書籍目録

「J.T.B. チェツク」ならびに「第百銀行取引先一覧附JTBチェツク使用注意」

ジャパン・ツーリスト・ビューロー / 第百銀行

「J.T.B. チェツク」ならびに「第百銀行取引先一覧附JTBチェツク使用注意」

和英文併記。1928年8月17日付の利用者による署名記入とビューローによる承認の押印あり。チェックそのものは全て使用済みのため付属せず、台帳のみ現存。 (1927年) (東京刊)

JAPAN TOURIST BUREAU / THE ONE HUNDREDTH BANK, LIMITED, TOKYO.

JAPAN TOURIST BUREAU TRAVELLERS' CHEQUES. / LIST OF CORRESPONDENTS OF THE ONE HUNDREDTH BANK. Important Notice to the Bearer of the J.T.B. Cheques.

(Tokyo), TOPPAN PRINTING CO, (1927). <AB2017107>

Sold

8.5 cm x 24.5 cm / 7.2 cm x 10.8 cm,

Information

ビューローが旅行者に発行していた旅行小切手帳。貴重な当時の利用者による署名とビューローによる押印。

 この2つの大変ユニークな資料は、ビューローが業務の一環として行なっていた、旅行者小切手に関するものです。ビューローは第百銀行と契約して、旅行者向けの円貨小切手を発行するサービスを1927年に開始しており、この資料はそれを用いた外国人観光客が残したものです。

 残念ながら(当然ながら)小切手そのものは利用されていたため失われていますが、台帳には当時のビューローの主要支部の一つであった神戸支部の押印があります。また、切り取られた小切手の根元部分にはそれぞれ番号が記載されており、一つの台帳に何枚の小切手があったのかや、どのように管理発行していたのかを、ここからうかがい知ることができます。台帳には小切手利用に際しての注意書きが英文、邦文の両方で記載されています。

 また、第百銀行取引先一覧は、台帳と同じく英文と邦文と両方(ただし併記ではなく、右開き、左開きでそれぞれ別個に掲載)で書かれており、当時の第百銀行(1928年には川崎第百銀行と改名していますので、ここからこの冊子が1927年に発行されたことが推測できます)の支部が網羅的に掲載されています。さらに重要なのは、この小冊子に含まれている署名書が、小切手使用の際に記す署名との照合に用いルための身分証としての役目を果たしていた点です。本書には、1928年8月17日付でEdgar Hallidayと記された署名と、ビューローによる押印があります。署名書下部には凸版印刷によってこの署名書が印刷されていることも記されています。署名書が印刷されたのは、1927年と思われますが、実際に用いられたのは1928年8月のため、上述のように第百銀行は川崎第百銀行へと既に改名していましたので、赤字でKAWASAKI, 川崎と追記されているのも時代を物語っています。本書に記された注意書きによりますと、小切手を全て使用した後は署名書をビューローまたは第百銀行に返却すること、となっていることから、本来本書もまた返却される運命にあったはずですが、どういうわけか台帳とともに持ち帰られ、今日まで現存していたようです。

 こうした資料はガイドブック以上に利用後は廃棄されることが極めて多かった性質のものであるだけに、現存するものはほとんどないと思われることから、大変貴重な研究情報をもたらしてくれる資料と言えます。
 

「1927. 01 (昭和2年)JTB旅行小切手販売開始当時、旅行中に現金を持ち歩くのは大きな心配事の一つでした。特に海外では通貨の違いや為替の変動が加わり、その手間と不安が旅行の楽しみを半減させていました。そこでビューローは、円貨による日本最初の旅行小切手を発行。第百銀行との契約で、発売当初は20円、50円、100円の3種類で、その後、10円、20円、100円の3種類となりました。」
(JTBホームページ「JTB100年のあゆみ」より)

下が小切手台帳、上が第百銀行取引先一覧に付属する署名書を開いたもの。
小切手台帳裏表紙には英文で注意書きとビューロー支部を記載。小切手が切り取られた後の根元部分には、それぞれの小切手番号が記されている。
小切手台帳表表紙は日本語表記。
台帳裏面は第百銀行の支店を記載。
第百銀行取引先一覧は、右びらきと左びらきの両方でそれぞれ邦文、英文で記されている。冊子の発行は1927年と思われるが、用いられたのは第百銀行が川崎第百銀行と改名した1928年になってからのため、それぞれ鉛筆書きで追記されている。
英文記載の見開き部分に署名書が貼り付けてある。1928年8月17日の署名とビューローの押印、ビューロー神戸支部の押印がある。ここにも「川崎、KAWASAKI」が赤字で追記されている。
邦文記載の見開き部分には、邦人旅行者の署名書を貼り付けるスペースが設けられている。
小切手利用に際しての注意書き。小切手を全て利用し終わった際は署名書を返却することと記されているが、どういうわけか本書はそのまま旅行者によって持ち帰られたようである。