Title.], 2], Front., pp.[3(Title.)-7], 8-191, Contemporary decorated green cloth.
製本に傷み、汚れが見られるが全体として良好な状態。1葉(pp.189-190)小さな穴があり一部テキスト欠損。小口は三法とも金箔押し。[Cordier: 213] [BNF: FRBNF30316331][NCID: BC13692197]

Information

「日本二十六聖人殉教事件」をハイライトに日本における宣教史と、1862年の犠牲者列聖の意義をユニークな口絵と共に解説

 本書は、1597年2月15日に長崎の西坂の丘の上の刑場で26人のキリスト教信者が処刑されたいわゆる「日本二十六聖人殉教事件」をハイライトにして、そこに至るまでのロヨラとザビエルによるイエズス会のアジア宣教の始まりから、日本布教の歴史的経緯、事件の概要、犠牲者の詳細な経歴と事蹟、そして1862年の列聖の歴史的意義を論じた概説書です。日本二十六聖人殉教事件は、豊臣秀吉による大規模なキリスト教迫害事件として、当時在日していた宣教師ルイス・フロイス(Luís Fróis, 1532 - 1597)による報告によって、当時からヨーロッパで広く知られ、また衝撃を与えました。事件から30年後の1627年に、殉教者26人は福者としてウルヴァノ8世によって列福されたことで、この事件はその後もヨーロッパで長く記憶されることになり、様々な出版物が生み出されています。その後、1858年に江戸幕府が西洋諸国との通商条約を結び、再び外交関係が開かれるようになった1862年、26人は時の教皇ピウス9世によって、聖人として列聖されることになり、この事件に対する再注目と出版物の増加を呼びました。開国後の日本には数多くの宣教師が再来日を試みており、カソリック、プロテスタント双方からの活動が活発化していきますが、再びヨーロッパ諸国に開かれた日本におけるかつて殉教事件が再注目されたのは、こうしたことも背景にあったのではないかと思われます。日本の殉教者の列聖は当時のヨーロッパで大きな反響を呼んだようで、関連する書籍が各国語で相当数に上る数が出版されています。

 本書もこうした潮流の中で刊行された書籍の一つですが、事件だけでなくそれまでの歴史的経緯にかなりの紙幅を割いていることが特徴的で、また犠牲者の列聖の意義についても詳細に論じている点が目をひきます。冒頭の口絵における日本の人々は、本書刊行当時、ヨーロッパの人々にとってより馴染みの深かった中国の人々のように描かれており、当時のヨーロッパにおける日本認識がかなり混乱していることも感じられます。傷みが見られるものの、箔押しを多用した装丁など、造本にも気配りが感じられ、この事件が1863年当時どのように認識されていたのかをさまざまな角度から垣間見せてくれる書物と言えます。