書籍目録

『教皇史:第5部:スペインと新世界のカソリック王であるフェリペ4世陛下に捧ぐ』(1605年から1623年にかけて世界で生じた特筆すべき出来事について)

グアダラハラ・イ・ザビエル / (慶長遣欧使節)

『教皇史:第5部:スペインと新世界のカソリック王であるフェリペ4世陛下に捧ぐ』(1605年から1623年にかけて世界で生じた特筆すべき出来事について)

1630年 マドリッド刊

Guadalaxara, y Xavier, Marcos.

QVINTA PARTE LA HISTORIA PONTIFICAL. LA MAGESTAD CATOLICA DE DON FELIPE Quarto Rey de las Españas y Nueuo Mundo.

Madrid, Luis Sanchez, 1630. <AB202152>

Sold

Large 8vo (21.0 cm x 29.4 cm), Title., 7 leaves(Dedication & Tabla), pp.1-180, 118[i.e.181], 182-228, 129[i.e.229], 230-288, 298[i.e.289], 290-334, 135[i.e.335], 336-350, 35[i.e.351], 352-367, 364[i.e.368], 369-508, 50[i.e.509], 510-548, 546[i.e.549], 550-570, 57[i.e.571], 572-584, 16 leaves(Tabla), Contemporary vellum.
本体の随所に強いヤケが見られるが判読に支障はない範囲。本体と製本が一部外れかけている箇所あり。

Information

慶長遣欧使節や元和の第殉教について報じた記事を収録

 本書は、カソリック教会と歴代教皇を中心として、スペインとその植民地を中心とした世界各地で生じた出来事を編年体で綴った書物で、1605年から1623年にかけての出来事を対象としています。100年以上かけて全6巻構成で刊行された歴史書の第5部に当たるもので、1630年にマドリッドで刊行されています。本書が大変興味深いのは、1615年の慶長遣欧使節のヨーロッパ来訪や、1622年の元和の第殉教として知られるキリシタン迫害についてなどの記事が掲載されていることで、日本関係欧文図書として貴重な作品ということができます。

 本書がその第5部である『教皇とカトリックの歴史』(Historia Pontifical y Católica)は、スペインの歴史家で聖職者であったイレスカス(Illescas, Gozalo de, 1518? - 1583?)によって始められ、第1部が1565年に、第2部が1573年に刊行されたと言われています。この『教皇とカトリックの歴史』は、スペイン語で書かれていて、教会史や教皇を主題にした著作は通常ラテン語で執筆されることが常識であった当時にあって、非常に画期的な作品(おそらく同種の著作の中ではスペイン語初とされる)となりました。ラテン語文化圏以外の読者をも対象に据えた同書は、スペインを代表する歴史書として高い評価を受けることになります。このイレスカスの著作を継続する形で、同じくスペインの聖職者で神学者であったバヴィア(Luis de Bavia, 1555 - 1628)は、1572年から1591年を対象とした「第3部」を1609年(初版は1608年か)新たに刊行しました。バヴィアは神学者でありながら、歴史関係の著作を他にも刊行しており、翻訳書も含めて複数の著作を刊行した著述家として活躍したことが知られています。本書の著者であるグアダラハラ・イ・ザビエル(Marcos Guadalajara y Xavier, 1560 - 1631)は、第3部に続く第4部(1591年〜1605年を対象)をバヴィアとともに編纂し1613年に刊行しています。

