書籍目録

『日本』

鉄道省

『日本』

(1937年?) 東京刊

Japanese Government Railways

JAPAN

Tokyo, Dai-Nippon Printing Co, Ltd, 1937?. <AB2017108>

Sold

20.8 cm x 23.0 cm (Folded: 10.2 cm x 23.0 cm), pp.20 (including covers), Original pictorial wrappers.

Information

「1940年」の万博を目指す盛り上がりが最高潮に達した時期の英文ガイドブック。

 本書JAPANは1913年のビューローによる発刊から続く、当時を代表する英文ガイドブックで、特徴的なイラストを用いた表紙デザイン、中心部を折ることで持ち運びに便利な縦長の形状になるという共通点を継承して、鉄道省が発行するようになってからも刊行が続けられました。本書は、おそらく1937年ごろに刊行されたと思われるものです。

 稚児と獅子舞を描いたカバーデザインで、製作者の落款がありますが、残念ながら店主には作者を特定できていません。同年代にビューローが観光していた英文の旅行案内が来日した観光客を対象とした実用的な情報を重視していたのに対して、本書は当初からの特徴である写真を多用したビジュアルな構成となっており、観光誘致を目的としていることがわかります。多くの写真は版を改めるごとにほぼ全て入れ替えられており、本書では完成して間もない国会議事堂(帝国議事堂)や1918年に完成した大阪中之島公会堂の写真などが収録されています。

 また、本書では1940年に開催されるはずだった「幻の東京・横浜万博」と「東京オリンピック」に向けて、両イベントを海外に向けて広く発信することに重きが置かれていることが非常に特徴的です。皇紀2600年を世界的なイベントを同時開催することで内外で盛大に祝うことを狙ったもので、両イベントの概要や1940年の意義を強調するとともに、万博の東京会場予定図(掲載されている図が1937年7月まで計画されていた初期会場案であることから、本書が1936年後半から1937年前半に刊行されたことが推察できます)まで掲載しています。当時の国際観光政策にとって、1940年がいかに重要視されていたのかを物語るものですが、周知の通りいずれのイベントも開催されることはありませんでした。

写真を多用するビジュアルな構成は、ビューロー刊行時から変わらぬ特徴。
祇園祭はじめ、伝統的な日本の行事を写真とテキストで紹介している。
帝国議事堂と中之島公会堂。左のテキストページでは「1940年」の幻に終わったオリンピックと万博を強調する項目が設けられている。
上掲の続き。
ケーブルカーと一等旅客車内の様子
左は1937年7月まで計画されていた万博の初期東京会場案、右は1926年に完成した明治神宮球場。
裏表紙は地図になっている。
携行に便利な中心部で二つ折りにできるのも当初から変わらない特徴の一つ。特徴的なデザインを作成した人物は、残念ながら店主には特定できず。