書籍目録

『教皇とカトリックの歴史:第4部:1591年から1605年にかけて世界で生じた特筆すべき出来事について』

バヴィア / グアダラハラ・イ・ザビエル

『教皇とカトリックの歴史:第4部:1591年から1605年にかけて世界で生じた特筆すべき出来事について』

1613年 マドリッド刊

Bavia, Luis de / Guadalajara y Xavier, Marcos de.

QVARTA PARTE DE LA HISTORIA PONTIFICAL, Y CATOLICA….CONTIENE ESTA QVARTA PARTE de la historia Pontifical, todo lo sucedido en el mundo desde el año de mil y quinientos y nouenta y vno hasta el de mil y seiscientos y cinco.

Madrid, Luis Sanchez, M.DC.XIII (1613). <AB202151>

Sold

Large 8vo (21.0 cm x 29.0 cm), Title., 3 leaves, pp.1-24, 15[i.e.25], 26-34, 37[i.e.35], 38[i.e.36], 37-208, 109[i.e.209], 210-428, 431[i.e.429], 430-432, 28 leaves(Tabla), Contemporary vellum.
背表紙に切れ目が見られるが全体として良好な状態。

Information

秀吉による朝鮮侵略や二十六聖人殉教事件などを報じた日本関係記事を収録

 本書は、カソリック教会と歴代教皇を中心として、スペインとその植民地を中心とした世界各地で生じた出来事を編年体で綴った書物で、1591年から1605年にかけての出来事を対象としています。100年以上かけて全6巻構成で刊行された歴史書の第4部に当たるもので、1613年にマドリッドで刊行されています。本書が大変興味深いのは、「世界で生じた特筆すべき出来事」の中に日本に関係する出来事が含まれていることで、この第4部では、秀吉による朝鮮半島への戦争(文禄・慶長の役)と、フランシスコ会関係者23名とイエズス会関係者3名が犠牲となったいわゆる日本二十六聖人殉教事件を中心とした記事が掲載されており、日本関係欧文図書として貴重な作品ということができます。

 本書がその第4部である『教皇とカトリックの歴史』(Historia Pontifical y Católica)は、スペインの歴史家で聖職者であったイレスカス(Illescas, Gozalo de, 1518? - 1583?)によって始められ、第1部が1565年に、第2部が1573年に刊行されたと言われています。この『教皇とカトリックの歴史』は、スペイン語で書かれていて、教会史や教皇を主題にした著作は通常ラテン語で執筆されることが常識であった当時にあって、非常に画期的な作品(おそらく同種の著作の中ではスペイン語初とされる)となりました。ラテン語文化圏以外の読者をも対象に据えた同書は、スペインを代表する歴史書として高い評価を受けることになります。このイレスカスの著作を継続する形で、同じくスペインの聖職者で神学者であったバヴィア(Luis de Bavia, 1555 - 1628)は、1572年から1591年を対象とした「第3部」を1609年(初版は1608年か)新たに刊行しました。バヴィアは神学者でありながら、歴史関係の著作を他にも刊行しており、翻訳書も含めて複数の著作を刊行した著述家として活躍したことが知られています。本書はこの第3巻に続いて同じくバヴィアが、サラゴサの神学者で歴史家でもあったグアダラハラ(Marcos Guadalajara y Xavier, 1560 - 1631)と協力して執筆し、1613年に刊行した「第4部」にあたるもので、11ページを左右に分割したダブル・コラムで400頁を超える大著の作品となっています。本書が対象としている年代が15年ほどに過ぎないことに鑑みると、本書の記述が非常に濃密なものであることがうかがえます。

 本書が対象としているのは、主にクレメンス8世(在位1592年〜1605年)で、これに加えて、クレメンス8世に続いて教皇となったもののわずかひと月ほどで逝去したレオ11世の記述がごく短く掲載されています。本書は、基本的には編年体で綴られており、各部はさらに非常に細かく章によって分けられていて、トピックごとに記事が掲載されています。教皇を中心としたカトリック教会に関する出来事を中心に添えながらも、スペインとその植民地に関連する世界各地の出来事を記録していることが大きな特徴で、当時よく見られた「世界史」「普遍史」と呼ばれたジャンルに属する作品とも言えます。

 本書が日本関係欧文図書として非常に興味深いのは、同時代の日本に関係する記事、具体的には秀吉による朝鮮侵略の試みや、キリシタンの迫害についての貴重な記事が収録されている点です。本書では、「日本におけるカソリックの状況:イエズス会の新点と王国における保護、ならびに日本の統治者である関白殿(Cambucondo)の中国侵略のための抑圧について」と題した記事が、第1部(クレメンス8世)第67章(289頁〜)に掲載されており、これに続いて、「太閤様(Taycosama)による甥(秀次のこと)の排除と逮捕、処罰、ならびに6人のフランシスコ会士と他のキリスト教信者の長崎における殉教、加えて、太閤様が彼の息子の地位を確かなものにするために命じたこと、そして(太閤様の)死」(同68章(293頁〜)が掲載されています。これらの記事は10ページほどのものですが、上述したようにダブル・コラムでびっしりと記されていて、実際のテキストの分量としてはかなりのものとなっています。バヴィアがこれらの記事を執筆するに際してどのような資料を参照したかについては触れていませんが、かなり詳しく年代を追って日本の出来事を解説していることから、各種のイエズス会士やフランシスコ会士による報告等を参照しながら、独自に情報をまとめ上げて執筆したのではないかと思われます。こうした日本関係記事は、17世紀前半のかなり早い段階で、当時日本で生じた出来事をスペイン語読者、しかも特に日本に関心を有していない読者も含むより幅広い読者層にに向けて提供した貴重な記事ということができるでしょう。

 本書は、100年以上にわたって継続して刊行された作品の一部で、しかも表題には日本に関する記述が全くないことから、これまで日本関係欧文図書としてはほとんど知られてきませんでしが、上記のように大変豊富で貴重な日本関係記事を収録していることから、注目すべき著作ということができるでしょう。

刊行当時のものと思われる装丁。背表紙の一部に切れ目が見られるが、概ね良好な状態。
タイトル頁。
冒頭に目次が掲載されている。
「太閤様」を中心にした日本関係記事が収録されていることが目次でも確認できる。
本文冒頭箇所。本書では、クレメンス8世の在位中の出来事が中心となる。
「日本におけるカソリックの状況:イエズス会の新点と王国における保護、ならびに日本の統治者である関白殿(Cambucondo)の中国侵略のための抑圧について」と題した記事(第1部(クレメンス8世)第67章(289頁〜))
「太閤様(Taycosama)による甥(秀次のこと)の排除と逮捕、処罰、ならびに6人のフランシスコ会士と他のキリスト教信者の長崎における殉教、加えて、太閤様が彼の息子の地位を確かなものにするために命じたこと、そして(太閤様の)死」(同68章(293頁〜)
レオ11世は即位後1月ほどで逝去したため記事は非常に短い。
末尾にわずかながらも日本に言及した記事が見える。
巻末には索引が設けられている。