Category 明治期以降の海外における日本研究（日本人による欧文著作含む）

（ベルツ）

『フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト：生誕100周年を記念した伝記』

「東アジアロイド新聞」(徳文新報)からの再刊版 1896年上海刊

(Bálz, Erwin von.)

Ph. F. von Siebold. Nekrolog zu seiner hundertjaehrigen Geburtstagsfeier. Sonder-Abdruck aus dem "Ostasiatischen Lloyd."

Shanghai, (Ostasiatischen Lloyd), 1896. <AB2017121>

Sold

13.8 cm x 25.5 cm, Front pp. [1], 2-12, Original paper wrappers

Information

シーボルト生誕100年記念に執筆されたシーボルト伝。上海の独字新聞、「東アジアロイド新聞」からの再刊。

本書は、シーボルト生誕100周年を祝う年であった1896年に刊行されたシーボルトの伝記で、著者名はありませんが、シーボルトの息子ハインリッヒとも親しかったお雇い外国人ベルツ(erwin von Bälz, 1849 - 1913)とされています。この1896年は、シーボルト生誕100周年を祝う記念式典が2月に東京で開催され、そこで多くの講演や発表が行われましたが、本書ではそのことについても記載があります。

　この短い伝記は、上海の著名なドイツ語新聞である「東アジアロイド新聞(Ostasiatischen Lloyd、徳文新報)に掲載されたことが、シーボルト研究者によって明らかにされていますが、本書のような抜き刷りの独立した小冊子として刊行されていたことは、これまでほとんど知られていなかったものと思われます。小冊子の冒頭には有名なシーボルトの肖像画が別刷りの紙に印刷されて付されています。そもそも東アジアロイド新聞の記事自体が極めて珍しいため、国内でも所蔵が皆無に近い状況ですので、本書は大変ユニークな資料と言えます。

　1896年には、シーボルトの息子二人の手によってシーボルトの主著『日本』第2版が出版されましたが、この際にシーボルトの伝記を掲載するにあたって、多くの資料が参考にされたと言われており、本書も何らかの形で関係があるものと思われます。わずか12ページの小冊子ながら、これまであまり読まれていないシーボルト研究資料として大変興味深いものです。

もともと上海の独字新聞「東アジアロイド」に掲載されたものを、別刷りの冊子として刊行したもの。

冒頭にはシーボルトの有名な肖像画が付されている。本書が刊行された1896年はシーボルト生誕100年の記念にあたる年で、2月26日東京で記念式典が盛大に開かれ、呉秀三が伝記『シーボルト先生』を次男ハインリッヒに贈呈したことが知られている。また、この年は息子アレキサンダーとハインリッヒによって主著『日本』第2版が刊行され、そこにシーボルトの伝記が掲載されていることから、本書と何らかの関係があると思われる。

わずか12ページほどの小冊子だが、作者はシーボルトの息子ハインリッヒとも親しかったお雇い外国人ベルツとされている。文中では2月の記念式典の様子や呉によるシーボルト伝記披露についても言及している。