書籍目録

『ユスト・ウコン(高山右近)殿:日本の王子、あるいは真の信仰を定めるためのあらゆる宗教の神学者の集い』

著者不明

『ユスト・ウコン(高山右近)殿:日本の王子、あるいは真の信仰を定めるためのあらゆる宗教の神学者の集い』

ドイツ語版 1854年 ライプツィヒ刊

Anonymous.

Giusto Okundono: Kronprinz von Japan oder die große Versammlung von Theologen aller Religionspartien zur Entscheidung des wahren Glaubens.

Leipzig, Remmelmann, 1854. <AB202154>

Sold

German edition.

8vo (13.0 cm x 20.5 cm), Pp.[I(Half Title.)-III(Title.)-V], VI-XIII, [1], 2-175, [176], 1 leaf(advertisement), Original blue paper wrappers.
旧蔵機関による押印やシールの貼り付けあり。

Information

高山右近を題材にしたユニークな物語

 本書は高山右近を題材にしたユニークな物語調で綴られた書物で、1854年にライプツィヒで刊行されています。高山右近については、生前からイエズス会士による日本報告によってヨーロッパに伝えられており、その没後も、17世紀初めから数多く出版されてきたカソリック教会関係者による「日本教会史」「日本殉教史」に類する書物に繰り返し登場し、ヨーロッパでは模範的なカソリック信者として非常によく知られていた存在でした。西洋諸国との交流が再開され始めた幕末の日本をめぐっては、1862年のいわゆる「日本二十六聖人」の列聖や、長崎の大浦天主堂における「信徒発見」など、相次ぐ日本における信仰の「復活」を期待させるような出来事が続いており、こうした日本への再注目を背景として本書が刊行されたのではないかと思われます。

 本書は、実在の高山右近を題材に取りながら、さまざまな寓意が込められたストーリが展開する物語となっています。著者名の記載はありませんが、本書刊行と同年の1854年にバルティモアで、Philalethes という偽名の作者による英語作品『ジュスト・右近殿:日本の王子』(Justo Ucundono, prince of Japan. Baltimore: John Murphy, 1854.)が刊行されており、本書とほぼ同じ構成をとっている作品であることから、この英語作品と同じ作者によるものではないかと思われます。英語版の方では17世紀のラテン語の作品の英訳であるとされているようですが、これはおそらくフィクションで、実際には著者によるオリジナル作品であると思われますが、ドイツ語で刊行された本書と、英語で刊行されたバルティモア版のいずれが原著であるのかについては、現時点では不明です。英語版については国内で少なからず所蔵機関が確認できますが、このドイツ語版については、Cinii上等で確認できる限りでは所蔵機関がないようです。