書籍目録

『世界旅行者:新旧世界からの報告集』第6巻

ラ・ポルテ / D.P.E.P. 訳

『世界旅行者:新旧世界からの報告集』第6巻

スペイン語訳版  1796年 マドリッド刊

La Porte, [Joseph] de. / D. P. E. P. (tr.)

EL VIAGERO UNIVERSAL, Ó NOTICIA DEL MUNDO ANTIGUO Y NUEVO. OBRA COMPUESTA EN FRANCES POR Mr. DE LAPORTE, Y TRADUCIDA AL CASTELLANO, COOREGIDO EL ORIGIAL, É ILUSTRADO CON NOTAS. TOMO VI.

Madrid, Fermin Vilalpando, 1796. <AB202160>

Sold

Edition in Spanish.

8vo (10.3 cm x 17.4 cm), pp.[1(Half Title.)-3(Title.)-5], 6-359, 160[i.e.360], 361-368, Contemporary full leather.

Information

200ページを越える日本関係記事を収録した18世紀後半を代表する世界地誌書の第6巻スペイン語訳版

本書は、世界各地の情報を旅行者の現地からの報告という形で編纂した世界地誌に類する書物で、この第6巻は、日本や朝鮮、蝦夷などを対象としています。原著は、フランスの司祭で批評家、多くの著作を残した著述家でもあったラ・ポルテ(Joseph de La Porte, 1714 - 1779)の代表作である『フランス人旅行記集』(Le voyageur français. 26 vols.)で、多くの旅行記・航海記集成を駆使して 執筆されたものです。この作品は、実際には存在しない旅行者がパリの庇護者の元に現地から寄せた書翰(例えば、日本の場合だと「1745年10月13日、江戸にて」と章末に記載)を編纂したという体裁を取っていますが、実際にはラ・ポルテ自身が書き上げたもので、全26巻(ラ・ポルテ没後には別の著者によって続刊が42巻まで刊行)から成る当時のヨーロッパにおける代表的な世界地誌作品として好評を博し、再版もなされています。本書はこれをD.P.E.P.というイニシャルだけが記された匿名の著者が、独自の注釈等を付した上でスペイン語に翻訳したものとされていて、1796年にマドリッドで刊行されています。

 この第6巻は、冒頭の通算第67章から第72章までが日本の記述に費やされていて、実に200ページ以上にも上る紙幅が費やされています。また、236ページから256ページまでは「カムチャッカとエゾ」が扱われており、これらも合わせますと本書の大半は日本関係記事で構成されていることになります。原著に見られた章末の書簡の発信日と発信地の記載はこのスペイン語役版には見られず、より世界地誌書としての性格を強くしているように見受けられますが、訳者がどのような変更と付記を行なっているかについては、フランス語原著とのより詳細な比較考証が必要でしょう。

 ラ・ポルテ『フランス人旅行記集』は、全26巻で構成された大部の著作ですが、それがゆえに同書における日本関係記事については、これまでほとんど言及されたことがないようで、フランス語原著、翻訳版のいずれも国内研究機関では所蔵されていないようです。その意味でも、200ページを越えるまとまった日本関係記事であるにもかかわらずこれまで研究されてこなかった記事を収録した本書は、とても興味深い作品と言えそうです。