書籍目録

『日本旅行案内:1937−1938年版』

ジャパン・ツーリスト・ビューロー

『日本旅行案内:1937−1938年版』

1937年(8月) 東京刊

JAPAN TOURIST BUREAU

JAPAN TRAVEL GUIDE 1937 - 1938.

Tokyo, Toppan Printing Co., Ltd, (AUG.) 1937. <AB2017108>

Sold

10.0 cm x 22.5 cm, pp. I-XI, 1-107, with 1 double page map, Original wrappers.

Information

 1930年代は、ビューローや鉄道省、日本ホテル協会、国際観光局といった様々な組織から、英文のガイドブックやマップなどが多く刊行されていますが、本書は、ビューローが発行していた簡易ガイドブックです。持ち運びの便を意識した縦長の100ページ余の小冊子で、訪日旅行者が必要とする情報をコンパクトにまとめたものです。

 JAPANと題されて、ビューロー発足直後から刊行されていたガイドブックに比べると、交通機関や運賃、ホテル、見どころなどのテキスト情報と広告が中心の構成となっており、写真やイラストを多用したガイドブックとは異なり、最新の情報をコンパクトにまとめることを意識した作りとなっています。この形状のガイドブックがいつ頃から刊行されるようになったのかは定かではありませんが、1933年に刊行されたものがあることが確認でき、また1940年代以降に刊行されたものは、少なくとも店主の知る限り確認できないことから、1930年代に連続して刊行されていたものではないかと思われます。

 1930年代には航空機による旅行も始まっており、日本航空輸送による中国大陸と日本を結ぶ航路は、多くの旅行者が用いていましたが、本書にも日本航空輸送の広告や紹介があり、当時の旅行手段の変化を物語っています。汽船会社やホテル、土産物屋(百貨店)などによる広告が多数掲載されており、当時の旅行業界の関連企業の活動もこの冊子から見ることができます。

目次冒頭
掲載広告一覧。当時の訪日観光客を対象としていた主要企業、団体一覧とも言える。
ビューローが刊行を始め、当時は鉄道省が発行していたJAPANの広告。
日本航空輸送の広告。同社は間も無く(1938年12月)に国策会社となるが、当時は国際旅客輸送で世界的に見ても大きなシェアを誇っていたと言われる。
1940年は皇紀2600年を祝う記念の年として、オリンピックと万博が東京、横浜で企画されており、国際観光政策の最大の目玉となるイベントとなるはずであったが、周知の通りいずれも実現しなかった。本書でも1940年の重要性を強調した一節がわざわざ設けられていることから、当時の国際観光政策において「1940年」がいかに重要視されていたのかがわかる。特に本書は、基本的に旅行者にとって実用的な情報だけを優先して掲載しているだけに目を引く。