書籍目録

『最新歐米旅行案内 : 東京起点』

富田鐵夫 / [日本郵船] / [東洋汽船] / (大阪商船)

『最新歐米旅行案内 : 東京起点』

初版 大正12(1923)年  東京(太平洋社)刊

<AB202140>

Sold

First edition.

12.6 cm x 18.8 cm, Front., pp.1-5, 1-10, 1 leaf(wrongly not paginated), pp.11-166, 1 leaf(colophon), 1 leaf(advertisement), Original paper wrappers.
奥付と裏表紙の余白部分に欠損あり。全体的にシミとヤケが見られる。ホチキスによる簡易製本で金具のサビ、外れ箇所あり。[NCID: BA66263525]

Information

日本郵船、東洋汽船、大阪商船を用いた欧米渡航ガイド

本書は、主として日本郵船の欧州航路を用いたヨーロッパ渡航、同社ならびに東洋汽船、大阪商船の太平洋航路を用いたアメリカへ渡航する際の手引書として刊行されたものです。前半(74頁まで)がヨーロッパ案内、後半(75頁〜166頁)がアメリカ案内となっています。著者の詳しい略歴等に就いては不明ですが、本書中で日本郵船に関連する箇所は同社担当者が執筆(叙述)し、また東洋汽船に関する記事も同様に同社の担当者が執筆(叙述)しており、実質的に大部分が著者以外の記述(叙述)となっています。

 ヨーロッパ案内とアメリカ案内のいずれの案内も日本郵船の航路案内から記述が始まっていて、旅券の出願手続きから乗船切符の購入、トランク等必要な携行品、手荷物の制限重量と大きさといった渡航前の準備の解説が冒頭に掲載されています。こうした具体的な案内は当時初めて渡航する人にとって非常に有用であったと思われますが、現代の視点から見ますと当時の欧米への海外旅行の様相を垣間見ることができる大変興味深い記述となっています。欧州航路は横浜を出港してからの寄港地の案内がコンパクトながらも実用面を重視して掲載されていることも特徴的です。アメリカ案内はアメリカ入国後の案内が特に充実しており、西海岸からニューヨークに至るまでの鉄道案内やホテルの案内も掲載されています。さらに日本郵船の航路だけでなく東洋汽船や大阪商船の航路や船内での様子や注意事項についてもかなりの至福を割いて記載されており、当時の3社による太平洋航路の相違点などを理解することもできるようになっています。また、冒頭と巻末には広告が掲載されており、横浜正金銀行や日本郵船に加えて、「丸エス鞄」という当時トランク(革カバン)製造を幅広く手がけていた(本書本文中でも名指しは避けているものの同社のトランクを推奨するような記述がある)カバン会社の広告も掲載されています。「丸エス」は海外渡航用のトランク製造だけでなく、旅行の手配全般を請け負う「丸エス渡航案内所」も運営していたようで、こちらの広告も本書には掲載されています。

 なお、本書は大正15(1926)年に改訂版が刊行されていることから、当時よく読まれたのではないかと思われます。