書籍目録

『ポルトガル語にての日本語研究文献及びフェルナン・メンデス・ピント伝の補足』

フレイタス

『ポルトガル語にての日本語研究文献及びフェルナン・メンデス・ピント伝の補足』

1905年 コインブラ刊

Freitas, Jordão A. de.

SUBSIDIOS PARA A BIBLIOGRAPHIA PORTUGUEZA RELATIVA AO ESTUDO DA LINGUA JAPONEZA E PARA A BIOGRAPHIA DE FERNÃO MENDES PINTO.

Coimbra, Imprensa da Universidade, 1905. <AB202106>

¥55,000

16.0 cm x 22.0 cm, pp.[1(Half Title.)-3(Title.)-5], 6-83, Original paper wrappers

Information

16・17世紀の日葡交流史を日本語研究書に焦点を当てて論じたユニークな文献

 本書は、日本に来航した最初のヨーロッパ国であるポルトガルと日本との交流史について、特に文法書や辞典を中心とした語学書に焦点を当てて、16世紀、17世紀に刊行された書物、ならびに未刊行原稿について紹介した書籍で、1905年にポルトガルのコインブラで刊行されています。著者のフレイタス(Jordão A. De Freitas)は、イエズス会が作成した日本関係文書を多数所蔵しているポルトガルのアジュダ文庫の当時の館長で、アジュダ文庫やその他多くの研究機関の蔵書を用いて、いわゆるキリシタン版を含めたポルトガル人による日本語研究文献を本書において紹介しています。また、語学書の紹介と合わせて、最初期に日本を訪れたポルトガル人と考えられているピント(Fernão Mendes Pinto, 1509? - 1583)の著作に見られる記述の補足も行なっています。

 16世紀から17世紀にかけてなされた日本とポルトガルとの交流を語学研究文献を中心にして論じるという本書のユニークな視点は、当時の日本でも関心を呼んだようで、日葡協会によって邦訳版刊行が企画され、岡本良知による邦訳本『初期耶蘇教徒編述日本語学書研究』(『ポルトガル語にての日本語研究文献及びフェルナン・メンデス・ピント伝の補足』)が1929年に刊行されています。この邦訳本の所蔵は国内の研究機関でも数多く確認することが出来ますが、肝心の原著の所蔵はほとんどないようです。


「翌4年(昭和4年、1929年のこと;引用者注)にはフレイタス(Jordão A. De Freitas)が1905年にコインブラにおいて出版した Subsidios para a bibliographia Portugueza relative ao estudo da lingua Japoneza. を岡本良知訳によって『初期耶蘇教徒編述日本語学書研究』と題して日葡協会が出版した。フレイタスは当時アジュダ文庫の館長で、ポルトガルの文献学者としてまた当代屈指の東洋研究者の一人であり、すでにこの数年前に『思想』誌第68号に、同氏の論文が岡本良知氏訳注によって『16世紀末澳門及び日本における活字出版』と題して紹介されていた。本書は表題の文字の示す通り、天草版『拉丁文典』『拉葡日対訳辞典』長崎版『日葡辞典』『日本文典』のきりしたん版の他に16、7世紀の語学書の文献学的研究を記したもので、これはサトー卿の書誌と共にメンデス・ピント(Mendez Pinto)の伝記及びその『冒険巡航記』に記した当代の歴史の文献学的補足であった。」
(天理図書館編『きりしたん版の研究』天理大学出版部、1973年、186頁より)

「東京日葡協会は、日葡両国の親睦を助長し促進する目論見の下に、その事業として両国の歴史に関係深い書物を公刊することとなった。しかしながら、両国交通の他の重要な方面を等閑に付するのでは決してない。通商貿易上の問題は殊にそれに値し、当然特別な留意を払うべきものである。それにもかかわらず当協会は、現今両国民の特殊な興味が初期の両国交通史に言及するに係っているのを無視することが出来ない。ポルトガルと日本は世界の両端に位置しているが、両国共通の古伝は、今に及んでも遠く隔たっている両国民を結びつける連鎖となっている。400年前甚だ親密に交通した友情を想い起すことは、必ず現今の相互の関係を発展させ伸長させるに資すること大なるものがあるであろう。
 16世紀後半より17世紀前半に亘る両国の歴史に共通な事実を彼此相関せず没交渉に研究せられているが、その不都合をここに指摘するは要なきことである。ポルトガルでは日本人の研究の成果が分かっていないし、日本でもまた、ほとんどポルトガルの著作物については知られていない。ポルトガル語は今日では日本ではあまり学ばれない語である。また、それ以上に日本語は、難渋な文字のゆえにポルトガル人の見知らぬ語である。今、当協会は両国に現れた重要な著作物の一部を翻訳し上梓して、両国の歴史家、考証家の有益な接触を計ろうとする。あわせて、両国民が唯に貿易上の利益のためのみならず、より高い道義と知識のゆえに心底から融和した歴史上の一時代を究明する如き著作物の紹介に努力するところあろうとする。
 今、当協会は刊行事業の着手するにあたって、最初に翻訳すべき書の選択という困難に直面したが、先づ、ジョルダン・ア・デ・フレイタス氏の『日本語研究に関するポルトガル語の文献、並びにフェルナン・メンデス・ピント伝の補足』と題する著書を選んで上梓することとした。この著者が捉えた興味深い題目、価値ある内容、数多の日本関係未刊書の消息を載せたことを、想うに、日本の読書会は好意ある態度を持って受け入れるであろう。(後略)
(ジョルダン・ア・デ・フレイタス / 岡本良知訳『初期耶蘇教徒編述日本語学書研究』(『ポルトガル語にての日本語研究文献及びフェルナン・メンデス・ピント伝の補足』)題言(ジョセ・ダ・コスタ・カルネイロ)、日葡協会、1929年より)