 本書はこれに続く「第5部」にあたるもので、11ページを左右に分割したダブル・コラムで600頁近くになる大著の作品となっています。本書が対象としている年代が15年ほどに過ぎないことに鑑みると、本書の記述が非常に濃密なものであることがうかがえます。この第5部は、それまでの4作品からタイトルを若干変更しており、それまで「教皇とカトリックの歴史(Historia Pontifical y Catolica)」とあったのを、単に「教皇史(Historia Pontifical)」として、従来タイトルに含まれていた対象年代の表記を採用せず、代わりにスペイン王フェリペ4世に本書が捧げられることが大きく記されています。また、本文の構成においても変更が加えられていて、これまでは歴代教皇ごとに大きく区分された上で、編年体で細かく小立てがなされていたのに対して、教皇による区分をなくして、シンプルに年代ごとに区分して、そこからさらに細かな章立てを行うという構成としています。本書が対象としている年代に在位した教皇は、パウルス5世(在位1605年〜1621年)とグレゴリウス15世(在位1621年〜1623年)が中心ですが、全体的な印象として『教皇史』というタイトルとは裏腹に、教皇の存在感がかなり薄められ、代わりに世俗の出来事やスペイン王の存在が強調されているような感を受ける構成となっています。このあたりについては、著者の何らかの思惑があってのことではないかと思われますが、詳しいことは本書の読解を通じての検証が待たれます。

 本書が日本関係欧文図書として非常に興味深いのは、同時代の日本に関係する記事、具体的には、慶長遣欧使節や、元和の第殉教と呼ばれる一連のキリシタン弾圧事件のことなどについての記述が見られることです。本書には、「日本の地方国である奥州(Voxu)国の伊達(Idate)の使節である支倉六右衛門(Faxicura Rotuyemon)のヨーロッパ訪問」(第11部(1615年)第7章(314頁〜)、「日本の皇帝である将軍様(Xogunsama)が、その信仰のゆえに多数のカソリック京都に命じた、厳しくも輝かしき殉教について」(第18部(1622年)第10章)という二つの独立した記事が掲載されています。これらに加えて、家康によるフィリピン総督へのメキシコ交易の打診交渉のことに言及した記事(第1部(1603年)第16章)や、イエズス会の創始者であるロヨラとザビエルの列聖についての記事(第18章(1622年)第1章)なども収録されています。これらの記事は10ページほどのものですが、上述したようにダブル・コラムでびっしりと記されていて、実際のテキストの分量としてはかなりのものとなっています。バヴィアがこれらの記事を執筆するに際してどのような資料を参照したかについては触れていませんが、かなり詳しく年代を追って日本の出来事を解説していることから、各種のイエズス会士やフランシスコ会士による報告等を参照しながら、独自に情報をまとめ上げて執筆したのではないかと思われます。こうした日本関係記事は、当時日本で生じた出来事をスペイン語読者、しかも特に日本に関心を有していない読者も含むより幅広い読者層にに向けて提供した貴重な記事ということができるでしょう。

 本書は、100年以上にわたって継続して刊行された作品の一部で、しかも表題には日本に関する記述が全くないことから、これまで日本関係欧文図書としてはほとんど知られてきませんでしが、上記のように大変豊富で貴重な日本関係記事を収録していることから、注目すべき著作ということができるでしょう。

刊行当時のものと思われる装丁で一部本体と外れている箇所も見受けられるが、概ね良好な状態。
タイトル頁。これまでの4部と比べて変更されている。
献辞文冒頭箇所。
本書で扱われるのは、パウルス5世(在位1605年〜1621年)とグレゴリウス15世(在位1621年〜1623年)を中心とした時代。
冒頭には目次が掲載されている。
本文冒頭箇所。これまでのように教皇名による構成ではなく、1年を1部とした構成としている。
「日本の地方国である奥州(Voxu)国の伊達(Idate)の使節である支倉六右衛門(Faxicura Rotuyemon)のヨーロッパ訪問」(第11部(1615年)第7章(314頁〜)
「日本の皇帝である将軍様(Xogunsama)が、その信仰のゆえに多数のカソリック京都に命じた、厳しくも輝かしき殉教について」(第18部(1622年)第10章)
家康によるフィリピン総督へのメキシコ交易の打診交渉のことに言及した記事(第1部(1603年)第16章)
イエズス会の創始者であるロヨラとザビエルの列聖についての記事(第18章(1622年)第1章)
巻末には索引が設けられている。