書籍目録

『東洋におけるイエズス会に関する1568年までの出来事の歴史』

ダ・コスタ / マッフェイ(編訳)

『東洋におけるイエズス会に関する1568年までの出来事の歴史』

第2版 1572年 パリ刊

Da Costa, Manuel. / Maffei, Giovanni Pietro.

EMANVELIS ACOSTAE LVSITANI HISTORIA RERVM A SOCIETATE IESV IN Oriete Gestarum, ad annum vsq; a Deipara Virgine M.D. LXVIII, recognia, & latinitate donata. ACCESS ERE DE IAPONICIS REBVS EPISTOLArum libri IIII, item recogniti, & in latinum ex Hispanico serm

Paris, Michaëlem Sonnium, M. D. LXXII.(1572). <AB202166>

Sold

Second enlarged edition.

8vo (9.8 cm x 15.5 cm), Title., 9 leaves, 246 numbered leaves(no.1-28, 39[i.e.29], 30-202, 204, 203, 206, 205( misbound, but complete), 207-246), Later vellum
刊行当時に近い年代の所有者による書き込みが所々あり。後年に再装丁が施されたものと思われ、状態は良好。[Laures: JL-1572-KB1-137-66 / NCID: BB17981472]

Information

16世紀に刊行されたイエズス会初期日本書簡集を代表する作品の改訂第2版

 本書は、16世紀に刊行されたイエズス会士の日本を中心とした書簡集の代表的な作品の一つで、1572年にパリで刊行されています。本書の原著者は、ポルトガルのイエズス会士ダ・コスタ(Manuel da Costa, 1541 - 1604)で、ザビエルによる最初期のアジア宣教地からの書簡を編纂して『東方布教史』と題したポルトガルの草稿を書き上げました。このポルトガル語草稿はそのままの形で半刊行されませんでしたが、イタリアのイエズス会士であるマッフェイ(Giovanni Pietro Maffei, 1536? - 1603)がこれをラテン語に編纂して、自身の注釈と解説文を付して1571年にディリンゲンで刊行しました。

 本書はこのマッフェイがラテン語に翻訳編纂した書物の第2版に当たるもので、出版地をパリに変えて1572年に刊行されています。初版にはなかった「インド宣教書簡集」を新たに付け加えたことが本書の大きな特徴で、初版刊行からわずか1年で増補がなされていることになります。本書の構成は、最初にマッフェイによる長文の解説が置かれており、続いて本書の中心をなす日本宣教書簡集が、続いてインド宣教書簡集が掲載されています。「日本宣教書簡集」は全4章で構成されていて、パウロと呼ばれた日本出身のアンジローによる書簡から始まり、彼との出会いをきっかけに日本へ赴くことになったザビエルによる多くの書簡、ザビエルとともに来日したコスメ・デ・トーレス(Cosme de Torres, 1510 - 1570)、彼らに続いて最初期の日本宣教活動を支えたガスパル・ヴィレラ(Gaspar Vilela, 1525 - 1572)、ヌーネス(João Nunes Barreto, 1519 - 1562)らの書簡、また元貿易商人で、イエズス会に入会後は日本における宣教活動に病院建設や天草諸島での布教など数多くの功績を挙げたことで知られるアルメイダ(Lúis de Almeida, 1525? - 1583)による書簡などが多数収録されています。本書に収録されているこれらの多くの書簡は、イエズス会による日本における初期の宣教活動の実態を理解する上での基礎資料となるものばかりです。
 
 また、本書において初めて追加された「インド宣教書簡集」は、マラッカやゴアといった日本以外の地から発信された1568年から1570年までの書簡が収録されたもので、日本が主題とはなっていないものの、アジア宣教全体の文脈において日本についても時折言及されており、間接的に日本情報記事としても活用することができるものです。

 本書はさらに翌1573年にも改訂されており、多くの読者を獲得すると同時に、次々と改訂が加えられて一ったことが分かります。本書の各版の変遷を簡単にまとめますと下記のようになります。

①1571年:ディリンゲン阪(初版)
Rerum, a Societate Iesu in Oriente gestarum ad annum usque à Deipara Virgine M.D. LXVIII,…
Dilingen, 1571.
228 leaves

②1572年版:パリ版(第2版)(本書)
Paris, 1572.
256 leaves.
*「インド宣教書簡集」を新たに追加

③1573年版:ナポリ版(第3版)
Rerum a Societate Iesu in Oriente gestarum volumen : in quo hæc ferme continentur : de rebus Indicis ad annum usque a Deipara Virgine MDLXVIII,…
Neapoli, 1573.
236 leaves
*「日本宣教書簡集」に第5部(1565年)を追加し、大道寺裁許状の写とラテン語訳文を新たに収録


④1574年版:ケルン版(第3版の再版)
Rerum a Societate Iesu in oriente gestarum volumen : continens historiam incundam lectu omnibus Christianis, præsertimijs, quibus vera religio est cordi …Köln, 1574.
472 p.
*③の再版としてケルンで出版。頁付のみ変更。

 このように、本書は、初版刊行の1571年から1574年に至るまで、毎年改訂を加えながら続けています。基本的には、①1571年初版、②1572年第2版、③④1573年 / 1574年第3版、の3つに分類することができ、このわずかな間に本書を通じて伝えられた日本情報が増え続けていたいたことを示しています。本書の各版を比較しながら当時のヨーロッパにおける日本情報の流通を辿ることもまた興味深いテーマ一つと言えるでしょう。