書籍目録

『日本』

鉄道省

『日本』

1933年頃? 東京刊

Japanese Government Railways

JAPAN

Tokyo, Shueisha, not stated. <AB2017116>

Sold

18.7 cm x 26.1 cm, not paginated 26 leaves, Original pictorial paper wrappers

Information

観光誘致のためのビジュアル誌として鉄道省が作成した英文ガイドブック

 本書は、鉄道省などの歴代鉄道官庁が作成した英文ガイドブックのうちの一つで、シンプルにJAPANと題されています。同じタイトルを持つもっと小型のガイドブックも早くから刊行されていますが、本書は実際的な情報よりも日本への観光誘致を強く意識した写真を中心としたビジュアル誌として作成されているように思われます。

 表紙の美しい日本画を作成した人物は残念ながら店主には不明ですが、裏面に落款があることから特定は可能でしょう。刊行年の記載はありませんが、おそらくテキストの内容から見て1933年ごろと思われます。

 冒頭で紹介されるのは、日本を象徴する富士山で、見開きを使って様々な顔を見せる富士山の写真を6枚掲載しています。首都である大都市東京、四季の美しい日本の風景、祭り、京都や奈良の歴史的建造物や遺跡といった伝統的側面だけでなく、娯楽としての海水浴や競馬、スポーツも紹介されています。スポーツでは、ロサンゼルスオリンピック(1932年)で活躍し、欧米でも多くのファンがいた西竹一(通称バロン西、映画『硫黄島からの手紙』で伊原剛志が演じた)の雄姿や、嘉納治五郎の尽力によって国際的な認知を高めつつあった柔道、テニスやレガッタ、アイススケートなどの写真があります。また能や歌舞伎といった伝統舞台芸術とともに映画撮影の様子を紹介した写真もあります。

 また、ジャポニズムブーム以来海外で定着した感のある、美しい「日本女性」を紹介する写真とテキストも見られます。伝統的な側面と合わせて、最新の工業設備も写真で紹介しており、伝統と最新技術とを併せ持つ魅力的な国としての日本を演出しようという明確な意図が伺えます。植民地としてた朝鮮や台湾、満州も本書では紹介されており、当時の日本が海外に見せたかった像としての日本像が、このガイドブックには凝縮して詰められていると言えるでしょう。

表と裏の表紙を広げると一枚の日本画となるデザイン。左下に画家による落款がある。
見開き大の日本地図。
冒頭に置かれている日本を象徴する自然としての富士山
伝統と最新とが融合すると大都市、東京
四季の花々
歴史的建造物や遺跡
伝統行事
庭園
近代オリンピックの隆盛と国際イベントとしての重要性は1920年代ごろから急速に高まっていく。
左上は、バロン西として欧米各国で知られていた西竹一のロス五輪での雄姿。
能や歌舞伎といった伝統舞台芸術と、当時最新の映画撮影の様子。
自然の風景美も複数回にわたって紹介。
「日本女性」のイメージは、欧米から見られる日本像の一つの象徴でもあった。
朝鮮
台湾
満州